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第5章 ちびっ子B-Tuber大量出現!?レインボーブーストポーションの陰謀
第2話 イリエナちゃんの涙と大慌てのマリアさん
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ダンジョンからふくふく亭への帰り道。
イリエナちゃんはまだ落ち込んでいた。
「カイさん、私……」
「さっきのことなら気にしなくていいよ。マンネリ化の件はいっしょに考えよう。マリアさんやプリラおねーさんにもアイデアを聞いてみて……」
だけど、イリエナちゃんは泣きそうなままだ。
「私、足手まといですよね」
その言葉に、ぼくはびっくりしちゃった。
そんなの考えたこともなかったから。
「なんで? イリエナちゃんのおかげで、動画の再生数も何倍にもなったんだよ」
これは事実だ。
あのコラボは冒険者ギルドでも、芸能ギルドでもすごく話題になった。
イリエナちゃんとパーティを組んでから、ぼくの動画の再生数は一気に増えた。
もちろん、イリエナちゃんの歌ってみた動画も同じくだ。
それなのに足手まといなんて、そんなわけない!
「でも、カイさんだけなら第10階層でも、なんなら第20階層でも行けるんですよね?」
「それは……」
「私がいなければ、もっともっとすごい冒険を撮影できるんじゃないですか?」
「そうでもないよ。ぼくらのマホメラの性能だと、モンスターの間とかじゃ壊されちゃうかもだし……」
これは以前、第10階層のモンスターの間で、グリーンオークと戦った映像を見てマリアさんが言っていたことだ。
確かに、言われてみればそうだよね。
ぼくのマホメラはあくまでも量産品。
そこそこ値段がしたとはいえ、第10階層より先での撮影なんて考慮されていない。
トロールやドラゴンと戦ったら、簡単に壊されちゃいそうだ。
「そんなの! もっと高いマホメラを買えばいいだけじゃないですかっ」
たしかに、もっと高性能で頑丈なマホメラもあるらしい。
金貨100枚とかするらしいけど、今のぼくなら絶対に手が出ないというわけじゃない。
動画再生だけじゃなくて、魔石もたくさんてにいれているからね。
でも、そんなことより、今は。
「あの、イリエナちゃん、怒ってる?」
そっちの方が、ずっと気になっちゃうよ。
お顔を真っ赤にして、ちょっぴり涙目で、エルフ特有のとんがったお耳がピンと立っている。どうみても、機嫌が悪そうだ。
「怒ってません!」
「そ、そう?」
どうみても機嫌悪そうだけどなぁ。
「でも、足手まといにはなりたくないんです!」
うーん?
「イリエナちゃん、ぼくの夢は世界一のB-Tuberになることだよ」
「だからっ……だったら、もっと……」
「決して、ダンジョンの奥の奥まで行くことじゃないんだ」
ダンジョンが第何階層まであるかは、今のところ分かっていないらしい。
お父さんやお母さんは第80階層まで行ったことがあるらしいけど、それでもまだ次の階層へのオーブは存在したという。
でも、今のぼくはそんな深い階層に行こうとは思っていない。
確かに、たとえば『冒険者初!100階層を攻略してみた!』とかいう動画を撮れれば、マンネリ化は防げるかもしれない。
でも、そんなのぼくには無理だ。
みんなはぼくのことを強いって言ってくれるけど、第20階層以降なんて今のぼくには無理だ。
お父さんと違って、ダークドラゴンを何匹もやっつけるなんてできない。
第20階層以降では、ダークドラゴンだらけのモンスターの間だって出現するのだ。
先まで進むのは、どうやったって限界が来る。
ソロでの冒険じゃ、どのみちどっかで無理が来たのだ。
今はイリエナちゃんという仲間を手にして、動画の幅が広がった。
恥ずかしいけど、イリエナちゃんの歌ってみた動画に出演したりもした。
B-Tuberにとっては、ダンジョンの奥に進むよりも、活動のはばを広げることの方がずっと大切だと思う。
……といったようなことを説明したんだけど。
イリエナちゃんは「でも……」「でも……」と繰り返し、ついには本当に泣き出しちゃった。
こまったなぁ。
どうしたらいいんだろう?
モンスターを倒すよりも、イリエナちゃんを励ます方がずっとむずかしいや。
「あの、イリエナちゃん、とりあえずふくふく亭に帰ろう、ね?」
なんにしても、ここは町外れの道ばただ。
こんなところで泣かれ続けたら、本当に困っちゃうもん。
「はい、ごめんなさい。私、恥ずかしいところを……」
うん、なんとか泣き止んでくれたかな。良かった良かった。
……と、その時のぼくはお気楽に考えていたんだ。
でも、ぼくはパーティのリーダーとして、もっと真剣にイリエナちゃんの気持ちを考えるべきだったんだ。
そのことを、ぼくは後で猛烈に後悔することになる。
だけど。
ふくふく亭に帰ったとき、ぼくらはびっくりする報告をマリアさんから受けて。
ぼくはイリエナちゃんの涙についてそれ以上考えなかったんだ。
ふくふく亭に戻った僕らを、いつものようにプリラおねーさんとマリアさんが迎えてくれたんだけど。
マリアさんが大慌てでぼくにマホレットを突きつけた。
「大変っす、カイくん! ライバル出現っす! それも大量出現っす! 意味わかんないっす!」
慌てまくるマリアさんの言っていることが、それこそぼくらには全く分からなかった。
イリエナちゃんはまだ落ち込んでいた。
「カイさん、私……」
「さっきのことなら気にしなくていいよ。マンネリ化の件はいっしょに考えよう。マリアさんやプリラおねーさんにもアイデアを聞いてみて……」
だけど、イリエナちゃんは泣きそうなままだ。
「私、足手まといですよね」
その言葉に、ぼくはびっくりしちゃった。
そんなの考えたこともなかったから。
「なんで? イリエナちゃんのおかげで、動画の再生数も何倍にもなったんだよ」
これは事実だ。
あのコラボは冒険者ギルドでも、芸能ギルドでもすごく話題になった。
イリエナちゃんとパーティを組んでから、ぼくの動画の再生数は一気に増えた。
もちろん、イリエナちゃんの歌ってみた動画も同じくだ。
それなのに足手まといなんて、そんなわけない!
「でも、カイさんだけなら第10階層でも、なんなら第20階層でも行けるんですよね?」
「それは……」
「私がいなければ、もっともっとすごい冒険を撮影できるんじゃないですか?」
「そうでもないよ。ぼくらのマホメラの性能だと、モンスターの間とかじゃ壊されちゃうかもだし……」
これは以前、第10階層のモンスターの間で、グリーンオークと戦った映像を見てマリアさんが言っていたことだ。
確かに、言われてみればそうだよね。
ぼくのマホメラはあくまでも量産品。
そこそこ値段がしたとはいえ、第10階層より先での撮影なんて考慮されていない。
トロールやドラゴンと戦ったら、簡単に壊されちゃいそうだ。
「そんなの! もっと高いマホメラを買えばいいだけじゃないですかっ」
たしかに、もっと高性能で頑丈なマホメラもあるらしい。
金貨100枚とかするらしいけど、今のぼくなら絶対に手が出ないというわけじゃない。
動画再生だけじゃなくて、魔石もたくさんてにいれているからね。
でも、そんなことより、今は。
「あの、イリエナちゃん、怒ってる?」
そっちの方が、ずっと気になっちゃうよ。
お顔を真っ赤にして、ちょっぴり涙目で、エルフ特有のとんがったお耳がピンと立っている。どうみても、機嫌が悪そうだ。
「怒ってません!」
「そ、そう?」
どうみても機嫌悪そうだけどなぁ。
「でも、足手まといにはなりたくないんです!」
うーん?
「イリエナちゃん、ぼくの夢は世界一のB-Tuberになることだよ」
「だからっ……だったら、もっと……」
「決して、ダンジョンの奥の奥まで行くことじゃないんだ」
ダンジョンが第何階層まであるかは、今のところ分かっていないらしい。
お父さんやお母さんは第80階層まで行ったことがあるらしいけど、それでもまだ次の階層へのオーブは存在したという。
でも、今のぼくはそんな深い階層に行こうとは思っていない。
確かに、たとえば『冒険者初!100階層を攻略してみた!』とかいう動画を撮れれば、マンネリ化は防げるかもしれない。
でも、そんなのぼくには無理だ。
みんなはぼくのことを強いって言ってくれるけど、第20階層以降なんて今のぼくには無理だ。
お父さんと違って、ダークドラゴンを何匹もやっつけるなんてできない。
第20階層以降では、ダークドラゴンだらけのモンスターの間だって出現するのだ。
先まで進むのは、どうやったって限界が来る。
ソロでの冒険じゃ、どのみちどっかで無理が来たのだ。
今はイリエナちゃんという仲間を手にして、動画の幅が広がった。
恥ずかしいけど、イリエナちゃんの歌ってみた動画に出演したりもした。
B-Tuberにとっては、ダンジョンの奥に進むよりも、活動のはばを広げることの方がずっと大切だと思う。
……といったようなことを説明したんだけど。
イリエナちゃんは「でも……」「でも……」と繰り返し、ついには本当に泣き出しちゃった。
こまったなぁ。
どうしたらいいんだろう?
モンスターを倒すよりも、イリエナちゃんを励ます方がずっとむずかしいや。
「あの、イリエナちゃん、とりあえずふくふく亭に帰ろう、ね?」
なんにしても、ここは町外れの道ばただ。
こんなところで泣かれ続けたら、本当に困っちゃうもん。
「はい、ごめんなさい。私、恥ずかしいところを……」
うん、なんとか泣き止んでくれたかな。良かった良かった。
……と、その時のぼくはお気楽に考えていたんだ。
でも、ぼくはパーティのリーダーとして、もっと真剣にイリエナちゃんの気持ちを考えるべきだったんだ。
そのことを、ぼくは後で猛烈に後悔することになる。
だけど。
ふくふく亭に帰ったとき、ぼくらはびっくりする報告をマリアさんから受けて。
ぼくはイリエナちゃんの涙についてそれ以上考えなかったんだ。
ふくふく亭に戻った僕らを、いつものようにプリラおねーさんとマリアさんが迎えてくれたんだけど。
マリアさんが大慌てでぼくにマホレットを突きつけた。
「大変っす、カイくん! ライバル出現っす! それも大量出現っす! 意味わかんないっす!」
慌てまくるマリアさんの言っていることが、それこそぼくらには全く分からなかった。
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