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第13章 受け継ぐもの

第0.3話 プロローグ7

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【前書き】
 この話は時間軸順では、第7章 冒頭にある「第0.2話 プロローグ2」の続きとなっています。
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 やっと私達のプロジェクトに対する世界政府の認可が下りた。十二年ごとに訪れるノウアルズの実際の映像や、そこに至るまでの具体的な計画。研究を開始して二十五年、それらの研究成果を提出してやっと実際の宇宙船の建造にまでこぎつけた。

 移民する人類の受精卵も一万人分集まっている。

「遥教授。ようやく脳神経回路の複写も、目標の二千人分を集められましたね」
「そうね。危険な実験に協力してくれた人達に感謝しないとね」

 肉体のクローンは簡単にできる。でも精神を複写する技術は確立していない。脳細胞全てのシナプスの繋がりを正確に読み込み、脳内に再現する。これはすごく難しい事だわ。読み込みで97%、脳内の構築で85%程度の再現が精一杯となっている。
 特に脳内スキャンには危険が伴う。

「私は異常なかったけど、それが原因で里見教授は亡くなられたものね」

 当初から一緒に研究して私を導いてくれた方。ノウアルズへの想いも人一倍だったのに……。
 最初二人だけだった研究員も今では千人を超えた。AIの研究者、惑星工学や宇宙航行技術、自然科学の専門家などが集まってくれた。政府関係者を加えると五万人の規模になっている。

「地球由来の生物の遺伝子をもらう事もできましたし、三年後の宇宙船の完成が待ち遠しいですね」

 世界政府が保管している、今は無き地球生物の遺伝子。これらを持って行けば、地球環境を再現する事も可能だわ。

「でも向こうには、ドラゴンを頂点とする生態系ができているの。できるだけそれを壊さずに人が暮らせるようにしてほしいわね」

 別の研究で、火星を地球と同じ環境にしようというプロジェクトがあったけど、結局失敗している。
 それに私が行きたかったのは過去の地球じゃなくて、ドラゴンの住む異世界なの。未来のないこの太陽系を離れた新天地。苦労もあるでしょうけど、新たな世界で生き生きと自由に人生を送るのを夢見てきた。

 結局私自身がその世界に行くことはできないけど、私の分身達に想いを託そう。
 惑星ノウアルズの太陽はまだまだ若い。私の分身となる者には、そこで希望に満ちた生活を送ってもらいたい。それが私の切なる願いだ。

 三年後、無事移民船が完成し出航式典が行なわれる。
 首都星ガニメデの静止衛星軌道上に建造された巨大な無人宇宙船。先端が少し尖った楕円形で、中央に遠心力で重力を発生させた居住区があり、人間だけでなく各動植物の遺伝子が冷凍凍結されて保管されている。
 千二百光年を旅する燃料と、一万人の受精卵を成長させるための装置や材料となる有機化合物が詰め込まれている。

 出航する姿を仲間と共に軌道ステーションから見送る。

 あなた達はこれからの長い長い航海の末に新天地へと辿り着く。その頃には私達人類はもういないでしょう。
 願わくは、そこが希望の地となる事を祈るわ。

 さあ、私達の想いを受け継ぐ者達よ、新天地へ旅立ちなさい。あなた達に幸あらん事を。



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【あとがき】
 お読みいただき、ありがとうございます。
 次回は、最終話とエピローグの二話連続更新となります。
 お楽しみに。
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