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第8章 ノルキア帝国戦争
第70話 帝国軍の動き2
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ミシュロム共和国の女王からもらった鏡を利用して、光通信による音声伝達をしている。風属性を持つ者がいないと動作しないけど、魔道具を作って電話のように遠くの人と話すことができるようになった。
「ティーア。オリハルコンの鏡はいくつ作れそうだい」
「そうですね。急いでもひと月に二組ぐらいが限度ですね」
そのオリハルコンは、この里で人工的に作る事に成功している。成功したとはいえ希少なオリハルコン、その製造方法は難しく大量に作ることができない。
女王からもらった二枚の鏡は通信用の光軸を通すために、鏡の中央に丸い穴を開ける必要があった。その切り出したオリハルコンの欠片から、成分を研究してもらうと、金属光沢を放つオリハルコンは以外にもガラスでできていた。
「あの時はびっくりしましたよね。溶けた後、ルツボの中に残っていたのがガラスだったんですからね」
工場長や職人達が見守る中で行なった実験。その結果には工場長も驚いていた。
「やけに固い金属とは思っていたが、原料がガラスとはな。多分、魔素が絡んでるはずだが、これなら俺達で作れるかも知れん」
魔力を流すと光り輝くオリハルコン。マダガスカル鋼と同じように魔素を取り込んでいる可能性は高い。それであれば人工的に作る事も可能だと工場長は言ってくれた。
そのガラスは、里で作っている双眼鏡の光学ガラスを使う。純度をさらに上げてオリハルコンの材料としている。
「高濃度の魔素の中で、そのガラスをゆっくり冷やして結晶化させるんですよ。それがすごく難しくて」
センサーや電子制御もないこの世界で、職人の勘だけで作り上げる。魔素が均一に結晶の間に入らないと、魔力を流したときに粉々に壊れてしまう。微妙な職人の感性で作るその技は、称賛に値するものだよ。
「二組できれば、最前線の二ヶ所とお城の司令部を通信で結ぶことができるからね。頑張って作ってくれないかな」
「はい、分かっていますよ。リビティナ様」
ティーアには、妖精族の羽の時もお世話になった。今回も期待しているよ。
「エルフィ~。シームの調子はどうだい」
空でロックバードの背に跨り訓練しているエルフィに声を掛ける。エルフィも魔力波による会話ができるようになった。そのお陰でシームとも出会えて、今ではすっかり仲良くなって親子のような関係になっている。
「順調よ。魔法攻撃を受けても落ち着いて回避できるわよ。でも最前線でドンパチしている所には連れて行かないからね」
「分かってるよ。敵の偵察だけしてくれたらいいからさ」
シームを自分の子供のように可愛がっているからね。危険な事はさせられないよ。
その二ヶ月後、帝国が国境付近に軍隊を集結させた。いつ攻め込んで来てもおかしくない状況で、国境線を挟んで双方が睨み合っている状態だと連絡を受けた。
ここは少し牽制しておくかな。
リビティナは敵の集まる国境付近へと行き、国境線の真上に飛び上がる。国境線を超えないように注意しながら、魔力波で敵兵に対して威圧の言葉を打ちつける。
「これより先は、我が魔王の領地である。お前達が国境を少しでも超えた場合、それは死を意味する! この言葉が理解できる者は早々にこの地より立ち去れ!!」
魔王の言葉に少し動揺したのか、敵兵がざわついているのがここからでも分かる。すると羽を持つ者が一人飛び上がって来た。妖精族か? いやあれはウィッチア。
「何言ってんのよ。そんな脅し文句ぐらいで兵が引く訳ないでしょう」
パタパタと飛んで、リビティナのすぐ近くまでやって来た。こんな上空の会話なら、他の者には聞こえない。普通の話し言葉で文句を言う。
「ウィッチア、なんでこんな所に居るのさ。不可侵条約で君達キノノサト国の兵士は国境を越えられないはずだろう」
「ワタシはね。帝国に雇われた傭兵なの。不可侵条約の範囲外よ」
「傭兵だって? 君は宮廷魔導士だろう。巫女様の許可は出ているのかい」
「ちょっ、そ、そんなのあんたに関係ないじゃない……」
少し動揺したのかしどろもどろになっている。あの巫女様が許可するはずないからね。
「ワタシは今、一介の冒険者なの! ほら、冒険者カードだって持ってるんだから」
そう言って、胸元からカードを取り出して見せに近づいて来た。こちらもどれどれと、ウィッチアのすぐ近くまで飛んで行ってカードを確認する。
「Eランク? 冒険者に成りたてじゃないか。一回でも依頼を熟したことはあるのかい」
全くの新品のカードで、使った様子もない。
「依頼? そうね。薬草を少し持って行ったことがあったわね……。そんなのどうでもいいでしょう! 今は傭兵として雇われてんのよ」
普通、傭兵として雇われるのはBランクの冒険者だよ。口実のためだけに、宮廷魔導士という身分を隠してカードを作ったんだろうね。
「ワタシ達は、あんたなんかに負けないんだからね」
そう言うと後方に離れていき、敵陣から二十人程がウィッチアと同じ羽の魔道具を背に浮かび上がって来た。ウィッチアを中心に横一列に並んでホバリングしている。
「この飛行部隊で、あんたらをケチョンケチョンにしてあげるんだからね。覚悟しておきなさいよ」
そう言って、隊列を組んだまま地上の陣地へと降りて行く。ちゃんと訓練された兵士達のようだね。デモンストレーションして戦力を誇示してきたよ。
これは戦闘が避けられそうにないみたいだ。
「ティーア。オリハルコンの鏡はいくつ作れそうだい」
「そうですね。急いでもひと月に二組ぐらいが限度ですね」
そのオリハルコンは、この里で人工的に作る事に成功している。成功したとはいえ希少なオリハルコン、その製造方法は難しく大量に作ることができない。
女王からもらった二枚の鏡は通信用の光軸を通すために、鏡の中央に丸い穴を開ける必要があった。その切り出したオリハルコンの欠片から、成分を研究してもらうと、金属光沢を放つオリハルコンは以外にもガラスでできていた。
「あの時はびっくりしましたよね。溶けた後、ルツボの中に残っていたのがガラスだったんですからね」
工場長や職人達が見守る中で行なった実験。その結果には工場長も驚いていた。
「やけに固い金属とは思っていたが、原料がガラスとはな。多分、魔素が絡んでるはずだが、これなら俺達で作れるかも知れん」
魔力を流すと光り輝くオリハルコン。マダガスカル鋼と同じように魔素を取り込んでいる可能性は高い。それであれば人工的に作る事も可能だと工場長は言ってくれた。
そのガラスは、里で作っている双眼鏡の光学ガラスを使う。純度をさらに上げてオリハルコンの材料としている。
「高濃度の魔素の中で、そのガラスをゆっくり冷やして結晶化させるんですよ。それがすごく難しくて」
センサーや電子制御もないこの世界で、職人の勘だけで作り上げる。魔素が均一に結晶の間に入らないと、魔力を流したときに粉々に壊れてしまう。微妙な職人の感性で作るその技は、称賛に値するものだよ。
「二組できれば、最前線の二ヶ所とお城の司令部を通信で結ぶことができるからね。頑張って作ってくれないかな」
「はい、分かっていますよ。リビティナ様」
ティーアには、妖精族の羽の時もお世話になった。今回も期待しているよ。
「エルフィ~。シームの調子はどうだい」
空でロックバードの背に跨り訓練しているエルフィに声を掛ける。エルフィも魔力波による会話ができるようになった。そのお陰でシームとも出会えて、今ではすっかり仲良くなって親子のような関係になっている。
「順調よ。魔法攻撃を受けても落ち着いて回避できるわよ。でも最前線でドンパチしている所には連れて行かないからね」
「分かってるよ。敵の偵察だけしてくれたらいいからさ」
シームを自分の子供のように可愛がっているからね。危険な事はさせられないよ。
その二ヶ月後、帝国が国境付近に軍隊を集結させた。いつ攻め込んで来てもおかしくない状況で、国境線を挟んで双方が睨み合っている状態だと連絡を受けた。
ここは少し牽制しておくかな。
リビティナは敵の集まる国境付近へと行き、国境線の真上に飛び上がる。国境線を超えないように注意しながら、魔力波で敵兵に対して威圧の言葉を打ちつける。
「これより先は、我が魔王の領地である。お前達が国境を少しでも超えた場合、それは死を意味する! この言葉が理解できる者は早々にこの地より立ち去れ!!」
魔王の言葉に少し動揺したのか、敵兵がざわついているのがここからでも分かる。すると羽を持つ者が一人飛び上がって来た。妖精族か? いやあれはウィッチア。
「何言ってんのよ。そんな脅し文句ぐらいで兵が引く訳ないでしょう」
パタパタと飛んで、リビティナのすぐ近くまでやって来た。こんな上空の会話なら、他の者には聞こえない。普通の話し言葉で文句を言う。
「ウィッチア、なんでこんな所に居るのさ。不可侵条約で君達キノノサト国の兵士は国境を越えられないはずだろう」
「ワタシはね。帝国に雇われた傭兵なの。不可侵条約の範囲外よ」
「傭兵だって? 君は宮廷魔導士だろう。巫女様の許可は出ているのかい」
「ちょっ、そ、そんなのあんたに関係ないじゃない……」
少し動揺したのかしどろもどろになっている。あの巫女様が許可するはずないからね。
「ワタシは今、一介の冒険者なの! ほら、冒険者カードだって持ってるんだから」
そう言って、胸元からカードを取り出して見せに近づいて来た。こちらもどれどれと、ウィッチアのすぐ近くまで飛んで行ってカードを確認する。
「Eランク? 冒険者に成りたてじゃないか。一回でも依頼を熟したことはあるのかい」
全くの新品のカードで、使った様子もない。
「依頼? そうね。薬草を少し持って行ったことがあったわね……。そんなのどうでもいいでしょう! 今は傭兵として雇われてんのよ」
普通、傭兵として雇われるのはBランクの冒険者だよ。口実のためだけに、宮廷魔導士という身分を隠してカードを作ったんだろうね。
「ワタシ達は、あんたなんかに負けないんだからね」
そう言うと後方に離れていき、敵陣から二十人程がウィッチアと同じ羽の魔道具を背に浮かび上がって来た。ウィッチアを中心に横一列に並んでホバリングしている。
「この飛行部隊で、あんたらをケチョンケチョンにしてあげるんだからね。覚悟しておきなさいよ」
そう言って、隊列を組んだまま地上の陣地へと降りて行く。ちゃんと訓練された兵士達のようだね。デモンストレーションして戦力を誇示してきたよ。
これは戦闘が避けられそうにないみたいだ。
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