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高3

修学旅行(9)

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 沙世莉と麗華は、もうやめろと亜姫を必死で止めている。 

 ますます気を良くした高橋が、見下すようにふんぞり返った。
「そ、私はあんたと違うから。
 私だったらその貧相な胸でも使いこなせるし、江藤だって……」
「和泉にも、したこと……あるの? 満足、してた……?」
 亜姫は聞かずにいられなかったのか、言葉を被せて尋ねる。
「………あるわよ? 勿論、満ぞ……」
「どうやって……? 和泉が……そんなに?」
 ショックを隠しきれない様子で俯く亜姫。

「はははっ! もう聞かないほうがいいんじゃない?
 でも、まぁ……どうしてもって言うならやり方教えてあげてもいいんだけど? あんたが土下座でもしてお願いし……」
「お願いします」
「えっ?」 
 妙に力強く、はっきりと聞こえた亜姫の声。彼女達が話を止める。
 
「教えてもらいたい。ぜひ。お願いします」 
 やはり力強く紡がれた言葉に、二人が少したじろぐ。

 だが、高橋はまだ強気な姿勢を崩さなかった。 
「なによ、急に……。それ聞いて真似でもするつもり? そんな簡単に……」
「時間がかかってもいい」
「っ、私達はよくない。なんであんたに教えな……」
「今、教えてくれるって言った」
「っ………。そもそもあんたに魅力がないって言ったでしょ! 淫乱だかなんだか知らないけど今さら努力したって」
「和泉の好きなタイプじゃないもんね」
 うんうん知ってると頷く亜姫を、二人は唖然として見つめた。
 
 麗華と沙世莉が頭を抱え出したのが視界に入り、いったい何が起きているのかと彼女達は混乱する。
 
 そんな空気をものともせず、亜姫は浮かれた様子で二人に向き直る。 
「和泉は胸の大きな色気美女が好きなんだもん、私じゃ物足りないのはわかってるの」
「え……ま、まぁ……そう、ね……?」
「淫乱なのは好んでくれてるみたいなんだけど、そうなの、実力不足を日々痛感中で。今の悩みがまさにそれ」
「……は?」 
「色気とプルプルおっぱいは、もう和泉は諦めてるみたい。私には求めてないって何度も言われてるから。
 私は諦めてないから、期待薄だって思われちゃうのはちょっと悲しいんだけど……」
 
 落ち込んだ様子の亜姫に、江藤が士気を取り戻し意地悪く笑う。
 が、彼女が口を開くより亜姫の方が早かった。
 
「でも、教えてもらえるなんて助かった! ありがとう!」
「え……えっ? いいえ、どういたしまし、って………いや、なんで?」
 
 二人が再び混乱を極めた。先程までの勢いは完全に抜け落ちてしまっている。 

 麗華達はどうにか止めようと躍起になっているのだが、亜姫は全く聞いていなかった。
 
「低レベルから脱出したくて練習してるんだけど、うまくいかなくて。どうしたらいいか教えてくれる人を探してたの!
 そんなに色んな事が出来るなんてすごい! 頭なんていくらでも下げるから! ぜひお願いします!」 
 食いつかんばかりに乗り出す亜姫を、沙世莉が押し留める。
「それ、今じゃないからね」 
「えっ、でも早く教えてもらわないと」
「よく知りもしない人に、いきなりそんなこと教わるんじゃないの!」
 麗華も必死で止める。 
 だが、亜姫は首を傾げて
「いや、知らなくないし。同じ学校……あれ?」
 
 首を傾げたまま、亜姫は二人をまじまじと見る。そして、ようやく気づいたというように問いかけた。
「えっと……ごめんなさい。……どちら様でしたっけ……?」
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