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第11章 空の神

第119話 試練の村、来訪

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「リビティナ様。まさか人類が滅んでいたなんて……」
「太陽系が滅べば、人類も滅ぶさ。その残滓をこの星まで運んでくれた当時の人達に感謝した方がいいんだろうね」

 自分が持つ記憶でも太陽が赤色巨星化して、いずれ滅亡する運命であることを人類は既に予測していた。
 リビティナを含めアルディアが持つ人類の記憶は、移住計画の何十年も前に用意された一般人だろう。実際に太陽系を脱出する事を知らないのも当然だ。

「それよりもボクのご先祖様が、あんな小さな箱だったんだよ~。そっちの方がショックだよ」

 姿を変えて地上に降りた人間を元に戻す装置。それをうまく機能させるために産み出されたのがヴァンパイアだったなんて。なんだか神様の掌の上で踊らされていた気分だよ。

「何にしても、新たなヴァンパイアを造ってくれると言うなら、それを待つしかないね」

 洞窟の居間に戻って来て、あれこれアルディアと考えたけど、結局ここで待つしかないんだよね。

「待つのはいいのですが、食料が少し足りませんね。一旦里まで戻りますか」
「数日分ぐらいなら、この近くにある試練の村で調達した方が早いね」

 マウネル山の麓に広がる大森林の端にある、冒険者達が集まる村。そこなら必要な物を取り揃えられる。
 ネイトスが昔その村に住んでいたと話すと、「一度見てみたいですね」と口にするアルディアを連れて村まで行ってみる事にした。



「おい、賢者様だ! 賢者様がお帰りになられたぞ」

 村の入り口に入るなり、冒険者に囲まれて歓迎されてしまったよ。

「賢者様、よくおいでくだされました。わたくしは現在ここの支部長をしております、サビドラと申します」

 こんな所で立ち話も何だからと、冒険者ギルドへと案内された。建物は前に比べてすごく立派になっているね。道を歩く冒険者の数も多い。

「リビティナ様、すごい歓迎ぶりですね」
「長らく来ていなかったんだけど、ボクの事を覚えてくれていたようだね」
「それはもう、賢者様はこの村の英雄ですからな。魔国でのご活躍ぶりも聞き及んでおりますよ」

 リビティナがいなくなった後も、賢者発祥の地としてこの村は有名になったそうだ。武勇伝を語り継ぎ、毎年お祭りも開いているそうだよ。なんだかこそばゆいね。

「対帝国戦争の折には、この村からも魔国の援軍に志願する者が多くいたと聞いております」
「そうだったのかい。あの時は大変世話になったね」

 王国からの援軍のほとんどは、このハウランド領の兵士や冒険者だった。この村からも出してくれていたんだね。

「ところで今回は、どのようなご用向きでこの村に?」
「いやね、ちょっとマウネル山の洞窟に滞在するんで、食料などの買い出しに来たんだよ」
「であれば、その間この村に宿泊していって下さい。そちらの眷属の方共々歓迎いたしますぞ」
「いや、それは迷惑になるだろうし……それにボク達は国境検問所を通ってないから、見つかると迷惑を掛けちゃうよ」
「大丈夫でございますよ。領主のハウランド伯爵様も、賢者様が来られた時は歓迎するようにと御達しが出ておりますので」

 国は分かれていても、この領地ではリビティナやその眷属達は特別扱いしてもらっているようだね。それは助かるよ。

「それじゃ、二日程ここでお世話になるよ。あまり長居もできないんでね」
「ありがとうございます。では早速、祭りの準備をせねばなりませんな」
「えっ、お祭り?!」

 あれよあれよという間に祭りの準備が進み、リビティナは神輿に担がれ村中を練り歩いたり、夜の宴会でお酒や料理をごちそうになった。

「ここ最近、この村は観光地として栄えておりまして、一般住民も多く来てくれているのですよ」
「大森林を調査するのが、この村の役目じゃないのかい」
「相変わらず魔獣は強く、奥地へと挑む冒険者はめっきり減りましたな」

 森は豊かで、近隣の薬草採取や獣を狩るだけでも充分な収入になるそうだ。観光ツアーや商業施設での収入もあり栄えているらしいね。

「これも賢者様のお陰。感謝の言葉しかございません」

 その翌日も盛大なお祭りは続き、リビティナ達は抱えきれないほどの食料をもらって村を後にした。


「アルディア、ごめんね。ボクはああいう賑やかなのは苦手でね。後三、四日はこの洞窟でゆっくり滞在することにするよ」
「私も人が多いのは苦手ですので、こちらの方が落ち着きます」

 そう言ってもらうと助かるよ。一旦里に帰ってもいいけど、入れ違いになるかもしれないからね。ここで待つのが一番だよ。
 アルディアもここでの生活を満喫しているようだ。特に洞窟の外にあるサウナ風呂が気に入ったようで、「これ、いいですね」と、毎日入っていたよ。

 そうしているうちに四日が過ぎた日のお昼頃、その子はやって来た。
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