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第3章 ドキドキの初コラボ!エルフの歌い手イリエナちゃん
第8話 イリエナちゃんの歌ってみた動画にゲスト出演♪……って!?ぼくもお歌をうたうの!?
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ふくふく亭の食堂に、イリエナちゃんの歌声が響く。
プリラおねーさんも、マリアさんも、お客さんたちも、従業員のみんなも、そしてぼくも、その歌声にうっとりしていた。
これは歌魔法じゃない。
未来を夢見る恋人達を唄う歌。
イリエナちゃんが1番好きなお歌だという。
ぼくはまだ恋愛なんてしたことがない。
歌詞の意味は半分も理解できていないかもしれない。
それでも聞き惚れて、いつの間にか涙が出るほどに感動していた。
うたい終わったイリエナちゃんがペコリと頭を下げると、みんなが盛大な拍手をした。
誰もが心を奪われる、すごい歌だった。
そして、イリエナちゃんが言った。
「さ、今度はカイくんの番ですよ♪」
昨日、ダンジョンからふくふく亭に戻ったあと、『歌い手としてのコラボ動画』も撮影しないとという話になって。。
今日の夕方、ふくふく亭の食堂で収録することになった。
さほど時間がなかったとはいえ、プリラおねーさんたちが宿泊客やご近所さんなどに宣伝した結果、食堂は超満員に。
お客さんとふくふく亭の従業員、マホメラを前にイリエナちゃんは堂々とうたい終えた。
……のだけどっ!
(無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!)
ぼくの頭の中は『無理』という言葉で埋まっていた。
こんな状況でお歌なんてうたえるわけがない!
そもそも、ぼくはこれまでの人生でうたったことなんてほとんどないし!
こんな状況でうたうなら、トロール1000匹に囲まれて戦う方がマシだ!!
その方が絶対に勝算がある!!!
さっきまでとは別の意味で涙が流れそうだ。
(逃げよう! これはもう逃げよう!)
お父さんも言っていたじゃないかっ!
勝ち目が無いときに逃げるのは恥じゃない。
絶対に勝てない相手に戦いを挑むなんて愚か者のすることだ。
ぼくが敵前逃亡を企んでいると、いつの間にか近くにいたマリアさんがぼくの耳元でささやいた。
「カイくん、逃げちゃだめっすよ。イリエナちゃんは恐怖に打ち勝ってモンスターと戦ったんっすよね? なら今度はカイくんが勇気を出す番っすよ」
うううっ。
たしかにその通りだ!
でもマリアさん。そのニヤニヤ顔は、絶対にぼくの大ピンチを楽しんでいるよね!?
とはいえ、たしかに動画配信のためにも逃げるのはダメだ。
視聴者さんやイリエナちゃんやプリラおねーさんにもあきれられちゃう。
(あー、もう! どうにでもなれ!!!)
ぼくはヤケっぱちで、さっきまでイリエナちゃんが立っていたところでうたうことにした。
(何をうたえばいいんだろう?)
これまでの人生でお歌をうたったことなんてほぼない。
それどころか、イリエナちゃんと出会うまで、お歌を聞いたことだってほとんどなかったのだ。
それでも知っている歌があるとしたら……
(やっぱり、アレしかないよね)
ぼくはつばをごくりと飲み込んでから、うたい始めた。
ぼくが何度も聞いたことがある唯一のお歌。
赤ちゃんの頃から、毎日聞かされた子守唄。
夜の森でお母さんがいつも歌ってくれた優しい唄だ。
お母さん、お父さん……
13歳の誕生日に独り立ちしてから、もう50日以上。
今では両親がどこにいるかも分からない。
2人はぼくの動画を見てくれているのだろうか。
B-Tuberなんて嫌いって言っていたから、見ていないかな?
それとも、密かにぼくのことを見守ってくれているのかな?
分からないけど……
でも、言えることもある。
今、ぼくは自分の夢に向かって進んでいる。
プリラおねーさんやイリエナちゃんやマリアさんや、いろんな人と出会って。
とっても楽しくて充実した日々を送っている。
母さんに安心してって伝えたい。
そんな思いを込めて、ぼくはお母さんの子守唄をうたい終えた。
ぼくのお歌は決して上手じゃなかったと思う。
お母さんよりも下手くそだったし、イリエナちゃんのお歌とくらべたらドラゴンとスライムくらいの実力差があった。
それでも。
みんなが拍手してくれた。
プリラおねーさんも、マリアさんも、イリエナちゃんも。
恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、ぼくはペコっと頭を下げた。
イリエナちゃんが言った。
「カイくん、素敵な歌でした」
「そんなことないよ」
「いいえ。カイくんらしく、とってもやさしい子守唄でしたよ」
イリエナちゃんはそう言って、ぼくの両手を手に取って微笑んでくれた。
「ありがとう、イリエナちゃん」
ぼくが笑い返すと、食堂の中はさらに大盛り上がりしたのだった。
さらに翌日。ぼくはイリエナちゃんへのプレゼントを探していろんなお店を回っていた。
(なにがいいんだろう?)
今日の午後撮影する最後のコラボ動画は、お互いにプレゼントを交換するという内容だ。
女の子は何をもらったら喜ぶのかな?
お菓子かな? お花かな? でもなんかピンとこない。
しばらく悩んで、ぼくが決めたプレゼントは……
プリラおねーさんも、マリアさんも、お客さんたちも、従業員のみんなも、そしてぼくも、その歌声にうっとりしていた。
これは歌魔法じゃない。
未来を夢見る恋人達を唄う歌。
イリエナちゃんが1番好きなお歌だという。
ぼくはまだ恋愛なんてしたことがない。
歌詞の意味は半分も理解できていないかもしれない。
それでも聞き惚れて、いつの間にか涙が出るほどに感動していた。
うたい終わったイリエナちゃんがペコリと頭を下げると、みんなが盛大な拍手をした。
誰もが心を奪われる、すごい歌だった。
そして、イリエナちゃんが言った。
「さ、今度はカイくんの番ですよ♪」
昨日、ダンジョンからふくふく亭に戻ったあと、『歌い手としてのコラボ動画』も撮影しないとという話になって。。
今日の夕方、ふくふく亭の食堂で収録することになった。
さほど時間がなかったとはいえ、プリラおねーさんたちが宿泊客やご近所さんなどに宣伝した結果、食堂は超満員に。
お客さんとふくふく亭の従業員、マホメラを前にイリエナちゃんは堂々とうたい終えた。
……のだけどっ!
(無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!)
ぼくの頭の中は『無理』という言葉で埋まっていた。
こんな状況でお歌なんてうたえるわけがない!
そもそも、ぼくはこれまでの人生でうたったことなんてほとんどないし!
こんな状況でうたうなら、トロール1000匹に囲まれて戦う方がマシだ!!
その方が絶対に勝算がある!!!
さっきまでとは別の意味で涙が流れそうだ。
(逃げよう! これはもう逃げよう!)
お父さんも言っていたじゃないかっ!
勝ち目が無いときに逃げるのは恥じゃない。
絶対に勝てない相手に戦いを挑むなんて愚か者のすることだ。
ぼくが敵前逃亡を企んでいると、いつの間にか近くにいたマリアさんがぼくの耳元でささやいた。
「カイくん、逃げちゃだめっすよ。イリエナちゃんは恐怖に打ち勝ってモンスターと戦ったんっすよね? なら今度はカイくんが勇気を出す番っすよ」
うううっ。
たしかにその通りだ!
でもマリアさん。そのニヤニヤ顔は、絶対にぼくの大ピンチを楽しんでいるよね!?
とはいえ、たしかに動画配信のためにも逃げるのはダメだ。
視聴者さんやイリエナちゃんやプリラおねーさんにもあきれられちゃう。
(あー、もう! どうにでもなれ!!!)
ぼくはヤケっぱちで、さっきまでイリエナちゃんが立っていたところでうたうことにした。
(何をうたえばいいんだろう?)
これまでの人生でお歌をうたったことなんてほぼない。
それどころか、イリエナちゃんと出会うまで、お歌を聞いたことだってほとんどなかったのだ。
それでも知っている歌があるとしたら……
(やっぱり、アレしかないよね)
ぼくはつばをごくりと飲み込んでから、うたい始めた。
ぼくが何度も聞いたことがある唯一のお歌。
赤ちゃんの頃から、毎日聞かされた子守唄。
夜の森でお母さんがいつも歌ってくれた優しい唄だ。
お母さん、お父さん……
13歳の誕生日に独り立ちしてから、もう50日以上。
今では両親がどこにいるかも分からない。
2人はぼくの動画を見てくれているのだろうか。
B-Tuberなんて嫌いって言っていたから、見ていないかな?
それとも、密かにぼくのことを見守ってくれているのかな?
分からないけど……
でも、言えることもある。
今、ぼくは自分の夢に向かって進んでいる。
プリラおねーさんやイリエナちゃんやマリアさんや、いろんな人と出会って。
とっても楽しくて充実した日々を送っている。
母さんに安心してって伝えたい。
そんな思いを込めて、ぼくはお母さんの子守唄をうたい終えた。
ぼくのお歌は決して上手じゃなかったと思う。
お母さんよりも下手くそだったし、イリエナちゃんのお歌とくらべたらドラゴンとスライムくらいの実力差があった。
それでも。
みんなが拍手してくれた。
プリラおねーさんも、マリアさんも、イリエナちゃんも。
恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、ぼくはペコっと頭を下げた。
イリエナちゃんが言った。
「カイくん、素敵な歌でした」
「そんなことないよ」
「いいえ。カイくんらしく、とってもやさしい子守唄でしたよ」
イリエナちゃんはそう言って、ぼくの両手を手に取って微笑んでくれた。
「ありがとう、イリエナちゃん」
ぼくが笑い返すと、食堂の中はさらに大盛り上がりしたのだった。
さらに翌日。ぼくはイリエナちゃんへのプレゼントを探していろんなお店を回っていた。
(なにがいいんだろう?)
今日の午後撮影する最後のコラボ動画は、お互いにプレゼントを交換するという内容だ。
女の子は何をもらったら喜ぶのかな?
お菓子かな? お花かな? でもなんかピンとこない。
しばらく悩んで、ぼくが決めたプレゼントは……
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