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第10章 ヘブンズ教国
第0.7話 プロローグ5
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「しかし町田さん達も大胆な事を考えますね。人間とのキメラとは……」
今まで研究してきた成果が動物との融合だと言うなら、まずは実験してみる事に反対はない。だが人の形を保てなくなった者の意識がどうなるのか、それだけが不安材料だな。
その後の実験で、猿と狼の融合実験が行なわれた。外見は手足が長く、直立のできるような狼の体の生物が出来上がる。動作はぎこちないが、成長するにつれ動きもスムーズになる。時折培養液に入れて急成長させたが魔素に侵される事もなく寿命まで生きる事ができている。
「次は人体実験だな」
「ええ、今度は上手くいきそうだわ」
太陽系より持ち込んだ一万人もの冷凍受精卵。一旦解凍し分裂した細胞を取り出し、元の受精卵は再度冷凍保存する。
この分裂した細胞に、成功例の多い爬虫類の外殻遺伝子を結合させる。
人工子宮内で成長させ、その途中経過を観察する。
「なるほどな、しっぽやエラなどが残ったまま成長するんだな」
「手足の形や脳の大きさは人に近くなります。このまま魔素に打ち勝って、成長してくれればいいのですが」
その後も成長を続け、生まれてきたのは二足歩行が可能な大型のトカゲのような生物。キメラとしては成功だな。
睡眠学習と容器内での急成長を繰り返すと、言葉を理解する程度の知能を持つ成体へと成長した。
「後はどれだけの知識を持たせられるかだな」
「脳の容量としては人間並なんですが、睡眠学習では限界があります。ここは記憶のコピーを行なう他ないと思われます」
町田氏の言うようにこの施設の保管されている二千人分の記憶データ、それをコピーし新たな生命体に書き写すのが一番早いか。
ここに居る五十人以上の研究員も人間の受精卵を成長させて、あらかじめ記録されている脳細胞の配列を定着させて、科学文明の知識と個人の記憶を移植した者達だ。
新たに生まれたこの生命体に、記憶を移植する事は可能だ。
だが実験を進めると、人間の記憶を移植した者は発狂し自殺するか廃人となってしまう。
「精神的な拒絶反応というものでしょうか」
「脳は人間でも、体はキメラだからな。精神が持たんのだろうな」
魔素に打ち勝つ生命体としては完成しているが、充分な知識を持たずに地上に降りると、他の獣に食われて絶滅するだけだ。
「それなら俺の脳神経回路を転写して、この生命体に移植してくれ」
「五十嵐、本気か! 神経回路をスキャンすれば一定の確率で脳が破壊されるぞ」
スキャンにより本体が死亡する可能性がある。死亡せずとも何らかの障害が残ってしまう。
「ここまで実験が成功しているんだ。人がこの惑星で生きていくためには、この方法しかないだろう」
五十嵐の決意は固いようだな。爬虫類班の研究員の何人もが、同じように志願している。
五十嵐達の意思を尊重して、意識の定着実験を行なった。精神的な強さからか、実験は成功し大型のトカゲの体に五十嵐の記憶が定着でき、精神的異常をきたすこともない。
「少し記憶の欠損があるようだが、大丈夫だ。俺達を地上に降ろしてくれるか」
「ああ、しっかりと頼むぞ」
睡眠学習で言葉を理解する大型のトカゲの生命体が二百体と、研究員の記憶を持つ生命体が地上に降ろされた。
地上での実験はこれからだ。この実験が成功すれば、次は俺達、哺乳類班が地上に降りる。五十嵐、実験の成功はお前の肩にかかっているぞ。
今まで研究してきた成果が動物との融合だと言うなら、まずは実験してみる事に反対はない。だが人の形を保てなくなった者の意識がどうなるのか、それだけが不安材料だな。
その後の実験で、猿と狼の融合実験が行なわれた。外見は手足が長く、直立のできるような狼の体の生物が出来上がる。動作はぎこちないが、成長するにつれ動きもスムーズになる。時折培養液に入れて急成長させたが魔素に侵される事もなく寿命まで生きる事ができている。
「次は人体実験だな」
「ええ、今度は上手くいきそうだわ」
太陽系より持ち込んだ一万人もの冷凍受精卵。一旦解凍し分裂した細胞を取り出し、元の受精卵は再度冷凍保存する。
この分裂した細胞に、成功例の多い爬虫類の外殻遺伝子を結合させる。
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「手足の形や脳の大きさは人に近くなります。このまま魔素に打ち勝って、成長してくれればいいのですが」
その後も成長を続け、生まれてきたのは二足歩行が可能な大型のトカゲのような生物。キメラとしては成功だな。
睡眠学習と容器内での急成長を繰り返すと、言葉を理解する程度の知能を持つ成体へと成長した。
「後はどれだけの知識を持たせられるかだな」
「脳の容量としては人間並なんですが、睡眠学習では限界があります。ここは記憶のコピーを行なう他ないと思われます」
町田氏の言うようにこの施設の保管されている二千人分の記憶データ、それをコピーし新たな生命体に書き写すのが一番早いか。
ここに居る五十人以上の研究員も人間の受精卵を成長させて、あらかじめ記録されている脳細胞の配列を定着させて、科学文明の知識と個人の記憶を移植した者達だ。
新たに生まれたこの生命体に、記憶を移植する事は可能だ。
だが実験を進めると、人間の記憶を移植した者は発狂し自殺するか廃人となってしまう。
「精神的な拒絶反応というものでしょうか」
「脳は人間でも、体はキメラだからな。精神が持たんのだろうな」
魔素に打ち勝つ生命体としては完成しているが、充分な知識を持たずに地上に降りると、他の獣に食われて絶滅するだけだ。
「それなら俺の脳神経回路を転写して、この生命体に移植してくれ」
「五十嵐、本気か! 神経回路をスキャンすれば一定の確率で脳が破壊されるぞ」
スキャンにより本体が死亡する可能性がある。死亡せずとも何らかの障害が残ってしまう。
「ここまで実験が成功しているんだ。人がこの惑星で生きていくためには、この方法しかないだろう」
五十嵐の決意は固いようだな。爬虫類班の研究員の何人もが、同じように志願している。
五十嵐達の意思を尊重して、意識の定着実験を行なった。精神的な強さからか、実験は成功し大型のトカゲの体に五十嵐の記憶が定着でき、精神的異常をきたすこともない。
「少し記憶の欠損があるようだが、大丈夫だ。俺達を地上に降ろしてくれるか」
「ああ、しっかりと頼むぞ」
睡眠学習で言葉を理解する大型のトカゲの生命体が二百体と、研究員の記憶を持つ生命体が地上に降ろされた。
地上での実験はこれからだ。この実験が成功すれば、次は俺達、哺乳類班が地上に降りる。五十嵐、実験の成功はお前の肩にかかっているぞ。
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