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第10章 ヘブンズ教国
第109話 マリアンヌ3
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「これだけマリアンヌの意思が固いなら、手を貸してやらんといかんだろうな」
「そうですわね。二手に分かれて手続きをしましょうか」
「それじゃ、ネイトスは国の役所に行ってくれるかい。エリーシアはマリアンヌを連れて教会だね」
「はい、分かりましたわ」
「ねえ、ねえ。それよりもお腹空いた~。先にご飯を食べようよ~」
そうい言えばお昼はとっくに過ぎているわね。アタシのせいで悪い事をしてしまったわ。それなのに一緒に食事をしようと誘われた。
エルフィさんがここの料理は美味しいからと、断ろうとしていたアタシの背中を押して食堂へと連れて行く。
さすが国賓を招く迎賓館ね。街で見たことのない王国風の料理がバイキング形式でテーブルに並ぶ。
どれを取ればいいんだろうと迷っていると、エリーシアさんが、「これが、美味しいわよ」と肉や野菜料理をお皿に盛りつけてくれる。こんな優しい人達を騙していたことに、いまさらながら後悔する。
時間が無いからとネイトスさんが食事もそこそこに迎賓館を出る。アタシも急ぎ食事を済ませエリーシアさんと一緒に教会に向かった。
「ここが、お世話になっている教会ですのね」
「多分今は、シスターしかいないと思います。神父様は昼間、教皇庁に行っていますので」
「大丈夫よ。あなたを引き取る手続きだけだから、なんとかなるでしょう」
そう言って教会の扉のノッカーを叩く。出て来たシスターはエリーシアさんを見てすごく驚き、慌てて中に入って行った。次に出てきたのは年老いたシスター長だった。訝しむようにエリーシアさんに声を掛る
「魔族の方がどのようなご用件でしょうか」
「この子、マリアンヌが魔国への移住を希望しています。その手続きに伺いました」
「マリアンヌが! あなた、なんて事を!」
シスター長が怒りの形相で、アタシの腕を掴み中に引き入れようとする。
「お止めなさい! このような子供に暴力を振るうとは。それでも聖職者なのですか」
エリーシアさんがシスター長を押し留め、アタシを庇ってくれる。
「と、とにかく、中へお入りください」
シスター長はエリーシアさんとアタシを奥の部屋へと案内した。礼拝堂を抜け廊下を渡り神父様の部屋の手前にある応接室。日頃アタシ達が使わない部屋だ。
「この子は近々ここを出て、別の教会へ行く予定なんです」
「シスター長、アタシそんな事聞いていません」
「あなたは優秀な子ですからね。今回出した課題が終わればここは卒業なのよ」
卒業? ここを出て別の場所へ……。
「ここは学校のようなものだと言う事ですか」
「これは教会同士で既に決定された事。ですのでマリアンヌを魔国に出すことはできません」
そう言えば年上の人が順々にいなくなっていたわ。里子に出されたものと思っていた。
「教会は身寄りのない子供を預かって里親を探すと聞いています。わたくし達がマリアンヌの里親となりましょう」
「そのような事を急に言われましても、次の教会との契約も済んでいますし」
「あなた方は、この子供を私物化しているのですか!」
「そのような事は……。しかしながら今まで育てて教育してきたお金も相当掛かっておりまして」
「お金を支払えと」
「里親となられる際には。教会への寄付をお願いしております」
シスター長が紙に金額を書いて提示したようだ。
「この途方もないような金額を寄付せよと……」
「この子の将来性に見合った金額です」
これはどういうことだろう。まるでアタシを売買していうような雰囲気だわ。
「いずれにしましても、手続きは次の教会でお願いする事になります。今日のところはお引き取りを」
「現在、首都でも出国の手続きをしております。マリアンヌをそちらに連れていきます」
「そちらの手続きは進めていただいて結構ですが、保護者は現在この教会となっています。マリアンヌの世話はこちらで致します。さあ、あなたは自分の部屋に戻りなさい」
「で、でもシスター長……」
「聞き分けのない子ですね!」
シスター長は別のシスターを二人呼んで、無理やりアタシを部屋の外に連れ出した。部屋の中からはエリーシアさんがアタシを呼ぶ声と、シスター長の怒鳴る声が聞こえた。
「おい、マリアンヌ。お前、晩飯抜きだってな。一体何をやらかしたんだ」
「優秀だったあなたが……ねえ、何があったの」
周りの子供達が話しかけてくるけど、何も答える事ができず黙るしかなかった。
「神父様が帰ってきたら、お前お仕置き部屋に連れていかれるぞ」
「そんな!! ねえ、一緒に謝りに行ってあげるから、何があったか話して」
話したところで分かってもらえるはずないわ。アタシは魔国に行って眷属になりたいの。でも明後日の朝には、魔国の人達は帰ってしまう。
「マリアンヌ、こっちに来なさい。今晩あなたは地下室で過ごしなさい」
やはりお仕置き部屋と呼ばれている地下室に行くのね。他の人が地下室に行くのを見たことはあるけど、その後、三、四日は姿を見せない。アタシは初めてだけど、どこに連れていかれてもアタシの考えは変わらないわ。
あの壁画のような神様の姿になれるまでは……。
「そうですわね。二手に分かれて手続きをしましょうか」
「それじゃ、ネイトスは国の役所に行ってくれるかい。エリーシアはマリアンヌを連れて教会だね」
「はい、分かりましたわ」
「ねえ、ねえ。それよりもお腹空いた~。先にご飯を食べようよ~」
そうい言えばお昼はとっくに過ぎているわね。アタシのせいで悪い事をしてしまったわ。それなのに一緒に食事をしようと誘われた。
エルフィさんがここの料理は美味しいからと、断ろうとしていたアタシの背中を押して食堂へと連れて行く。
さすが国賓を招く迎賓館ね。街で見たことのない王国風の料理がバイキング形式でテーブルに並ぶ。
どれを取ればいいんだろうと迷っていると、エリーシアさんが、「これが、美味しいわよ」と肉や野菜料理をお皿に盛りつけてくれる。こんな優しい人達を騙していたことに、いまさらながら後悔する。
時間が無いからとネイトスさんが食事もそこそこに迎賓館を出る。アタシも急ぎ食事を済ませエリーシアさんと一緒に教会に向かった。
「ここが、お世話になっている教会ですのね」
「多分今は、シスターしかいないと思います。神父様は昼間、教皇庁に行っていますので」
「大丈夫よ。あなたを引き取る手続きだけだから、なんとかなるでしょう」
そう言って教会の扉のノッカーを叩く。出て来たシスターはエリーシアさんを見てすごく驚き、慌てて中に入って行った。次に出てきたのは年老いたシスター長だった。訝しむようにエリーシアさんに声を掛る
「魔族の方がどのようなご用件でしょうか」
「この子、マリアンヌが魔国への移住を希望しています。その手続きに伺いました」
「マリアンヌが! あなた、なんて事を!」
シスター長が怒りの形相で、アタシの腕を掴み中に引き入れようとする。
「お止めなさい! このような子供に暴力を振るうとは。それでも聖職者なのですか」
エリーシアさんがシスター長を押し留め、アタシを庇ってくれる。
「と、とにかく、中へお入りください」
シスター長はエリーシアさんとアタシを奥の部屋へと案内した。礼拝堂を抜け廊下を渡り神父様の部屋の手前にある応接室。日頃アタシ達が使わない部屋だ。
「この子は近々ここを出て、別の教会へ行く予定なんです」
「シスター長、アタシそんな事聞いていません」
「あなたは優秀な子ですからね。今回出した課題が終わればここは卒業なのよ」
卒業? ここを出て別の場所へ……。
「ここは学校のようなものだと言う事ですか」
「これは教会同士で既に決定された事。ですのでマリアンヌを魔国に出すことはできません」
そう言えば年上の人が順々にいなくなっていたわ。里子に出されたものと思っていた。
「教会は身寄りのない子供を預かって里親を探すと聞いています。わたくし達がマリアンヌの里親となりましょう」
「そのような事を急に言われましても、次の教会との契約も済んでいますし」
「あなた方は、この子供を私物化しているのですか!」
「そのような事は……。しかしながら今まで育てて教育してきたお金も相当掛かっておりまして」
「お金を支払えと」
「里親となられる際には。教会への寄付をお願いしております」
シスター長が紙に金額を書いて提示したようだ。
「この途方もないような金額を寄付せよと……」
「この子の将来性に見合った金額です」
これはどういうことだろう。まるでアタシを売買していうような雰囲気だわ。
「いずれにしましても、手続きは次の教会でお願いする事になります。今日のところはお引き取りを」
「現在、首都でも出国の手続きをしております。マリアンヌをそちらに連れていきます」
「そちらの手続きは進めていただいて結構ですが、保護者は現在この教会となっています。マリアンヌの世話はこちらで致します。さあ、あなたは自分の部屋に戻りなさい」
「で、でもシスター長……」
「聞き分けのない子ですね!」
シスター長は別のシスターを二人呼んで、無理やりアタシを部屋の外に連れ出した。部屋の中からはエリーシアさんがアタシを呼ぶ声と、シスター長の怒鳴る声が聞こえた。
「おい、マリアンヌ。お前、晩飯抜きだってな。一体何をやらかしたんだ」
「優秀だったあなたが……ねえ、何があったの」
周りの子供達が話しかけてくるけど、何も答える事ができず黙るしかなかった。
「神父様が帰ってきたら、お前お仕置き部屋に連れていかれるぞ」
「そんな!! ねえ、一緒に謝りに行ってあげるから、何があったか話して」
話したところで分かってもらえるはずないわ。アタシは魔国に行って眷属になりたいの。でも明後日の朝には、魔国の人達は帰ってしまう。
「マリアンヌ、こっちに来なさい。今晩あなたは地下室で過ごしなさい」
やはりお仕置き部屋と呼ばれている地下室に行くのね。他の人が地下室に行くのを見たことはあるけど、その後、三、四日は姿を見せない。アタシは初めてだけど、どこに連れていかれてもアタシの考えは変わらないわ。
あの壁画のような神様の姿になれるまでは……。
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