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第13章 受け継ぐもの

第143話 地上の神との戦い3

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 一旦後退していたマイヤドベガが再度戦場に足を踏み入れる。今度はホバージェットを使い高速でこちらに移動してくるようだね。少しは本気を出してきたかな。

「まずはあの足を止めようか。オリハルコンの鏡を使ってくれ」

 通信用の魔力伝達に使っていた、オリハルコンの凹面鏡と鏡を組み合わせて魔力をビームのように照射する。
 狙いは機動兵器の足にくっ付いている魔石。高濃度の魔素がまとわりついている足に、特一級魔術師による大魔力が命中し、遠くを走る機動兵器に火魔法が発現する。

「ウヌッ! 故障か?」

 足元から炎と煙が上がり、ジェット噴射が止まった。勢いよく前に倒れ込むように片膝を突き機動兵器の動きが止まる。
 足にくっ付いた魔石の魔素はホバージェットの吸気口から内部に侵入し、発現した魔法の炎が内部から破壊する。

「どんなフィルターを使っても魔素の侵入は防げないからね」

 最新の近代兵器といえど、魔素や魔力を感知するセンサーなどあるはずがない。どんな攻撃を受けたのか、マイヤドベガには見当もつかないだろうね。

 あの機動兵器は巨大な魔獣だと思えばいい。セオリー通り足を狙い動きを止めさせてもらったよ。
 次は……。

「ティーア、お願いするよ」
「は~い。任せてください、リビティナ様」

 石臼はつでんきを最大まで回して、お城後方の石垣から高速の弾丸が射出された。戦場で片膝を突く機動兵器の頭部が一瞬で破壊される。

 頭部を撃ち抜かれバランスを崩したのか、よろけるように片手を地面に突いた。
 目を狙うのも鉄則だからね。これで感知能力は確実に落ちる。

「ティーア、貴様か!! だがメインカメラをやられただけだ、支障はないわい! そこだな、ティーア」

 レールガンが発射された地点を正確にビーム砲が捉えて、石垣を破壊し土煙が立ち昇る。
 その光の筋とすれ違うように、別の発射地点からレールガンの砲弾が射出された。機動兵器の肩口に火花が走り、金属同士がぶつかりあう甲高い音が戦場に響き渡る。

「リビティナ様~、すみません。二発目は外してしまいました」
「それより、ティーア。怪我していないかい」
「はい、遠隔でトリガーを引きましたから無事ですよ。でも予備機も破壊されちゃいましたね」

 里にあった二組のレールガンで頭部と肩の砲塔を狙わせた。狙いが外れて肩の装甲に当たり貫くことはできなかったようだけど、砲塔の台座は歪んだようだね。充分な成果だよ。

 短距離ミサイルを発射すると、レーザー砲の照準が狂ったのか迎撃に苦労しているようだ。何発か直撃を食らっているよ。
 とはいえ、AI学習で修正し迎撃率を上げてきている。

「これは、どうかな」

 前方からのミサイルを迎撃していた機動兵器の動きが止まり、急に上空を見上げる。そこには岩を満載した爆撃機が急降下していた。
 やはり高熱を発するエンジンやビームのような高エネルギーは感知できても、反重力で浮かぶ爆撃機の存在は感知できなかったようだね。
 ようやく危険な物体と認識して迎撃態勢に移り、上空に向かってビームを発射した。

「避けただと!?」

 マイヤドベガの驚きの声が無線から流れて来た。その爆撃機には赤道まで一緒に行ってくれた、ベテランパイロットが乗船していてね、ビームは躱し慣れているんだよ。地上からもミサイルや投石器による攻撃を続け、狙い撃ちさせないようにする。

 上空から突貫してくる爆撃機をビームで撃ち抜いた時には、パイロットも脱出して地上に近い位置となっていた。爆撃機が破壊されても搭載された岩はそのまま高速で落下して来る。足のホバージェットが使えない機動兵器は回避できず直撃を受けた。

「リビティナ! この程度でワレが倒れるとでも思ったか!」

 さすがに装甲は厚いようだね。でも岩に埋もれて身動きができなくなっている。
 そのマイヤドベガの直上に巨大な岩が出現する。宮廷魔導士によるSS級の魔術。その影がマイヤドベガを捉えて落下していく。

「なんなのだ、この岩は……」

 突然現れたかのような巨岩をサブカメラで見たのか、驚愕の声が聞えて来た。それでも両肩の砲門で攻撃しているようだけど、その程度の攻撃で破壊できる大きさじゃないよ。

 地上に影を落としてゆっくり落下しているように見える巨大な岩。その破壊力はすさまじく耳をつんざく轟音と共に地響きが伝わって来た。
 砂の混じった爆風が円形に戦場を吹き抜け、その中心にはクレーターのような大穴が出現している。

「連続で攻撃してくれ」

 もう一人の宮廷魔導士が巨大な業火を出現させて、大穴が開いている場所を攻撃する。周辺の岩が溶け穴の底を埋め、真っ赤な溶岩の池へと変貌した。

「姉様。これであの神様をやっつけられたんでしょうか」
「死んでもらいたいんだけど、奴はしぶといからね」

 こちらの切り札というべき宮廷魔導士二人を使った攻撃。戦場の兵士達も半信半疑といった様子で見守る。

「姉様、あれは?」

 やはり、あの男は生きていたようだね。フライボードが遠隔操縦で飛んできた。先ほどの攻撃の中心部で固まりかけている溶岩が盛り上がり、機動兵器が立ち上がる。しかし全身は焼けただれ、両肩の砲塔は焼け落ち跡形もない。
 背中のバーニアを吹かして飛び上がり、同時に使い物にならなくなった両腕を分離パージする。

 真上まで来たフライボードから新たな腕が投下された。空中で両腕を付け替えた機動兵器の肩には、新品のレーザー砲とビーム砲が装備されていた。

「残念だったな、リビティナよ。ワレの防御力の方が上だったようだな」

 SS級魔術で造られたクレーターの盛り上がった縁に立ち、勝ち誇ったように地上の部隊を見下ろす。そして勝利を確信したかのような高笑いした。
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