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第12章 ラグナロク-神との戦い-

第136話 決戦当日

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 いよいよ決戦当日の朝。爆撃機の準備をしていると見張り役が悲鳴のような声で報告してきた。

「リビティナ様。魔獣が、魔獣の群れがこっちに向かってきます!!」

 魔獣だって! ここは砂漠地帯で魔獣なんかいなかったじゃないか!
 双眼鏡を覗くと、六本足で八角形の薄い金属体のマシンが、群れを成して近づいて来ている。
 あれはAI型の自律移動兵器! 背中に小さな砲塔を乗せている。小型レーザー砲か?

「進撃準備を中止して、魔術師部隊で迎撃に当たってくれ」
「あの女の差し金だな。ワレも出よう」

 マイヤドベガが前面に立ってビーム砲を撃つけど、敵の数が多い。薄い体で地上を分散して進む敵に、横からの砲撃では一度に多くを倒せない。五百体以上いるんじゃないか。シャカシャカと六本の足で固い乾いた地面を走り押し寄せて来る。

「何なのよ、あいつら! ゲジゲジみたいで気持ち悪い奴らね」

 ウィッチアも攻撃するけど、敵は回り込んでこの前線基地の内部を狙ってきている。レーザーの照準に人が捕らえられた時点で、焼き殺されるのは確実だ。

「イコルティ! 穴を塞ぐように土壁を築くよ」
「はい! 姉様」
「フィフィロとウィッチアは範囲魔法で敵を攻撃してくれ」
「やってるわよ! でも敵が多すぎるわ」

 水の防御壁を前面に張りつつ応戦するけど、やはり数が多い。一体でもこの横穴に侵入されたら被害は甚大だ。そんな中、戦闘機が一機飛び出して行った。

「頭上から狙われる。引き返すんだ!」
「任せておいてください、リビティナ様」

 そんな通信を残して、戦闘機が敵の移動兵器の上空を飛び回り攻撃する。地上からの小型レーザーはミラーコートで反射できるけど、上空のステーションからの攻撃は当たれば撃墜されてしまう。
 そう思った瞬間空の一点が光り、ビームが戦闘機を襲う。回避行動する戦闘機の後部に命中して火を噴き墜落していった。

 空からの強烈なビーム砲は地上にいるAI移動兵器ゲジゲジをも巻き込み、地上に大きな穴が開いた。その余波で周囲のメカも内部が焼かれたのか、煙を出して行動不能となっている。

「誰だか知らないけど、よくやったわ。これなら残りを殲滅できるわ」

 ウィッチアとフィフィロが範囲魔法で次々と敵を殲滅していく。みんなの働きで地上移動型の敵を完全に殲滅できた。戦闘機のパイロットは犠牲になったけど、この基地を守れたよ。

「これで終わりではないぞ、リビティナよ」

 あの兵器を送り込んできたのは、あの女。ステーションから第二波、第三波と次々に送り出してくるだろうね。

「リビティナ様。軌道エレベーターが動いています」

 二台のエレベーターが上下に移動しているのを、ティーアが望遠鏡で確認した。

「あれを止めないと、いつまでもこの攻撃が続きます。でも私の砲撃の腕では……」

 レールガンで撃ち抜こうにも、ティーアでは動く物体を捕らえることはできない。マイヤドベガのレーザーやビームでは強力過ぎてメインシャフト自体を破壊してしまう。

「ならばワレの砲塔にレールガンを括り付ければ良い」

 追尾や弾着計算のできる砲塔にレールガンを固定して撃てばよいと、マイヤドベガが提案してきた。

「それでいきましょう。この機械が計算してくれるなら照準を合わせるだけですから」

 そう言ってティーアは早速準備していく。マイヤドベガにレールガンの弾速や砲弾の重さなどの諸元を伝えて、火器管制システムに入力してもらう。

「ティーアよ。ワレの砲塔とそちらの照準を合致させるぞ」
「はい、マイヤドベガ様」

 遠くにある山の尖った岩を目印に双方の照準を合わせ、完全に射軸を平行にする。一発だけ試射して、狂いを補正する。

「ここからだと、着弾するまで時間がかかります。マイヤドベガ様、エレベーターの動きを予測して命中できるんですか」
「任せておけ、お前はこちらの合図でトリガーを引けば良い」

 高速射出のレールガンと言えど、五十キロ先の目標だと着弾までに三十秒は掛かる。エレベーターの動きと、砲弾の放物線の計算。これを人間の頭でするのは無理だ。機動兵器の多層バイオコンピューターなら即座に計算してくれるよ。

 少し離れた場所で石臼はつでんきが回り出す。頭上から狙われない場所で、マイヤドベガのマシンがうつ伏せ状態で固定され砲台の台座となる。その肩の砲塔には、既に電力ケーブルを接続したレールガンが設置されて発射を待つ。

「発射準備整いました」
「ティーアよ。上昇する軌道エレベーターを狙うぞ。シートから落ちぬようにな」
「はい、マイヤドベガ様」

 地上に移動兵器ゲジゲジを降ろしたであろう、エレベーターが上昇していく。その最高速度は時速八百キロにも及ぶ。加速していくエレベーターをレーザーの砲塔が追尾しながら上方へと傾く。

「今じゃ」

 その通信が入った瞬間にレールガンの先端から白い煙が上がり射出された。着弾までの三十秒、それは長く長く感じられた。
 静寂の後、メインシャフトを監視していた着弾観測者が命中を告げる。

「着弾確認しました!」
「やった、やりましたよ~」
「すごいもんだね。こんな距離から当てるなんて」
「リビティナよ、喜ぶのはまだ早いぞ。間もなくもう一台のエレベーターが降下してくるぞ」

 そうだったね。再度、石臼を回すように指示し、第二射目の準備をする。砲塔は既に上空に向かって四十五度以上に傾いている。ティーアがレールガン後方のシートに押し付けられるように上を向く。

「エレベーターが降下してきたぞ。準備はまだか」
「マイヤドベガ様、間もなくです。馬をもっと走らせろ!」

 レールガンの工兵たちが規定電力まで上げようと、馬に鞭を入れる。砲塔は既にエレベーターを捕らえたのか下にさがってきた。ここからだとシャフト地上部は地平線の下になり狙えない。到着する前に撃ち抜かないと……。

「発射準備完了!!」

 石臼を回していた馬が切り離され、百パーセントの電力供給が可能になった。

「よし、発射しろ」

 マイヤドベガの低い声と同時にレールガンが火を噴く。そして三十秒後……。

「命中です。エレベーターが破壊され地上に落ちていきました!!」

「おぉ~」という兵士達の歓声に包まれて、ティーアがシートから降りて来た。

「よくやったな、ティーア」
「いえ、いえ。マイヤドベガ様のお陰です」

「神様、ありがとうございます」と言う声も、そこら中から聞こえてきた。
 これで追加の地上移動兵器は無くなった。

「さあ、進撃を開始しよう」
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