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高3

嫉妬の先の触れ合い(6)

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 不安や嫉妬が消えてきた亜姫の様子に、和泉はフッと笑いを零す。
 こうして一言も漏らさぬよう一生懸命聞こうとする亜姫の姿は、いつ見ても愛くるしい。
 だからこそ、こっちも真剣に伝えなければ……と思う。
 
「……俺は、さんざん女を食ってきた。それは否定しないし、お前にも謝らない。それは変えようのない事実だからな。
 だから……全部受け止めるよ。お前の嫉妬も、不満も不安も。お前の気が済むまでいくらでも聞くし、どんな問いにも答える。
 誰にでも等しく愛情を持つお前が、俺にだけは独占欲とか嫉妬を剥き出しにしてくれる……それがすごく嬉しい。
 だから、いつでも何回でも、好きなだけ言っていーよ」
 
 和泉は、まっすぐ見つめてくる亜姫を力いっぱい抱きしめた。
「これも、何度でも言うよ。
 これでもかってぐらいシてきたけど、俺が自分から何かするのは亜姫だけ。
 それから……もしかしたら、今まで女に触れた数より、もうお前の方が多いかも」
「へっ?」

 亜姫が驚きの声を上げた。その間が抜けた顔に、和泉は笑う。

「言っただろ、お前だけは別だって。俺、お前相手だとマジで一喜一憂しちゃうし、お前を見てるといつでも触れたくなる。手を繋いだり髪を触ったりするだけでも可愛い反応するし。隠してるけど、いつでも抱きたいって思ってるよ」
 
 亜姫がぽかんとする。どうやら刺激が強かったらしく、脳の働きが追いついてないようだ。
 この顔を見るとどうしても意地悪したくなる。
 
「触れてる時間なら、お前が間違いなく一番なんだけど」
 亜姫がまたぽかりと口を開けた。そんなこと、考えもしなかったと顔に書いてある。
 
「当然だろ? だってお前には丁寧に大事に触れてるもん、時間かかるに決まってる。
 他の女にはおざなりに触るだけだったから、相手する時間はかなり短かったよ?
 さっきはお前が相手だったし、あれでも時間をかけて優しくした方」
 からかうように言えば、亜姫は真っ赤になって動揺した。
「え、えぇっ!?」
 
 和泉は、唖然とする亜姫の体をポスンと布団へ沈めた。
「え、え?」
 わけがわからず混乱している亜姫を、和泉は上から覗き込む。

「なぁ、やきもち焼きさん?
 お前がそんなもん焼く必要なんかないって、今からしっかり教えてあげる」
 優しい言葉とは裏腹にギラつく目を向けられた亜姫。その怯えは、明らかに捕食された小動物のそれだった。
  
「や、や……むり!無理だからっ!」
「無理? やめる?」
 和泉が尋ねると、亜姫は懇願するように頷く。
「じゃ、やめよっか。……俺も、我慢するから」
「え……?」
「お前に無理させたくない。言ったろ、辛い思いさせたくないって。大丈夫だよ、俺は我慢できるから」
「や、やだ……」
「無理すんな。お前に全部受け止めろとは言わねーから」
「え……じゃ、じゃあ、誰に頼むの?」
「え? いや、そーゆー意味じゃ」
「や、駄目、やめちゃ駄目。全部、私に、して……他の子は駄目」
 亜姫は自分の状況をすっかり忘れて、逃さないとばかりに抱きついた。
 
 和泉は溢れ出す笑いが止まらない。手の平で転がされていることに気づいてない亜姫は、またスイッチが入りイヤイヤモードだ。
「……嫌なの? 俺が他の子と関わったら」
「嫌なの! 絶対だめ!」
「じゃあ、お前が全部受け止めてくれるの?」
「うん」
 亜姫はギュウっと和泉に抱きつく。
 
「……どうやって? 俺はあんまり無理させたくないんだけど……?」
 そう言うと、亜姫は真っ赤になりながらもどうにか伝えようとする。
 出来もしないのに必死で伝えようとする姿はいじらしく、可愛い。
「……いいの? このまま続けても」
「うん……」
 
 和泉は亜姫に気づかれないよう口の端を上げた。こんなに思惑通りにコトが進むなんて滅多にない。
 気が変わらないうちにと、和泉はその体を抱きしめた。
 
 今日の亜姫は自分でも出来ることをしようと頑張っている。
 全てを受けとめようとするその姿が、和泉をどれだけ幸せに導くのか……亜姫はわかっているのだろうか。

 そんなことを思いながら、和泉はしばし幸せに浸っていた。
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