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第5章 ちびっ子B-Tuber大量出現!?レインボーブーストポーションの陰謀

第5話 レインボーブーストポーション

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 いつの間にか、サニアは僕らと同じテーブルの席に座っていた。
 よく堂々と悪びれずに同じテーブルを囲めるよなぁ。
  こういうのって、『面の皮が厚い』っていうんだよね、ぼく知ってるよ!

「このレインボーブーストポーション、従来のブーストポーションは比べものにならない威力があるわ。あのCM動画の子ども達は、普通の子。冒険者としての修行すらしていないような子よ」

 サニアはテーブルの上に小瓶をのせて言った。

「だからさ、私も欲しくなったわけ。私みたいな魔法使いって、単独じゃ活動しにくいわ。イリエナちゃんなら分かるでしょう?」

 イリエナちゃんは、ちょっぴり俯きながら『はい』と答えた。

「そうじゃなきゃ、私だってあんなクズと組んだりしなかったわよ」

『あんなクズ』……アグレットのことだよね。

「でも、普通の子どもがあそこまで強くなれるブーストポーションが手に入れば、魔法使いの私だって、ソロで活動できそうじゃない」

 うーん、それはまあそうかなぁ。
 魔法って威力は強いけど、魔法しかつかえないと接近戦になったらかなり不利だもんね。
 レインボーブーストポーションは魔法使いにこそ役に立つのかも。

「なんで、通販で購入してみたんだけどね。ぜーんぜん効果が無いのよ。詐欺だと思って問い合わせたの。

 そうしたら、『レインボーブーストポーションは子どもにしか効果がありません。CMでも「ちびっ子冒険者になろう」と言っていますから詐欺じゃありません』って、言われたんだって。

「だからさ、自分で使えないなら誰かに売り飛ばしたいじゃない? で、知り合いのお子様冒険者っていえば、あんたしかいないし」

 つまり、ぼくにレインボーブーストポーションを売りたいって話か。
 ぼくは反射的に答えた。

「いらないよ」

 断った理由は、単にサニアを信用できなかったからだ。

「ま、そうでしょうね」

 サニアは言って。小瓶を懐にしまった。

「もうひとつ、一つ確認したいなと思っていることがあるんあだけど」
「確認ってなにを?」
「レインボーブーストポーションの通販に、カイ、あんたは関わっているのかしら? あなたの化け物じみた力も、じつは荒れを使っているからだったり?」
「ぼくは知らないよ。さっき動画で見たばっかりだもん」

 ぼくがそう言うと、サニアは「なるほど」と頷いた。

「多分そうじゃないかとは思っていたけど、やっぱりこれの発売元が勝手にあんたの名前を使っているのね」

 勝手に名前を使う?
 どういうことだろう?

 ぼくの疑問に答えてくれたのは、サニアじゃなくて、プリラおねーさんだった。

「さっきの動画で言っていたでしょ。『カイも使っている』って」
「ぼくは使ってないってばっ!」
「分かっているわよ。ようはあのCMは冒険者に憧れる子ども達に、そのポーションを売りつけるために、有名B-Tuberになったカイくんの名前を使っているのよ。何の断りもなく、ね」
「それって、なんかやだなぁ」
「当然よ」

 うーん、どうしたらいいんだろう?
 マリアさんがさらに言った。

「このままじゃ、カイくんの動画もやばいっすよ」
「え、なんで? ライバルがいっぱい出てきたから?」
「それもあるっすけど、カイくんの力はポーション頼りだったのかガッカリみたいなコメントが来てるっす。今は少数っすけど、このまま誤解を解けないとマズいっすね」

 うーん。
 ブーストポーションを使うこと自体が悪いかといわれると微妙な気もするけどなぁ。
 でも、視聴者さんをガッカリさせるのは良くないよねぇ。

 と、そこでマリアさんはサニアに言った。

「ところで、サニアさん」
「何かしら?」
「その大嘘話はいつまで続くっすか?」

 え、大嘘?
 どういうこと?

「あら、人聞きが悪いわね。私がいつ嘘をついたっていうのかしら?」
「最初っからおかしいっすよ。そもそも、例のCM動画が最初にUPされてから、まだ2日も経ってないっす。通販元は王都。どう考えても動画の概要欄から購入申込みをしたら、今サニアさんの手元に、ポーションがあるわけないっす」

 おお!
 ぼくは思わず拍手してしまった。

「マリアさんすごーい。カッコイイ」

 マリアさんはちょっぴり照れ顔

「そんなたいした推理でもないっすよ。っていうか、彼女も嘘を隠すつもりもなかったでしょうし」

 サニアは「ふっ」っと笑った。

「たしかにそうね。バレバレの嘘だっていう自覚はあったわよ」

 えええぇぇ。

「本当は、カイとイリエナちゃんにこのポーションを使わせたかったんだけど……どうやら他銭無勢かしら。カイくんとイリエナちゃんだけの時に乗り込むべきだったかしらね」

 サニアはそう言って立ち上がった。

「ちょっと待てよ! どこに行くつもりだよ?」
「言う必要あるかしら? ……といいたいところだけど、南のマイマイ亭に宿を取っているわ。レインボーブーストポーションがほしくなったらいらっしゃい。お安くしておくわよ」

 なんだろう、ちょっとひっかかる言い方だ。
 プリラおねーさんが言った。

「ずいぶん露骨ね」
「何がかしら?」
「さっきからの会話、どうみてもレインボーブーストポーションとやらを売り込みに来ているとしか思えないわ。あなたはそれを購入したんじゃない。売っている側でしょ」

 ぼくはびっくりした。

「え、どういうこと?」
「あのちびっ子冒険者たちの動画をUPしたのも、通販を運営しているのもこの女ってことよ」

 ええええぇぇぇ!?

「そもそも、自分では使えなかったたはずのポーションの効果を詳しく知っている時点でおかしいじゃない」

 プリラおねーさんがそういうと、サニアはクスッと笑った。

「あらあら、困ったわねぇ。そこまでバレちゃったか」
「バレるように話していたでしょうがっ!」
「たしかにね。ぶっちゃければ、カイにこのポーションを使ってみてほしいのよ。元々化け物なこの子が、これをつかったら、第100階層到達だって夢じゃないわ」

 たしかに、そうすればマンネリ化打破に……と一瞬思っちゃったけど。

「いらないったらいらないよ!」

 サニアの話は怪しすぎる。

「分かったわ。気が変わったらいつでもいらっしゃい」

 サニアはそう言って、今度こそ出口に向かって歩き出した。
 ぼくはふと思い立って、サニアにたずねた。

「アグレットのことは聞かないの?」
「昔の男に興味は無いわ」

 そう言い残し、サニアは消えたのだった。
 結局、何がしたかったんだろうね?
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