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17.決選投票!
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拳太の暴露に、ヤマトが慌てた様子を見せた。
何事か反論しようとするが、言葉を発することができない様子だ。
「決選投票の時間じゃ。秋海拳太と足利川ヤマトも含め、5人とも声を封じさせてもらった。笹倉昭博、玉村夏風、明夜いちご、各々投票せよ」
ユグゥラはそう言いながら、3人に投票用紙を配っていく。
「これは決選投票。無効票を投じたも者はどうあれ命はないと思え」
3人は鉛筆を握った。
夏風は迷わずに、いちごは少し迷って、昭博は、拳太とヤマトを困った表情で見つめてから、それぞれ名前を書いて投票した。
ユグゥラが投票箱の中から投票用紙を取りだし確認した。
「なるほど、こうなったか」
それから、ユグゥラは拳太たち5人のプレイヤーに言った。
「全ては決した。もう声を出せるぞ」
そう言われても、誰もなにも言わなかった。
ヤマトももう泣きマネをしていない。
ただただひたすらに沈黙がその場を支配していた。
ユグゥラがため息をついた。
「全く、最後だというのに盛り上がりに欠けることじゃ。たしかに秋海拳太の言うとおりこのゲームはクソゲーじゃったかもしれんのう」
ユグゥラにまでクソゲーと言われ、ヤマトが不満顔で叫びそうになった。
が、その前にユグゥラがあっさりと投票結果を発表した。
「投票相手は3人とも同じじゃ」
そう言って、ユグゥラは3枚の投票用紙をヤマトの机の上に叩き付けた。
「足利川ヤマト、3人ともお主がいじめっ子だと見破ったらしい」
ヤマトは目を見開いて驚きを隠さなかった。
「そんなっ……どうして!?」
拳太もこの結果には驚いた。昭博までヤマトに投票するとは思わなかったからだ。
夏風が言った。
「当然でしょ。推理なんてするまでもない。拳太くんのこれまでの言動を見て、いじめっ子の嘘つきだなんて思えるわけがないわ。馬鹿正直な推理や、泣きわめくヤマトくんへのやさしさや、その他諸々が演技なら子役どころかアカデミー賞ものよ」
ヤマトがぐっと言葉に詰まった。
「ま、それでも念のため1度目の投票では拳太くんに入れて反応をうかがったけどね」
夏風はそう言って苦笑した。
いちごが言った。
「アタシは最初からヤマトくんが怪しいって思っていたよ」
ヤマトが叫ぶ。
「なんでだよ!」
「だって、いじめの内容を具体的に話さなかったのって、ヤマトくんだけじゃん」
思い返せばたしかにそうだった。
あの時は幼いヤマトが混乱してなにも言えなくなったのだと拳太は思い込んでいた。
だが、今思えば下手な作り話をしてボロを出さないためだったのだろう。
「まあ、夏風ちゃんも怪しいって思ったし、ムカつくから嫌がらせしちゃおうと思ったけどねー」
夏風がいちごをにらんだ。
「私はあなたの方がムカつくけど?」
最後まで、この2人は仲が悪いままのようだ。
「それでさ、そのあとは拳太くんの推理にだまされちゃったけど、最後の拳太くんの話を聞いて理解できたわ。やっぱり最初から1番怪しい子が嘘つきだったわけだね」
ヤマトは悔しそうに両手を握りしめた。
「だとして、オッサンまで俺様に投票したんだよ!」
その言葉に、昭博は答えた。
「ごめんね。僕は最初からヤマトくんが嘘つきだって分かっていたから」
「そんな、どうして!?」
「どうして……そりゃあ、小学3年生の泣きマネが、大人に通じるわけないでしょ」
夏風といちごも苦笑しながらうなずいた。
「中学2年生にも通じないわよ。私も最初っから嘘くさい泣き声って思っていたもの」
「っていうか、あんな泣きマネが通用するのって、拳太くんくらいでしょ」
どうやらヤマトの泣きマネを一切疑っていなかったのは拳太だけだったらしい。
ヤマトは「クソッ」と毒づいた。
そんなヤマトにユグゥラが告げた。
「足利川ヤマトよ。最初にゲームのアイデアを聞いた時は面白いと思ったものじゃが、とんだ期待外れじゃったな」
「うるせー、俺様の考えたゲームは……」
「ゲームはそれなりによくできておったよ。誤算はゲームクリエイターとしてお主が一流でも、ゲームプレイヤーとしては三流もいいところだったことじゃな」
ヤマトは憎々しげにユグゥラをにらみつけた。
「まあ、他のプレイヤーに交じって遊びたいなどと言い出す時点で、あるいはゲームクリエイターとしても二流かもしれんがのう」
ヤマトは悔しげに肩をふるわせ、だが、すぐに諦めたように言った。
「分かったよ、俺様の負けだ。俺様は自分のゲームのルールを守る。殺してくれ」
「いい覚悟じゃな」
ユグゥラがヤマトをにらみ、教室の中に再び緊張が走った。
何事か反論しようとするが、言葉を発することができない様子だ。
「決選投票の時間じゃ。秋海拳太と足利川ヤマトも含め、5人とも声を封じさせてもらった。笹倉昭博、玉村夏風、明夜いちご、各々投票せよ」
ユグゥラはそう言いながら、3人に投票用紙を配っていく。
「これは決選投票。無効票を投じたも者はどうあれ命はないと思え」
3人は鉛筆を握った。
夏風は迷わずに、いちごは少し迷って、昭博は、拳太とヤマトを困った表情で見つめてから、それぞれ名前を書いて投票した。
ユグゥラが投票箱の中から投票用紙を取りだし確認した。
「なるほど、こうなったか」
それから、ユグゥラは拳太たち5人のプレイヤーに言った。
「全ては決した。もう声を出せるぞ」
そう言われても、誰もなにも言わなかった。
ヤマトももう泣きマネをしていない。
ただただひたすらに沈黙がその場を支配していた。
ユグゥラがため息をついた。
「全く、最後だというのに盛り上がりに欠けることじゃ。たしかに秋海拳太の言うとおりこのゲームはクソゲーじゃったかもしれんのう」
ユグゥラにまでクソゲーと言われ、ヤマトが不満顔で叫びそうになった。
が、その前にユグゥラがあっさりと投票結果を発表した。
「投票相手は3人とも同じじゃ」
そう言って、ユグゥラは3枚の投票用紙をヤマトの机の上に叩き付けた。
「足利川ヤマト、3人ともお主がいじめっ子だと見破ったらしい」
ヤマトは目を見開いて驚きを隠さなかった。
「そんなっ……どうして!?」
拳太もこの結果には驚いた。昭博までヤマトに投票するとは思わなかったからだ。
夏風が言った。
「当然でしょ。推理なんてするまでもない。拳太くんのこれまでの言動を見て、いじめっ子の嘘つきだなんて思えるわけがないわ。馬鹿正直な推理や、泣きわめくヤマトくんへのやさしさや、その他諸々が演技なら子役どころかアカデミー賞ものよ」
ヤマトがぐっと言葉に詰まった。
「ま、それでも念のため1度目の投票では拳太くんに入れて反応をうかがったけどね」
夏風はそう言って苦笑した。
いちごが言った。
「アタシは最初からヤマトくんが怪しいって思っていたよ」
ヤマトが叫ぶ。
「なんでだよ!」
「だって、いじめの内容を具体的に話さなかったのって、ヤマトくんだけじゃん」
思い返せばたしかにそうだった。
あの時は幼いヤマトが混乱してなにも言えなくなったのだと拳太は思い込んでいた。
だが、今思えば下手な作り話をしてボロを出さないためだったのだろう。
「まあ、夏風ちゃんも怪しいって思ったし、ムカつくから嫌がらせしちゃおうと思ったけどねー」
夏風がいちごをにらんだ。
「私はあなたの方がムカつくけど?」
最後まで、この2人は仲が悪いままのようだ。
「それでさ、そのあとは拳太くんの推理にだまされちゃったけど、最後の拳太くんの話を聞いて理解できたわ。やっぱり最初から1番怪しい子が嘘つきだったわけだね」
ヤマトは悔しそうに両手を握りしめた。
「だとして、オッサンまで俺様に投票したんだよ!」
その言葉に、昭博は答えた。
「ごめんね。僕は最初からヤマトくんが嘘つきだって分かっていたから」
「そんな、どうして!?」
「どうして……そりゃあ、小学3年生の泣きマネが、大人に通じるわけないでしょ」
夏風といちごも苦笑しながらうなずいた。
「中学2年生にも通じないわよ。私も最初っから嘘くさい泣き声って思っていたもの」
「っていうか、あんな泣きマネが通用するのって、拳太くんくらいでしょ」
どうやらヤマトの泣きマネを一切疑っていなかったのは拳太だけだったらしい。
ヤマトは「クソッ」と毒づいた。
そんなヤマトにユグゥラが告げた。
「足利川ヤマトよ。最初にゲームのアイデアを聞いた時は面白いと思ったものじゃが、とんだ期待外れじゃったな」
「うるせー、俺様の考えたゲームは……」
「ゲームはそれなりによくできておったよ。誤算はゲームクリエイターとしてお主が一流でも、ゲームプレイヤーとしては三流もいいところだったことじゃな」
ヤマトは憎々しげにユグゥラをにらみつけた。
「まあ、他のプレイヤーに交じって遊びたいなどと言い出す時点で、あるいはゲームクリエイターとしても二流かもしれんがのう」
ヤマトは悔しげに肩をふるわせ、だが、すぐに諦めたように言った。
「分かったよ、俺様の負けだ。俺様は自分のゲームのルールを守る。殺してくれ」
「いい覚悟じゃな」
ユグゥラがヤマトをにらみ、教室の中に再び緊張が走った。
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