180 / 212
第11章 空の神
第119話 試練の村、来訪
しおりを挟む
「リビティナ様。まさか人類が滅んでいたなんて……」
「太陽系が滅べば、人類も滅ぶさ。その残滓をこの星まで運んでくれた当時の人達に感謝した方がいいんだろうね」
自分が持つ記憶でも太陽が赤色巨星化して、いずれ滅亡する運命であることを人類は既に予測していた。
リビティナを含めアルディアが持つ人類の記憶は、移住計画の何十年も前に用意された一般人だろう。実際に太陽系を脱出する事を知らないのも当然だ。
「それよりもボクのご先祖様が、あんな小さな箱だったんだよ~。そっちの方がショックだよ」
姿を変えて地上に降りた人間を元に戻す装置。それをうまく機能させるために産み出されたのがヴァンパイアだったなんて。なんだか神様の掌の上で踊らされていた気分だよ。
「何にしても、新たなヴァンパイアを造ってくれると言うなら、それを待つしかないね」
洞窟の居間に戻って来て、あれこれアルディアと考えたけど、結局ここで待つしかないんだよね。
「待つのはいいのですが、食料が少し足りませんね。一旦里まで戻りますか」
「数日分ぐらいなら、この近くにある試練の村で調達した方が早いね」
マウネル山の麓に広がる大森林の端にある、冒険者達が集まる村。そこなら必要な物を取り揃えられる。
ネイトスが昔その村に住んでいたと話すと、「一度見てみたいですね」と口にするアルディアを連れて村まで行ってみる事にした。
「おい、賢者様だ! 賢者様がお帰りになられたぞ」
村の入り口に入るなり、冒険者に囲まれて歓迎されてしまったよ。
「賢者様、よくおいでくだされました。わたくしは現在ここの支部長をしております、サビドラと申します」
こんな所で立ち話も何だからと、冒険者ギルドへと案内された。建物は前に比べてすごく立派になっているね。道を歩く冒険者の数も多い。
「リビティナ様、すごい歓迎ぶりですね」
「長らく来ていなかったんだけど、ボクの事を覚えてくれていたようだね」
「それはもう、賢者様はこの村の英雄ですからな。魔国でのご活躍ぶりも聞き及んでおりますよ」
リビティナがいなくなった後も、賢者発祥の地としてこの村は有名になったそうだ。武勇伝を語り継ぎ、毎年お祭りも開いているそうだよ。なんだかこそばゆいね。
「対帝国戦争の折には、この村からも魔国の援軍に志願する者が多くいたと聞いております」
「そうだったのかい。あの時は大変世話になったね」
王国からの援軍のほとんどは、このハウランド領の兵士や冒険者だった。この村からも出してくれていたんだね。
「ところで今回は、どのようなご用向きでこの村に?」
「いやね、ちょっとマウネル山の洞窟に滞在するんで、食料などの買い出しに来たんだよ」
「であれば、その間この村に宿泊していって下さい。そちらの眷属の方共々歓迎いたしますぞ」
「いや、それは迷惑になるだろうし……それにボク達は国境検問所を通ってないから、見つかると迷惑を掛けちゃうよ」
「大丈夫でございますよ。領主のハウランド伯爵様も、賢者様が来られた時は歓迎するようにと御達しが出ておりますので」
国は分かれていても、この領地ではリビティナやその眷属達は特別扱いしてもらっているようだね。それは助かるよ。
「それじゃ、二日程ここでお世話になるよ。あまり長居もできないんでね」
「ありがとうございます。では早速、祭りの準備をせねばなりませんな」
「えっ、お祭り?!」
あれよあれよという間に祭りの準備が進み、リビティナは神輿に担がれ村中を練り歩いたり、夜の宴会でお酒や料理をごちそうになった。
「ここ最近、この村は観光地として栄えておりまして、一般住民も多く来てくれているのですよ」
「大森林を調査するのが、この村の役目じゃないのかい」
「相変わらず魔獣は強く、奥地へと挑む冒険者はめっきり減りましたな」
森は豊かで、近隣の薬草採取や獣を狩るだけでも充分な収入になるそうだ。観光ツアーや商業施設での収入もあり栄えているらしいね。
「これも賢者様のお陰。感謝の言葉しかございません」
その翌日も盛大なお祭りは続き、リビティナ達は抱えきれないほどの食料をもらって村を後にした。
「アルディア、ごめんね。ボクはああいう賑やかなのは苦手でね。後三、四日はこの洞窟でゆっくり滞在することにするよ」
「私も人が多いのは苦手ですので、こちらの方が落ち着きます」
そう言ってもらうと助かるよ。一旦里に帰ってもいいけど、入れ違いになるかもしれないからね。ここで待つのが一番だよ。
アルディアもここでの生活を満喫しているようだ。特に洞窟の外にあるサウナ風呂が気に入ったようで、「これ、いいですね」と、毎日入っていたよ。
そうしているうちに四日が過ぎた日のお昼頃、その子はやって来た。
「太陽系が滅べば、人類も滅ぶさ。その残滓をこの星まで運んでくれた当時の人達に感謝した方がいいんだろうね」
自分が持つ記憶でも太陽が赤色巨星化して、いずれ滅亡する運命であることを人類は既に予測していた。
リビティナを含めアルディアが持つ人類の記憶は、移住計画の何十年も前に用意された一般人だろう。実際に太陽系を脱出する事を知らないのも当然だ。
「それよりもボクのご先祖様が、あんな小さな箱だったんだよ~。そっちの方がショックだよ」
姿を変えて地上に降りた人間を元に戻す装置。それをうまく機能させるために産み出されたのがヴァンパイアだったなんて。なんだか神様の掌の上で踊らされていた気分だよ。
「何にしても、新たなヴァンパイアを造ってくれると言うなら、それを待つしかないね」
洞窟の居間に戻って来て、あれこれアルディアと考えたけど、結局ここで待つしかないんだよね。
「待つのはいいのですが、食料が少し足りませんね。一旦里まで戻りますか」
「数日分ぐらいなら、この近くにある試練の村で調達した方が早いね」
マウネル山の麓に広がる大森林の端にある、冒険者達が集まる村。そこなら必要な物を取り揃えられる。
ネイトスが昔その村に住んでいたと話すと、「一度見てみたいですね」と口にするアルディアを連れて村まで行ってみる事にした。
「おい、賢者様だ! 賢者様がお帰りになられたぞ」
村の入り口に入るなり、冒険者に囲まれて歓迎されてしまったよ。
「賢者様、よくおいでくだされました。わたくしは現在ここの支部長をしております、サビドラと申します」
こんな所で立ち話も何だからと、冒険者ギルドへと案内された。建物は前に比べてすごく立派になっているね。道を歩く冒険者の数も多い。
「リビティナ様、すごい歓迎ぶりですね」
「長らく来ていなかったんだけど、ボクの事を覚えてくれていたようだね」
「それはもう、賢者様はこの村の英雄ですからな。魔国でのご活躍ぶりも聞き及んでおりますよ」
リビティナがいなくなった後も、賢者発祥の地としてこの村は有名になったそうだ。武勇伝を語り継ぎ、毎年お祭りも開いているそうだよ。なんだかこそばゆいね。
「対帝国戦争の折には、この村からも魔国の援軍に志願する者が多くいたと聞いております」
「そうだったのかい。あの時は大変世話になったね」
王国からの援軍のほとんどは、このハウランド領の兵士や冒険者だった。この村からも出してくれていたんだね。
「ところで今回は、どのようなご用向きでこの村に?」
「いやね、ちょっとマウネル山の洞窟に滞在するんで、食料などの買い出しに来たんだよ」
「であれば、その間この村に宿泊していって下さい。そちらの眷属の方共々歓迎いたしますぞ」
「いや、それは迷惑になるだろうし……それにボク達は国境検問所を通ってないから、見つかると迷惑を掛けちゃうよ」
「大丈夫でございますよ。領主のハウランド伯爵様も、賢者様が来られた時は歓迎するようにと御達しが出ておりますので」
国は分かれていても、この領地ではリビティナやその眷属達は特別扱いしてもらっているようだね。それは助かるよ。
「それじゃ、二日程ここでお世話になるよ。あまり長居もできないんでね」
「ありがとうございます。では早速、祭りの準備をせねばなりませんな」
「えっ、お祭り?!」
あれよあれよという間に祭りの準備が進み、リビティナは神輿に担がれ村中を練り歩いたり、夜の宴会でお酒や料理をごちそうになった。
「ここ最近、この村は観光地として栄えておりまして、一般住民も多く来てくれているのですよ」
「大森林を調査するのが、この村の役目じゃないのかい」
「相変わらず魔獣は強く、奥地へと挑む冒険者はめっきり減りましたな」
森は豊かで、近隣の薬草採取や獣を狩るだけでも充分な収入になるそうだ。観光ツアーや商業施設での収入もあり栄えているらしいね。
「これも賢者様のお陰。感謝の言葉しかございません」
その翌日も盛大なお祭りは続き、リビティナ達は抱えきれないほどの食料をもらって村を後にした。
「アルディア、ごめんね。ボクはああいう賑やかなのは苦手でね。後三、四日はこの洞窟でゆっくり滞在することにするよ」
「私も人が多いのは苦手ですので、こちらの方が落ち着きます」
そう言ってもらうと助かるよ。一旦里に帰ってもいいけど、入れ違いになるかもしれないからね。ここで待つのが一番だよ。
アルディアもここでの生活を満喫しているようだ。特に洞窟の外にあるサウナ風呂が気に入ったようで、「これ、いいですね」と、毎日入っていたよ。
そうしているうちに四日が過ぎた日のお昼頃、その子はやって来た。
1
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
アレキサンドライトの憂鬱。
雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。
アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。
どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい!
更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!?
これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。
★表紙イラスト……rin.rin様より。
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
学園アルカナディストピア
石田空
ファンタジー
国民全員にアルカナカードが配られ、大アルカナには貴族階級への昇格が、小アルカナには平民としての屈辱が与えられる階級社会を形成していた。
その中で唯一除外される大アルカナが存在していた。
何故か大アルカナの内【運命の輪】を与えられた人間は処刑されることとなっていた。
【運命の輪】の大アルカナが与えられ、それを秘匿して生活するスピカだったが、大アルカナを持つ人間のみが在籍する学園アルカナに召喚が決まってしまう。
スピカは自分が【運命の輪】だと気付かれぬよう必死で潜伏しようとするものの、学園アルカナ内の抗争に否が応にも巻き込まれてしまう。
国の維持をしようとする貴族階級の生徒会。
国に革命を起こすために抗争を巻き起こす平民階級の組織。
何故か暗躍する人々。
大アルカナの中でも発生するスクールカースト。
入学したてで右も左もわからないスピカは、同時期に入学した【愚者】の少年アレスと共に抗争に身を投じることとなる。
ただの学園内抗争が、世界の命運を決める……?
サイトより転載になります。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
異世界の権力者 〜休職中に異世界転生したら聖騎士団長という権力者になって働きすぎてしまった結果、世界統一をしてしまった話〜
rui ji roku
ファンタジー
⭐︎⭐︎⭐︎ できる限り毎日7:00〜8:00に1話投稿予定 ⭐︎⭐︎⭐︎
仮想敵国Xが日本に侵略してきて死んでしまった休職中の俺が
異世界転生したら聖騎士団長という権力者になって
休みたいのに休めず働き過ぎた結果
逆に侵略する立場になってしまった話
日本に住む陽キャ「太陽」と陰キャ「満月」の双子が
仮想敵国Xの突然の侵略で命を落とし、
世界の権力者を恨みながら異世界転生をする。
双子はそれぞれ聖霊を召喚する最強の聖騎士団長と
悪魔を召喚する最強の中央帝国皇帝のトップになります。
それぞれがチート級の能力を持ちながらも
聖霊や悪魔に振り回されながら国を大きくしていくストーリー。
陰キャの満月は部下に恵まれ、支えられながら聖騎士国を拡大する。
陽キャの太陽は独裁者になり、1人孤軍奮闘して中央帝国を拡大する。
様々な陰謀に巻き込まれながらも主人公最強として敵の野望を打ち砕く
波瀾万丈な物語です。
戦争中の両国はそれぞれ2人を中心に劇的な変化を遂げ、
お互いに知らぬまま侵略者として相まみえることになる。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる