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本編

俺って意外とイケメンだった

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俺の家、エンフィア家はアランの家のメロヴィング家と仲が大変良い。

理由は、互いの家の先祖が戦友の契りを交わしているという事と、俺の家が海上貿易で栄え、アランの家が内陸貿易で栄えていて、お互いが貿易で扱う物資を、優先的に回す様にしているという、ビジネスの面でも協力体制を築いているからだ。

しかし、両家が結婚する事は権力集中の要因となるため王家から暗に圧をかけられており、結婚する事はできない。

だから前世の俺は馬鹿野郎なのだ。アランに惚れ込み、「俺の嫁」発言…。
はー死にたい。本当は結婚できないのになんであんなに自信満々に言いふらしたのか?そうだな、俺は勉強ギライのクソバカだったから知らなかったんだよな…死ぬ直前まで分からなかったもんな…
てか俺の嫁ってなに?きもいよ、きしょすぎるよ…

思い出すだけで寒気がする。消えてしまいたい。まだその発言をしていない時まで戻ってきたが、やっぱり恥ずか死ぬ。

1人悶えていると、専属執事が入ってきた。

「レオベルト様、今日は正装でお出かけする日ですので、着替えのお手伝いに参りました。」

俺の専属執事のハル。
身体能力がずば抜けて高く、その上物凄い美形だ。少しくすんだ紅色の長髪を三つ編みにしていて、大きくて色気のある真っ赤な瞳を持っている。

結構若くて9歳である。

こんなに若くても執事が出来るくらい知能が高くて、身体能力も良い理由は、ハルが精霊の血を引いているからだ。

…ん?ていうか、正装っていった?
正装…?

「…なんで正装するの?」

「今日はメロヴィング家にて、ご友人を作る社交界があります。」

「はぁっ?!」



…いきなり俺の絶望フラグが来ただと?!?!!


最悪だ!最悪すぎる!!


メロヴィング家でやるだって?
という事は、今日は前の時間軸でアランに初めて会って、一目惚れした黒歴史の始まりの日だ…!

「…レオベルト様?どうされたんですか?」

いきなり声をあげてしまって、ハルを驚かせてしまった…

「いや、なんでもない…着替えるよ」

逃げる事はできない、とりあえず着替えてどうするかは馬車で考えよう。

「…っあ、レオベルト様?!私がお着替えをお手伝い致しますので…!」

ん?なんだ?お着替えのお手伝い…?そんな事しなくても大丈夫なんだけど?
というか中身はアラサーのサラリーマンだし…年下のイケメンに着替えを手伝ってもらうのは情けなすぎる。

「ん?俺自分で着替えられるよ?」

「…はい?」

「大丈夫、1人で着替えられるから。ほら、もう出ていいよ。」

「は、はぁかしこまりました。」

パタンと、静かにとびらが閉まる。
というより、なんであんなに困惑してたんだ?

「5歳でも、男の正装は女の子のドレスと違ってスーツ来てリボン結ぶだけだろ?なんで…」

ここで俺はまた前の時間軸の俺を思い出した。

俺はエンフィア家の跡取りとして、勉強は厳しかったが、それ以外はとんでもなく甘やかされて育ったため、それはそれはとんでもなく我儘坊ちゃんだったのである。

服を着替えるのも何もかも、ハルにやって貰っていたのを思い出した。
ていうか、靴も履かせてもらってたよね?その上、履き心地が悪いだの、この柄は美しくないだの文句タラタラだったよね?

え?すごいやだ……

「…これから、大人しく空気のように行動して、俺は1人で生活出来るって事をちょっとずつ伝えていこう…うん。」

思えばこんな5歳の時から、我儘で傲慢で自己中だったんだな…
ここからもう俺の破滅への道は開けてたのかもしれない。

高そうな服を着替え終え、髪を引き出しにあったワックスで片方だけ流す。
前世で高校の時から、ちゃんとした所に行く時はこのセットにしていたから、すぐにできた。

よし、こんなもんか。香水は…5歳のガキンチョだしいらねぇか。

と、ここで扉をノックされた。

「おー、誰?」

「…レオベルト様。ハルです。
お着替えは大丈夫ですか?」

「え、ハル?戻ってきたの?」

「その…心配でして…すみません。」

「も~心配症だな。ほら入っていいよ、ちゃんと着替えられてるから」

「あ、失礼します……」

ハルが部屋に入ってきたので、ちゃんと着替えられてるだろアピールをする。

「どう?着替えられてるでしょ?これからは1人で出来るから安心してよ。」

「れ、レオベルト様。髪のセットは嫌いだって仰っていたのに…自分でセットされたんですか?」

あー、確かにそんな事前の時間軸で言ってた気がするような……

「心機一転ってやつだよー。似合ってる?」

「はい、とても…」

ハル、なんでそんなに頬を赤らめているんだ?

なんだなんだ俺に見惚れちゃったか~?

と思い、俺も鏡を見てみる。
悪役とは言えども、メインキャラなためかなり顔立ちがいい。いや顔立ちがいいどころじゃないくらい、この顔は色気があるな……

暗い青の髪を片方上げて、月を溶かしこんだような黄金の瞳は気だるげに見えるし、左には涙ボクロは最高に色気がある。

前の時間軸の俺は身だしなみを整える事が嫌だったし、アランにヤンデレだったから、綺麗な顔立ちだけど、せっかくの色気がどこかアブナイお薬やってそうって感じになってしまっていて、台無しだったのだ。

しかし病んでなくて普通にちょっと着飾れば、なんてことでしょう絶世のイケメンである。

「いや~俺今日キマってんな~。」

「凄く似合ってます。」

「だよね~!お母様に見せに行こっと!」

「あ、レオベルト様っ!もう出発の時間です!」

「え!まじ?」

「はい。」

うわ、テンション上がってたけどそうじゃん、俺今から死亡フラグの巣窟に行くんじゃん。

「…了解、もう行こうか。」

「外に馬車は用意してあります。」

「はーい。」

気分ダダ下がりになりながら、俺は自室から出た。
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