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高2
体育祭(5)
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和泉は人のいない場所を選び、野口と向き合う。
「で? 偉そうに言ってるけど、亜姫の何を知ってんの?
お前、一年だろ? 亜姫のことは入学前から知ってたわけ?」
「入学してからだよ。だけど、ずっと見てきた。
話したのは今日が初めてだけど……それでも亜姫先輩がどんな人かなんて、あれだけ見てればわかるよ。あんたとは全然違う」
「だから? 女にだらしない俺よりは、自分の方がマシだって? だから成長するまで待ってろって言ったわけ?」
「違う!……ただ、本当に亜姫先輩のことが好きなんだ。こんな事、あんたに言うのも変だけど……。
今日は断られたけど、一年経てば俺だって…」
「その時は、俺も一年経って更にいい男になってると思うけど? 縮まらないよ?」
「うるせーな! その頃、あんたは女にだらしないのを理由にフラれてる! 俺はこれから伸びしろしかねぇ!」
ぶはっ! とヒロが噴き出した。戸塚も笑いを堪えている。
「なっ……なんで笑うんだよ! あんたら全員クソだ!」
キレる野口に、和泉も笑ってしまう。
「これが例の野口?」
「そう。クソガキだろ?」
「面白すぎる。こんなに噛みつく奴、初めて見た。お前ボロックソに言われてるじゃん」
「まぁ、大体は事実だけどさ……。俺も舐められたもんだよなぁ」
のんびり話す和泉達に、野口が再び噛みつく。
「無視すんな!……和泉さん、いつ別れんの? 亜姫先輩を傷つける前に離れろよ。
あんただけじゃなくて、あんたの周りにも先輩を傷つける要素が多すぎる。……本当に、遊びなら手を引いてくれよ」
和泉は改めて野口を観察してみた。
口も態度も最悪だが、彼から感じるのは純粋に亜姫を想う気持ちだけ。
外見は少年にしか見えない。だが中身は見た目に反して男気があり、率直な物言いは厳しさはあれど嫌味が無い。
辛辣に言われ続けているにも関わらず、和泉はやはり好感を持った。
「野口は亜姫に本気なんだな?」
「そうだよ。さっきからそう言ってるだろ。じゃなきゃ、あんなこと先輩に言わねぇよ」
迷いなく断言する野口を見て、和泉は態度を改めた。
「じゃあ、ちゃんと答えるよ。俺は本気だ。遊びじゃない」
「え……?」
「亜姫を好きだって気づいた時から、女とは一切関わってない。
誰が近づこうが相手する気もねーし、これから先も亜姫しか見ない。
別れる気も手放す気もない。そんな状況を作るようなことなんて絶対にしない。
だから。野口が亜姫を手に入れる日も来ない」
野口が驚愕の表情を浮かべる。こんな返事が返ってくるとは思っていなかったのだ。
しかし、彼は簡単には怯まなかった。
「亜姫先輩の方が、あんたに愛想尽かすかもしれないだろ」
「そんなの、俺が一番よくわかってんだよ。今のままでいるわけないだろ。
亜姫のそばにいる為に……亜姫を守る為に、俺は変わろうと必死なんだ。
一年後、惚れ直されることはあっても愛想尽かされることはねぇよ。
だから。お前がどんなに成長しても、俺には勝てない。残念だったな」
和泉は、にやりと笑みを浮かべた。
野口はしばらく固まっていたが。
「……っ、そんなの! やってみなきゃわかんないだろ!!
あんたにだけは! 絶対負けねぇ! 見てろよ!」
そう叫んで、怒りながら戻っていった。
横にいるヒロ達には「失礼します!」と律儀に挨拶をして。
その姿を見送りつつ、また三人で笑う。
「野口、いいわー」
「和泉、うかうかしてると本当に持っていかれるんじゃない? あれは相当本気だね」
「クソガキだけど、なんか憎めないよなぁ」
「それな。なーんか、可愛いよな」
彼は不利な体型にも関わらず、この勝ち気な性格と真面目に努力を重ね続けるストイックさで才能を開花させている、バレー部期待の星らしい。
そんな彼は事ある毎に和泉に絡み、亜姫から2人は仲良しだと不本意な誤解を受けるようになったのだが──それはまた後々。
「で? 偉そうに言ってるけど、亜姫の何を知ってんの?
お前、一年だろ? 亜姫のことは入学前から知ってたわけ?」
「入学してからだよ。だけど、ずっと見てきた。
話したのは今日が初めてだけど……それでも亜姫先輩がどんな人かなんて、あれだけ見てればわかるよ。あんたとは全然違う」
「だから? 女にだらしない俺よりは、自分の方がマシだって? だから成長するまで待ってろって言ったわけ?」
「違う!……ただ、本当に亜姫先輩のことが好きなんだ。こんな事、あんたに言うのも変だけど……。
今日は断られたけど、一年経てば俺だって…」
「その時は、俺も一年経って更にいい男になってると思うけど? 縮まらないよ?」
「うるせーな! その頃、あんたは女にだらしないのを理由にフラれてる! 俺はこれから伸びしろしかねぇ!」
ぶはっ! とヒロが噴き出した。戸塚も笑いを堪えている。
「なっ……なんで笑うんだよ! あんたら全員クソだ!」
キレる野口に、和泉も笑ってしまう。
「これが例の野口?」
「そう。クソガキだろ?」
「面白すぎる。こんなに噛みつく奴、初めて見た。お前ボロックソに言われてるじゃん」
「まぁ、大体は事実だけどさ……。俺も舐められたもんだよなぁ」
のんびり話す和泉達に、野口が再び噛みつく。
「無視すんな!……和泉さん、いつ別れんの? 亜姫先輩を傷つける前に離れろよ。
あんただけじゃなくて、あんたの周りにも先輩を傷つける要素が多すぎる。……本当に、遊びなら手を引いてくれよ」
和泉は改めて野口を観察してみた。
口も態度も最悪だが、彼から感じるのは純粋に亜姫を想う気持ちだけ。
外見は少年にしか見えない。だが中身は見た目に反して男気があり、率直な物言いは厳しさはあれど嫌味が無い。
辛辣に言われ続けているにも関わらず、和泉はやはり好感を持った。
「野口は亜姫に本気なんだな?」
「そうだよ。さっきからそう言ってるだろ。じゃなきゃ、あんなこと先輩に言わねぇよ」
迷いなく断言する野口を見て、和泉は態度を改めた。
「じゃあ、ちゃんと答えるよ。俺は本気だ。遊びじゃない」
「え……?」
「亜姫を好きだって気づいた時から、女とは一切関わってない。
誰が近づこうが相手する気もねーし、これから先も亜姫しか見ない。
別れる気も手放す気もない。そんな状況を作るようなことなんて絶対にしない。
だから。野口が亜姫を手に入れる日も来ない」
野口が驚愕の表情を浮かべる。こんな返事が返ってくるとは思っていなかったのだ。
しかし、彼は簡単には怯まなかった。
「亜姫先輩の方が、あんたに愛想尽かすかもしれないだろ」
「そんなの、俺が一番よくわかってんだよ。今のままでいるわけないだろ。
亜姫のそばにいる為に……亜姫を守る為に、俺は変わろうと必死なんだ。
一年後、惚れ直されることはあっても愛想尽かされることはねぇよ。
だから。お前がどんなに成長しても、俺には勝てない。残念だったな」
和泉は、にやりと笑みを浮かべた。
野口はしばらく固まっていたが。
「……っ、そんなの! やってみなきゃわかんないだろ!!
あんたにだけは! 絶対負けねぇ! 見てろよ!」
そう叫んで、怒りながら戻っていった。
横にいるヒロ達には「失礼します!」と律儀に挨拶をして。
その姿を見送りつつ、また三人で笑う。
「野口、いいわー」
「和泉、うかうかしてると本当に持っていかれるんじゃない? あれは相当本気だね」
「クソガキだけど、なんか憎めないよなぁ」
「それな。なーんか、可愛いよな」
彼は不利な体型にも関わらず、この勝ち気な性格と真面目に努力を重ね続けるストイックさで才能を開花させている、バレー部期待の星らしい。
そんな彼は事ある毎に和泉に絡み、亜姫から2人は仲良しだと不本意な誤解を受けるようになったのだが──それはまた後々。
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