上 下
35 / 43
第4章 アグレット大炎上!

第7話 そのころサニアは……《サニア視点》

しおりを挟む
 湯浴みを終え、私はガーヴォルフの待つ部屋へと戻った。
 彼は下着一枚の姿でベッドに横たわったまま言った。

「サニア、アグレットのヤツが終わったらしいぞ」
「ふーん」
「Z-Xに放り込まれたらしい」
「へー、そうなんだ。小悪党にふさわしい末路ね」

 私が吐き捨てると、ガーヴォルフが苦笑した。

「おいおい、ずいぶん冷たいんだな。一応元カレなんだろう?」
「あんなヤツを元カレだなんて、やめてよ」
「違うのか?」
「当たり前でしょう。あんな髭も生えていないガキ」

 そう言って、私はガーヴォルフの頬に生えた髭をやさしくなで回した。

「それに、ベッドの上で他の男の話をするなんて無粋だわぁ」
「すまんすまん」

 苦笑するガーヴォルフの横に、私は添い寝した。
 アグレットなどとは比較にならないくらい大人の男だ。

「そういえば、今回もカイとかいうガキが関わっているようだな」
「だから、他の男の話はよしてよ」
「はははっ、それこそあっちの毛も生えていないようなガキだろう? 男のうちにも入らんさ」
「それもそうね」

 私は言って、ガーヴォルフの肩に手を回した。
 ガーヴォルフも、私を抱き寄せてくれた。

「ねえ、ガーヴォルフ。あなたの作ったブーストポーションを使えば、カイを倒せる?」
「ふっ、どうだろうな? やってみなければわからん」
「あら、自信満々ではないのね」
「そもそも倒す理由がない」
「あらあらあら。天下の大悪党ガーヴォルフともあろう者がずいぶん消極的ね」
「むろん、最後にはヤツも倒すさ。利用するだけ利用してから……な。戦いは感情で行うモノではないし、戦うならば勝たねば意味がない」
「アグレットに聞かせてやりたかったわ」
「聞く耳があったと思うか?」
「たしかにあの小悪党はそんな耳を持ち合わせていなかったかもね。あなたみたいな極悪人とちがってね」

 ガーヴォルフは「ふっ」と笑う。
 その笑みが、また魅力的だ。

「おいおい、極悪人とはひどいな」
「褒めているのよ」
「ふふふ、極悪人が褒め言葉か」
「少なくとも、小悪党の100倍は魅力的だわ」
「ならば、褒め言葉として受け取っておこう」



 それから、私と彼はベッドの上で共に一夜を過ごし――
――そして、朝を迎えた。
 ベッドから立ち上がった私は「ふぅー」と両手を挙げて伸びをした。

「あー、疲れた」
「朝起きて言う言葉じゃ無いな」
「あなたがそれを言うの?」

 私は苦笑して、お化粧を始めた。
 アグレットと組んでいたときには、お化粧なんて贅沢はできなかった。
 でも、今ならできる。
 全てはガーヴォルフに出会ったおかげだ。
 食事も一流レストランで食べられるし、なんなら宝飾品だって買える。
 こんな贅沢な生活があるなんて知らなかった。

「さて、そろそろ俺たちも動くとするか」
「もっともっと稼ぐのよね? どうするの?」
「とりあえずB-Tubeだな。あれは最高の宣伝になる」
「あら、アグレットやカイと同じ?」
「あんなガキどもと一緒にするな。オレ流の動画配信を見せてやるよ」
「具体的には?」
「そうだな……」

 ガーヴォルフは立ち上がり、わたしの背中に抱きついた。
 そして、耳元でささやくように自分の計画を告げた。

「あらあら。本当に恐ろしい男ね。でも、それこそカイを敵に回しそうだと思うけど?」
「言っただろう? 最終的にはヤツも潰すさ」
「勝てるかどうか分からないんじゃなかったの?」
「正面から挑んだら、そりゃヤバイ相手だろうさ。だが……」
「だが?」
「結局はステータスが高いだけのガキだ。ゴブリンや小悪党は倒せても大人の恐ろしさを前にすれば無力だ」

 ガーヴォルフは余裕の表情だ。
 この男がその気になれば、いともたやすくカイを葬れるだろう。

「素敵だわ、ガーヴォルフ」
「お前はいい女だよ、サニア」

 私とガーヴォルフは再び大人の口づけをした。

 私はアグレットのように小悪党で終わるつもりはない。
 だからといって、カイのように正道で頂点に立つ実力はない。。
 まして、いまさら故郷の農村にもどって、つまらない人生を送るつもりなど毛頭ない。

 私は国を、世界をも牛耳る最強の極悪人になってみせる。
 ガーヴォルフはそのために最適なパートナーだ。

 カイ。
 あなたはアグレットと正反対のようでいて、結局は同じ。
 2人とも甘ちゃんのガキにすぎないわ。
 大人の怖さを知らないあなたには、結局アグレットと同じ末路しかないのよ。

 わたしとカイとが再会するのは、まだ先の話。
 その時、わたしは……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにて先行更新中

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜

出汁の素
ファンタジー
 アレックスは、地方の騎士爵家の五男。食い扶持を得る為に13歳で冒険者学校に通い始めた、極々一般的な冒険者。  これと言った特技はなく、冒険者としては平凡な才能しか持たない戦士として、冒険者学校3か月の授業を終え、最低ランクHランクの認定を受け、実地研修としての初ダンジョンアタックを冒険者学校の同級生で組んだパーティーでで挑んだ。  そんなアレックスが、初めてモンスターを倒した時に手に入れたドロップアイテムが異常だった。  のちにドロップキングと呼ばれる冒険者と、仲間達の成長ストーリーここに開幕する。  第一章は、1カ月以内に2人で1000体のモンスターを倒せば一気にEランクに昇格出来る冒険者学校の最終試験ダンジョンアタック研修から、クラン設立までのお話。  第二章は、設立したクラン アクア。その本部となる街アクアを中心としたお話。  第三章は、クラン アクアのオーナーアリアの婚約破棄から始まる、ドタバタなお話。  第四章は、帝都での混乱から派生した戦いのお話(ざまぁ要素を含む)。  1章20話(除く閑話)予定です。 ------------------------------------------------------------- 書いて出し状態で、1話2,000字~3,000字程度予定ですが、大きくぶれがあります。 全部書きあがってから、情景描写、戦闘描写、心理描写等を増やしていく予定です。 下手な文章で申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...