19 / 364
高1
2月(4)
しおりを挟む
変な人だった。けど、なぜか妙に話しやすくて……年上だよな……?
教室へ向かう和泉は、名も知らぬ彼を思い出してちょっと笑う。
さっきの会話が強烈に自分を揺り動かしていた。
でも不快じゃない。何とも言えない、心地良い揺れ。
──考えてみろよ。結局どーしたいのか──
──絶対無理だとわかったとして。
諦められんの、それ?
なら、何をすれば叶うか考えるしかねーよ──
──答え、出てるじゃん。
お前は、それを手に入れたいんだよ。お前にとってそれは、『他の奴に負けたくない、取られたら悔しい』と思うもんだってことだ──
そうか。
諦めたくないんだ、俺は。
──手に入れたいものは決まってる。でも、手に入れる自信が無い。だったら、自信がつくように努力すればいい。
それまでは、今の自分に出来ることを必死でやるしかない。その繰り返しだよ、いつも──
──答えが出ないときはどーすんの?
考えんのやめる。ここで答えが出ないときは、迷ってるときだから。
何に迷ってるかだけ見つけて、しばらく気の向くまま動く。そしたら、だいたい答えが見つかる──
手に入れたい。他のヤツに取られたくない。
でも、今は自信も方法もない。
それでいい。どうしたらいいか分かるまでは。
いつか、現実に存在する「橘亜姫」に笑いかけてもらう。
それが、今ハッキリと言える叶えたい夢。
あの子が好きだ。あの子を諦めない。
今は、それだけわかっていればいい。
なんだ、簡単なことじゃん。
俺は「あの子」を好きなままでいいんだ。
「なんだ、そっか。……すげーな、あの人」
初めて会ったにも関わらず、妙な存在感を残していった彼に感謝する。
和泉はすっきりした気分で教室へと戻り。その日のうちに、ヒロと戸塚に自分の気持ちを話した。
今すぐ何をするわけではない。
今出来る事は、いざという時に恥ずかしくない自分になること。
まずは、そこから。
◇
「おー、和泉! 元気そうだな?」
突如後ろから響いた声に、和泉は振り向いた。
「あんた! 何で俺の名前……」
それは、昨日裏庭で会ったあの男だった。
困惑する和泉にその男はニヤリと笑いかける。
「お前、有名だから」
そう言うと、唖然とする和泉の肩をガシッと掴み少し端へ寄せた。その耳元で彼は囁く。
「お互い、うっかりヘタレな姿見せちゃったってことで。昨日の事は二人だけの秘密な」
和泉が無言で顔を見ると、彼は昨日と同じ顔で笑い、ひらひらと手を振りながら去って行った。
横にいたヒロ達が呆然とその背を見送っている。
「和泉……知り合いだったのかよ?」
「え? あぁ、いや、ちょっと……」
彼と会ったことは話していなかった。昨日の話は、なんとなく自分の胸にしまっておきたかったから。
「お前らこそ、あの人のこと知ってんの?」
「おい、お前……知らないのにあんなに仲良くなってんの?」
「いや、別に仲いいってわけじゃ……」
「熊澤先輩だよ」
「………え?」
「あの人が、亜姫と噂になってた熊澤悠仁先輩」
………………ウソだろ?
和泉は呆然とする。
カッコイイよな。と言うヒロの言葉に、和泉は頷くしかなかった。
教室へ向かう和泉は、名も知らぬ彼を思い出してちょっと笑う。
さっきの会話が強烈に自分を揺り動かしていた。
でも不快じゃない。何とも言えない、心地良い揺れ。
──考えてみろよ。結局どーしたいのか──
──絶対無理だとわかったとして。
諦められんの、それ?
なら、何をすれば叶うか考えるしかねーよ──
──答え、出てるじゃん。
お前は、それを手に入れたいんだよ。お前にとってそれは、『他の奴に負けたくない、取られたら悔しい』と思うもんだってことだ──
そうか。
諦めたくないんだ、俺は。
──手に入れたいものは決まってる。でも、手に入れる自信が無い。だったら、自信がつくように努力すればいい。
それまでは、今の自分に出来ることを必死でやるしかない。その繰り返しだよ、いつも──
──答えが出ないときはどーすんの?
考えんのやめる。ここで答えが出ないときは、迷ってるときだから。
何に迷ってるかだけ見つけて、しばらく気の向くまま動く。そしたら、だいたい答えが見つかる──
手に入れたい。他のヤツに取られたくない。
でも、今は自信も方法もない。
それでいい。どうしたらいいか分かるまでは。
いつか、現実に存在する「橘亜姫」に笑いかけてもらう。
それが、今ハッキリと言える叶えたい夢。
あの子が好きだ。あの子を諦めない。
今は、それだけわかっていればいい。
なんだ、簡単なことじゃん。
俺は「あの子」を好きなままでいいんだ。
「なんだ、そっか。……すげーな、あの人」
初めて会ったにも関わらず、妙な存在感を残していった彼に感謝する。
和泉はすっきりした気分で教室へと戻り。その日のうちに、ヒロと戸塚に自分の気持ちを話した。
今すぐ何をするわけではない。
今出来る事は、いざという時に恥ずかしくない自分になること。
まずは、そこから。
◇
「おー、和泉! 元気そうだな?」
突如後ろから響いた声に、和泉は振り向いた。
「あんた! 何で俺の名前……」
それは、昨日裏庭で会ったあの男だった。
困惑する和泉にその男はニヤリと笑いかける。
「お前、有名だから」
そう言うと、唖然とする和泉の肩をガシッと掴み少し端へ寄せた。その耳元で彼は囁く。
「お互い、うっかりヘタレな姿見せちゃったってことで。昨日の事は二人だけの秘密な」
和泉が無言で顔を見ると、彼は昨日と同じ顔で笑い、ひらひらと手を振りながら去って行った。
横にいたヒロ達が呆然とその背を見送っている。
「和泉……知り合いだったのかよ?」
「え? あぁ、いや、ちょっと……」
彼と会ったことは話していなかった。昨日の話は、なんとなく自分の胸にしまっておきたかったから。
「お前らこそ、あの人のこと知ってんの?」
「おい、お前……知らないのにあんなに仲良くなってんの?」
「いや、別に仲いいってわけじゃ……」
「熊澤先輩だよ」
「………え?」
「あの人が、亜姫と噂になってた熊澤悠仁先輩」
………………ウソだろ?
和泉は呆然とする。
カッコイイよな。と言うヒロの言葉に、和泉は頷くしかなかった。
10
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
気まぐれの遼 二年A組
hakusuya
青春
他人とかかわることに煩わしさを感じる遼は、ボッチの学園生活を選んだ。趣味は読書と人間観察。しかし学園屈指の美貌をもつ遼を周囲は放っておかない。中には双子の妹に取り入るきっかけにしようとする輩もいて、遼はシスコンムーブを発動させる。これは気まぐれを起こしたときだけ他人とかかわるボッチ美少年の日常を描いた物語。完結するかは未定。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
学校に行きたくない私達の物語
能登原あめ
青春
※ 甘酸っぱい青春を目指しました。ピュアです。
「学校に行きたくない」
大きな理由じゃないけれど、休みたい日もある。
休みがちな女子高生達が悩んで、恋して、探りながら一歩前に進むお話です。
(それぞれ独立した話になります)
1 雨とピアノ 全6話(同級生)
2 日曜の駆ける約束 全4話(後輩)
3 それが儚いものだと知ったら 全6話(先輩)
* コメント欄はネタバレ配慮していないため、お気をつけください。
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる