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第12章 ラグナロク-神との戦い-
第135話 前線基地
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「リビティナ様、この方は」
「ほら、ネイトス。ボクが空で会ったって話してた、自称神と名乗っている男だよ」
フライボードから降り、二本の足で立ち上がっている巨大なマシン。その中から男が外部スピーカーで話す。
「ワレは神と名乗った覚えがないのだがな。名もちゃんとある、マイヤドベガという名がな」
「マイヤドベガだって!?」
「リビティナよ。お前のファミリーネームにも、ワレの名が付いておるだろう」
リビティナの長い名前の末尾に付けられたのはマイヤドベガ十八世。自分が造ったヴァンパイアの名前のファミリーネームだと聞いて悪寒が走ったよ。こんな男のファミリーなんてまっぴらなんだからね。
「すると今、空の上にいる女はリアアルタイルと言う名前なのかい」
イコルティの末尾に付けられた名前だ。
「ああ、そうだ。あの忌々しい女め! ワレを追放したことを後悔させてやる」
まあ、自分を殺そうとした女だからね、恨んで当然かな。ステーションから追放されて、今は空で製造したこの機動兵器から降りる事もできないそうだ。前任者は死んだと、あの女が勘違いするのも無理ないね。
恨みを晴らすためとはいえ、この地上で苦労しながら生きて来たんだろう。今は気力に満ちたいい声になっているじゃないか。
「リビティナよ。先ほどの頭に響く声、あれは止めてくれぬか」
魔力波の声はお気に召さなかったようだね。今は近くで収音マイクとスピーカーで話ができるけど、離れると意思疎通は難しくなる。共闘して戦うには不利だね。
「通信機を今から作ろう。それを使ってくれ」
この世界では電子部品が作れず、今まで無線通信を諦めていた。乗って来たフライボード内に自己再生のための設備があるそうで、電子部品は簡単に作れるらしい。
なるほど、有人タイプの大型フライボードのようだ。無補給で稼働できる自立単独型の兵器。前世で軍が使っていたのと同じタイプのようだね。
渡されたのは一センチ四方の電子基板が入った薄い箱。その横には燃料電池用の小さな水素ボンベが付属している。無線タイプのインカムとワンセットになっていて二百組作ってくれた。これならほとんどの兵士に渡すことができるよ。
インカムは獣人の兵士達の耳に合うようにこちらで調整する。オープン通話から個別やブロック通話の切り替えもできる優れものだね。
「ありがとう。これは助かるよ」
自称神も役に立つもんだ。
翌日、休憩場所となった山を出てメインシャフトへと向かう。爆撃機を密集隊形にしてステーションからの猛攻を防ぐ。
左二機の防御をマイヤドベガに任せて、残り二機をリビティナ、フィフィロ、ウィッチアで作る防壁で守る。
五時間なんとか守り切り、目標の山の麓が見えて来た。
「あの山で良いのだな」
「ああ、頼むよ、マイヤドベガ」
昨日、打ち合わせした通り、メインシャフト手前にある山の崖にビームを撃ち込む。機動兵器から放たれた五発のビームが横一直線に穴を穿がつ。
「あの場所にみんな逃げ込むよ」
平地に末広がりの稜線を持つ高い山。山頂には雪が積もり、大昔の日本という国の富士山とよく似た美しい山だ。今はその景色を見る暇もなく、ビームで焼かれてまだ少し熱い穴へと、爆撃機四機が着陸していく。
「ふぅ~。何とかここまで来れましたな」
「ここなら、みんなゆっくりできそうだね」
爆撃機を駐機しても、余裕のあるスペース。 マイヤドベガもいい仕事をしてくれるよ。
メインシャフトまでは残り五十キロ。ステーションはほぼ真上にある。この岩壁に作られた穴を前線基地として使い、前進の足掛かりにしよう。
「リビティナよ。ワレはメインシャフトの真下まで行き攻撃する。それまでシャフトは破壊しないようにしてくれるか」
マイヤドベガが言うには、ステーションを安定させていた方が攻撃しやすいらしい。軌道エレベーター用に立てられた四本の柱。その中央ならステーションからの攻撃もなく狙い撃てると言う。正確に同じ場所を撃つためにステーションは安定していた方がいいそうだ。
よしそれなら主要メンバーを集めて、しっかりと作戦会議で打ち合わせをしようかな。
「ボク達は、ここから三十キロ前方まで進んで、そこから長距離弾道ミサイルを撃つよ」
持ってきた長距離ミサイルは二十五発。それを三機の爆撃機に乗せて運ぶ。
「爆撃機にはボクとフィフィロ、それにウィッチアがそれぞれ乗り込んで防御壁を張りながら進む」
最前線に行くのは、現地でミサイルを設置し発射させる工兵と護衛のボク達。少数精鋭で一番危険な地帯へと向かうことになる。
「リビティナ様。私はここから中距離ミサイルで支援すればいいんですね」
ここにはティーア達、非戦闘員が残るけど前進する部隊の援護をしてもらう。長距離ミサイル以外の兵器と爆撃機一機をここに残して、その後方司令官にはネイトスを充てる。
「ミサイルはルルーチアに任せよう。ティーアはレールガンで軌道エレベーターを狙ってくれるか」
今も軌道エレベーターでナノマシンを上空から散布しているはずだ。それをティーアに狙い撃ってもらえれば、疫病がこれ以上広がる事はなくなる。
「これだけの距離ですので動いている物は無理ですね。軌道エレベーターが止まっている瞬間を狙います」
距離は遠いけどティーアなら命中させてくれるさ。
「姉様。あの男の神様も、この作戦に参加して護衛してくれるんですよね」
「三十キロ先まではボク達を護衛してくれるけど、その先の二十キロは単独でメインシャフトの中央部を目指すそうだ。そこに辿り着くまではボク達が支援する事になる」
敵のかく乱や、陽動のために中距離ミサイルなどで支援する。長距離ミサイルがステーションに当たればいいけど、迎撃される公算が高い。最終兵器としてあの男のビーム砲とレーザー砲による攻撃がキーとなる。
「マイヤドベガの情報だと、シャフトに取り付けられているのは対人用のレーザーだけで射程も十五キロだそうだ」
魔獣や獣などが間違って入って来ないようにしてるだけで、こんな大規模な攻撃は想定していないと言っていた。
「さあ、明日はいよいよ決戦だ。みんな今晩はゆっくり休んでくれ」
「ほら、ネイトス。ボクが空で会ったって話してた、自称神と名乗っている男だよ」
フライボードから降り、二本の足で立ち上がっている巨大なマシン。その中から男が外部スピーカーで話す。
「ワレは神と名乗った覚えがないのだがな。名もちゃんとある、マイヤドベガという名がな」
「マイヤドベガだって!?」
「リビティナよ。お前のファミリーネームにも、ワレの名が付いておるだろう」
リビティナの長い名前の末尾に付けられたのはマイヤドベガ十八世。自分が造ったヴァンパイアの名前のファミリーネームだと聞いて悪寒が走ったよ。こんな男のファミリーなんてまっぴらなんだからね。
「すると今、空の上にいる女はリアアルタイルと言う名前なのかい」
イコルティの末尾に付けられた名前だ。
「ああ、そうだ。あの忌々しい女め! ワレを追放したことを後悔させてやる」
まあ、自分を殺そうとした女だからね、恨んで当然かな。ステーションから追放されて、今は空で製造したこの機動兵器から降りる事もできないそうだ。前任者は死んだと、あの女が勘違いするのも無理ないね。
恨みを晴らすためとはいえ、この地上で苦労しながら生きて来たんだろう。今は気力に満ちたいい声になっているじゃないか。
「リビティナよ。先ほどの頭に響く声、あれは止めてくれぬか」
魔力波の声はお気に召さなかったようだね。今は近くで収音マイクとスピーカーで話ができるけど、離れると意思疎通は難しくなる。共闘して戦うには不利だね。
「通信機を今から作ろう。それを使ってくれ」
この世界では電子部品が作れず、今まで無線通信を諦めていた。乗って来たフライボード内に自己再生のための設備があるそうで、電子部品は簡単に作れるらしい。
なるほど、有人タイプの大型フライボードのようだ。無補給で稼働できる自立単独型の兵器。前世で軍が使っていたのと同じタイプのようだね。
渡されたのは一センチ四方の電子基板が入った薄い箱。その横には燃料電池用の小さな水素ボンベが付属している。無線タイプのインカムとワンセットになっていて二百組作ってくれた。これならほとんどの兵士に渡すことができるよ。
インカムは獣人の兵士達の耳に合うようにこちらで調整する。オープン通話から個別やブロック通話の切り替えもできる優れものだね。
「ありがとう。これは助かるよ」
自称神も役に立つもんだ。
翌日、休憩場所となった山を出てメインシャフトへと向かう。爆撃機を密集隊形にしてステーションからの猛攻を防ぐ。
左二機の防御をマイヤドベガに任せて、残り二機をリビティナ、フィフィロ、ウィッチアで作る防壁で守る。
五時間なんとか守り切り、目標の山の麓が見えて来た。
「あの山で良いのだな」
「ああ、頼むよ、マイヤドベガ」
昨日、打ち合わせした通り、メインシャフト手前にある山の崖にビームを撃ち込む。機動兵器から放たれた五発のビームが横一直線に穴を穿がつ。
「あの場所にみんな逃げ込むよ」
平地に末広がりの稜線を持つ高い山。山頂には雪が積もり、大昔の日本という国の富士山とよく似た美しい山だ。今はその景色を見る暇もなく、ビームで焼かれてまだ少し熱い穴へと、爆撃機四機が着陸していく。
「ふぅ~。何とかここまで来れましたな」
「ここなら、みんなゆっくりできそうだね」
爆撃機を駐機しても、余裕のあるスペース。 マイヤドベガもいい仕事をしてくれるよ。
メインシャフトまでは残り五十キロ。ステーションはほぼ真上にある。この岩壁に作られた穴を前線基地として使い、前進の足掛かりにしよう。
「リビティナよ。ワレはメインシャフトの真下まで行き攻撃する。それまでシャフトは破壊しないようにしてくれるか」
マイヤドベガが言うには、ステーションを安定させていた方が攻撃しやすいらしい。軌道エレベーター用に立てられた四本の柱。その中央ならステーションからの攻撃もなく狙い撃てると言う。正確に同じ場所を撃つためにステーションは安定していた方がいいそうだ。
よしそれなら主要メンバーを集めて、しっかりと作戦会議で打ち合わせをしようかな。
「ボク達は、ここから三十キロ前方まで進んで、そこから長距離弾道ミサイルを撃つよ」
持ってきた長距離ミサイルは二十五発。それを三機の爆撃機に乗せて運ぶ。
「爆撃機にはボクとフィフィロ、それにウィッチアがそれぞれ乗り込んで防御壁を張りながら進む」
最前線に行くのは、現地でミサイルを設置し発射させる工兵と護衛のボク達。少数精鋭で一番危険な地帯へと向かうことになる。
「リビティナ様。私はここから中距離ミサイルで支援すればいいんですね」
ここにはティーア達、非戦闘員が残るけど前進する部隊の援護をしてもらう。長距離ミサイル以外の兵器と爆撃機一機をここに残して、その後方司令官にはネイトスを充てる。
「ミサイルはルルーチアに任せよう。ティーアはレールガンで軌道エレベーターを狙ってくれるか」
今も軌道エレベーターでナノマシンを上空から散布しているはずだ。それをティーアに狙い撃ってもらえれば、疫病がこれ以上広がる事はなくなる。
「これだけの距離ですので動いている物は無理ですね。軌道エレベーターが止まっている瞬間を狙います」
距離は遠いけどティーアなら命中させてくれるさ。
「姉様。あの男の神様も、この作戦に参加して護衛してくれるんですよね」
「三十キロ先まではボク達を護衛してくれるけど、その先の二十キロは単独でメインシャフトの中央部を目指すそうだ。そこに辿り着くまではボク達が支援する事になる」
敵のかく乱や、陽動のために中距離ミサイルなどで支援する。長距離ミサイルがステーションに当たればいいけど、迎撃される公算が高い。最終兵器としてあの男のビーム砲とレーザー砲による攻撃がキーとなる。
「マイヤドベガの情報だと、シャフトに取り付けられているのは対人用のレーザーだけで射程も十五キロだそうだ」
魔獣や獣などが間違って入って来ないようにしてるだけで、こんな大規模な攻撃は想定していないと言っていた。
「さあ、明日はいよいよ決戦だ。みんな今晩はゆっくり休んでくれ」
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