上 下
11 / 20
第二階層 黒の洞窟

第2話 炎の戦い!アライクブラックドラゴンの恐怖

しおりを挟む
 炎に焼かれながら、優汰はオレの方に何かを投げよこした。

 火の杖フレアスティック

 だけど、死体犬ミイラドッグすら一撃では倒せない程度の武器では……
 一瞬躊躇したオレの横に、蒼ちゃんが駆け寄った。
 そしてためらうことなく火の杖フレアスティックを手に取ると叫んだ。

「いっけ!!!」

 火の杖フレアスティックから発射されたのは、オレや優汰が使ったときとは比べものにならないほどの炎の玉……いや火炎だった。
 それこそ、黒疑竜黒疑竜アライクブラックドラゴンの吐いた炎よりもさらに威力が高かったかもしれない。
 その火炎には、さすがの黒疑竜アライクブラックドラゴンもたまらずよろよろと後ろに下がる。

「すごい……」

 呆然とつぶやくオレに蒼ちゃんが叫ぶ。

「挑英! 疾翔くん! 教官と優汰くんを!」

 そうだ。呆然としている場合じゃない。
 挑英が丸焦げの優汰に駆け寄るのを確認し、オレは教官の方へと走ろうとした。
 が、教官は自力で立ち上がり叫んだ。

「私はいい! 春風優汰を先に避難させろ!」
「はい」

 オレはうなずいて、優汰を通路へ避難させるべく挑英とともに彼の体を持ち上げた。
 優汰は泣きながらうめいていた。

「う。うぅ、痛いよぉ」
「しっかりしろ、優汰」

 オレは挑英とともに優汰を運んだ。
 なんとか、通路までやってきて優汰を床に寝かせた。ここなら黒疑竜アライクブラックドラゴンの巨体ではやってこれないだろう。
 通路の外から炎の息で攻撃される可能性はあるが……

 って、あれ?

「あの部屋って他に通路がなかったけど黒疑竜アライクブラックドラゴンはどうやって部屋から出入りするんだろう?」

 そんなオレの疑問に、挑英は「知るか」と吐き捨てた。

「アドベンチュラ-がワープゲートを通った瞬間に次の階層がモンスター含めて作られるんじゃないかという説もあるらしいが、今はダンジョンの謎など検討している場合ではない」

 たしかに。優汰を助けないと……それに未だに広間にいる蒼ちゃんと教官もだ。

「挑英、優汰のことをたのむ」

 オレは再び黒疑竜アライクブラックドラゴンのいる広間へと走ろうとした。

「おい、疾翔!?」
「蒼ちゃんを助けないとだろ?」
「だったら、俺が……」
「お前は電撃刀ビリビリソード使えないだろうが」

 もっとも黒疑竜アライクブラックドラゴン電撃刀ビリビリソードがどこまで通用するかはわからないけど。
 挑英は一瞬だけ言葉に詰まり、しかしすぐに気持ちを切り替えたようだ。

「蒼をたのむ」
「ああ、こっちこそ優汰をまかせたぞ」

 おたがいの幼なじみをたくしあって、オレは再び黒疑竜アライクブラックドラゴンの待つ戦場へと駆け戻った。

 広間の中はものすごい熱気で、息をするのもつらいくらいだった。
 その熱が黒疑竜アライクブラックドラゴンの炎の息ではなく、蒼ちゃんの持つ火の杖フレアスティックから放たれた火炎のせいだというのは、この際幸いだったかもしれない。
 黒疑竜アライクブラックドラゴンは火炎を前に苦しそうに動けないでいたのだから。

 しかし、蒼ちゃんの放つ火炎はあまりにも強すぎた。教官が手出しできないほどに強力だし、このままだと黒疑竜アライクブラックドラゴンどころか蒼ちゃん自身や教官まで熱で死にかねない。

 その一方で、黒疑竜アライクブラックドラゴンがまだ生きている以上、蒼ちゃんも火炎を止めるわけにもいかない。
 たしかに蒼ちゃんの魔力はすごいが、出力のコントロール訓練が必要みたいだ。
 オレも、広間に戻ったもののどう手出ししたらいいのかわからなかった。

 と、その時、キンという鋭い音が響いた。

(なんだ?)

 音は蒼ちゃんの方から聞こえたか?
 教官が「ちっ」と舌打ちした。

「もうもたないか」

 何がと確認する必要はなかった。蒼ちゃんが握る火の杖フレアスティックの先についた赤い宝石が割れつつあるのが、オレにも見えたからだ。
 この手の魔法のスティックは先端の宝石が割れると使えなくなる。もっとも、そう簡単に割れたりはしないらしいけど。
 蒼ちゃんの魔力がすごすぎて火の杖フレアスティックの強度がもたないのか。

 教官が叫ぶ。

「海野蒼! 少し威力を弱めろ!」

 だが、蒼ちゃんは半泣きの声を上げた。

「無理です。そんなの、どうやったらいいのかわかりません!」

 そうだろうな。魔力の出力を抑える方法なんてオレたちは学んでいない。
 見習いアドベンチュラ-ですらない、ただの小学生なんだから。
 オレは蒼ちゃんと教官のもとへと駆け寄った。

「志音疾翔! なぜ戻ってきた!?」
「優汰と同じです」
「何?」
「ここで教官と蒼ちゃんをおいて逃げ出して、それで助かったとしてもオレは一生自分を許せない!」

 そう言って、オレは電撃刀ビリビリソードを構えた。
 教官はあきれ顔で言った。

「むちゃなヤツだ。飛翔にそっくりだな」
「やっぱり、教官は飛翔兄ちゃんのことを知っているんですか?」
「生き残ったら教えてやる。それよりも火の杖フレアスティックはもう限界だ。海野蒼の炎が消えたら、二人で黒疑竜アライクブラックドラゴンをたたくぞ」
「はい」

 オレは頷いて、未だ炎にまかれている黒疑竜アライクブラックドラゴンをにらんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...