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第6章 魔族の国
第46話 外交 ミシュロム共和国4
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「ところで、女王殿。例の物は見つかったのかな」
「米という食物でしたね。西方の小さな村で栽培しているのを探し出しました。今回は米三表を用意しています」
うひょ~! お米だよ。事前協議の場でミシュロム共和国内にお米が無いか探してほしいと依頼していた。物知りの妖精族なら探し出してくれるんじゃないかと、期待していたけど見つかったみたいだね。
「少しだけ袋に入れて持ってきています。これが魔王殿の言っていた米と思うのですが」
「ああ、これだよ! すまないな。恩に着るよ」
見せてもらったのはもみ殻の付いた種籾と白い精米。まさにお米だよ~。食べるのは精米された物だけど、魔国内で栽培がしたいから、殻の付いた脱穀していない実を用意してもらっている。
北方のミシュロム共和国産だからか、ちゃんとした短粒米だね。これなら美味しいご飯ができるよ~。
「そ、そうですか。魔王殿にそんな喜んでもらえるとは思ってもいませんでしたわ」
いやいや、オリハルコンの鏡よりもこっちの方が素晴らしい贈り物だよ。
おっと、頬が緩んでニンマリと笑ってしまうところだった。威厳を持って……威厳を持ってと。
お米は個人的にお願いしていた物だから、贈答品としてではなく女王からのプレゼントという形になるそうだ。あとで倉庫まで取りに来てほしいと言われた。
「ところで、キノノサト国では妖精族の姿を見かけなかったのだがな、貿易が減少しているのではないのかな」
これはエリーシアが言っていた事。この読みが当たっていれば、外交上色々とこちらが有利になれる。
「気付いておられましたか。最近は価値ある商品が少なくなってきまして、東方の商人達が興味を失くしているようなんですの」
最近は戦争に関する物資や食料ばかりを要求されて、貿易量が極端に少なくなったそうだ。珍しい物、知らない知識を求めている妖精族としては、ありきたりのものだけでは満足しないようだね。
「友好条約を結んだ後は、貴国と貿易を行ないたいと思っているのですけど、どうでしょうか」
「だが、そちらとの間に街道が無くてな。キノノサト国経由となってしまう」
キノノサト国との貿易量が減れば、別の販路を求めて魔国に近づいてくると思っていた。しかし直接の交易路が今のところ無い。
今回ここに来るにも、キノノサト国の検問所を通って来ている。地図上、国境に向かう道がいくつかあるようだけど詳細は分からず、魔国で道を通すにも技術力も人手もない。
「実は魔王城付近へと抜ける道があるのです。もう二百年以上使っていない道なんですけど」
女王は自国の地図をテーブルの上に置いて、東方の街道について説明する。一番東にあるのが、キノノサト国の国境検問所へ向かう道。その手前の山へ向かう道が途中で途切れている。
「この先に、今は魔国領となっているノルキア帝国へ入る古い道がありまして。その先は魔王城付近へと行く道に繋がっていますのよ」
ノルキア帝国は裕福でなく貿易を一切行なっていないから、この道も使っていなかったみたいだね。あの魔王城跡に繋がる道なら、その南には新しく作ったアカネイの町がある。その先は首都だ。交易ができればあの北端の町も中継地として栄えるね。
「でもこの道、山の途中に馬一頭しか通れない細い箇所がありまして、そこを拡幅する工事が必要なんですの」
「それを我ら魔族がお手伝いしてもいいかな」
「それはもちろん。こちらとしては助かりますわ」
早くに交易路が開通してくれれば、国の発展に繋がる。早いに越したことはない。
「こちらにも山を越える道があるようだが」
さっきの道よりもっと西の手前にも、途中で途切れている道がある。
「それは王国に繋がる道ですわね。ですがその先は魔獣の森が広がっていて道はないんですのよ。超大型魔獣の生息地になっていますの」
「その魔獣はベヒーモスかな」
「あら、よくご存じですわね」
地図の地形からすると、眷属の里の北側にある山脈だね。そこも交易路とする事ができれば、ミシュロム共和国との行き来が楽になる。
とはいえ眷属の里に入れる訳にはいかない。でも川の西側を通って王国に行く道は作れそうだね。
「その土地は今、魔国の領土になってる。そこに道を通せば王国に行けるが、王国とも貿易をするつもりはあるのかな」
「王国とですか……。魔王殿が仲介していただければ、できなくもないですが、王国には珍しい物が無いようですので」
アルメイヤ王国とは貿易のメリットがないと言う。だから今でも国交のないままになっているらしい。
「それならハウランド伯爵が作っている機械弓はどうですかね」
ネイトスが、辺境伯の領地で作っている弓の輸入を持ちかけてきた。
「機械弓? 聞いた事のない弓ですわね。どのような物か聞かせていただけますか」
現物があるからと、ネイトスが自分の弓を持ってきて見せる。
「これはすごい仕掛けの弓ですわね。最近の王国ではこんな物が流行っているのですか」
「それだけじゃなくて、改良された農機具などもあるな」
賢者としてアドバイスした機械がハウランド伯爵の所で製造している。これも輸出できるだろう。
「なるほど、一考する価値はありそうですわね。でもこの道を通すのは容易ではないと思いますわよ」
「ベヒーモスの事であればこちらに考えがある。王国との貿易を望むなら仲介も任せてもらおう」
王国との交易路が確保できたら、魔国としては通行料が取れる。これは国として最も簡単で効率的な収入源。魔国はまだ貧しい国だからね、この収入が得られればおいしい話となる。
「魔王殿。今日は有益なお話ができましたわ、感謝いたします」
「それはこちらもだ。今後とも友好的であってくれれば助かる」
これを機に友好を深めて、魔国が発展できるようにしていきたいものだ。
「米という食物でしたね。西方の小さな村で栽培しているのを探し出しました。今回は米三表を用意しています」
うひょ~! お米だよ。事前協議の場でミシュロム共和国内にお米が無いか探してほしいと依頼していた。物知りの妖精族なら探し出してくれるんじゃないかと、期待していたけど見つかったみたいだね。
「少しだけ袋に入れて持ってきています。これが魔王殿の言っていた米と思うのですが」
「ああ、これだよ! すまないな。恩に着るよ」
見せてもらったのはもみ殻の付いた種籾と白い精米。まさにお米だよ~。食べるのは精米された物だけど、魔国内で栽培がしたいから、殻の付いた脱穀していない実を用意してもらっている。
北方のミシュロム共和国産だからか、ちゃんとした短粒米だね。これなら美味しいご飯ができるよ~。
「そ、そうですか。魔王殿にそんな喜んでもらえるとは思ってもいませんでしたわ」
いやいや、オリハルコンの鏡よりもこっちの方が素晴らしい贈り物だよ。
おっと、頬が緩んでニンマリと笑ってしまうところだった。威厳を持って……威厳を持ってと。
お米は個人的にお願いしていた物だから、贈答品としてではなく女王からのプレゼントという形になるそうだ。あとで倉庫まで取りに来てほしいと言われた。
「ところで、キノノサト国では妖精族の姿を見かけなかったのだがな、貿易が減少しているのではないのかな」
これはエリーシアが言っていた事。この読みが当たっていれば、外交上色々とこちらが有利になれる。
「気付いておられましたか。最近は価値ある商品が少なくなってきまして、東方の商人達が興味を失くしているようなんですの」
最近は戦争に関する物資や食料ばかりを要求されて、貿易量が極端に少なくなったそうだ。珍しい物、知らない知識を求めている妖精族としては、ありきたりのものだけでは満足しないようだね。
「友好条約を結んだ後は、貴国と貿易を行ないたいと思っているのですけど、どうでしょうか」
「だが、そちらとの間に街道が無くてな。キノノサト国経由となってしまう」
キノノサト国との貿易量が減れば、別の販路を求めて魔国に近づいてくると思っていた。しかし直接の交易路が今のところ無い。
今回ここに来るにも、キノノサト国の検問所を通って来ている。地図上、国境に向かう道がいくつかあるようだけど詳細は分からず、魔国で道を通すにも技術力も人手もない。
「実は魔王城付近へと抜ける道があるのです。もう二百年以上使っていない道なんですけど」
女王は自国の地図をテーブルの上に置いて、東方の街道について説明する。一番東にあるのが、キノノサト国の国境検問所へ向かう道。その手前の山へ向かう道が途中で途切れている。
「この先に、今は魔国領となっているノルキア帝国へ入る古い道がありまして。その先は魔王城付近へと行く道に繋がっていますのよ」
ノルキア帝国は裕福でなく貿易を一切行なっていないから、この道も使っていなかったみたいだね。あの魔王城跡に繋がる道なら、その南には新しく作ったアカネイの町がある。その先は首都だ。交易ができればあの北端の町も中継地として栄えるね。
「でもこの道、山の途中に馬一頭しか通れない細い箇所がありまして、そこを拡幅する工事が必要なんですの」
「それを我ら魔族がお手伝いしてもいいかな」
「それはもちろん。こちらとしては助かりますわ」
早くに交易路が開通してくれれば、国の発展に繋がる。早いに越したことはない。
「こちらにも山を越える道があるようだが」
さっきの道よりもっと西の手前にも、途中で途切れている道がある。
「それは王国に繋がる道ですわね。ですがその先は魔獣の森が広がっていて道はないんですのよ。超大型魔獣の生息地になっていますの」
「その魔獣はベヒーモスかな」
「あら、よくご存じですわね」
地図の地形からすると、眷属の里の北側にある山脈だね。そこも交易路とする事ができれば、ミシュロム共和国との行き来が楽になる。
とはいえ眷属の里に入れる訳にはいかない。でも川の西側を通って王国に行く道は作れそうだね。
「その土地は今、魔国の領土になってる。そこに道を通せば王国に行けるが、王国とも貿易をするつもりはあるのかな」
「王国とですか……。魔王殿が仲介していただければ、できなくもないですが、王国には珍しい物が無いようですので」
アルメイヤ王国とは貿易のメリットがないと言う。だから今でも国交のないままになっているらしい。
「それならハウランド伯爵が作っている機械弓はどうですかね」
ネイトスが、辺境伯の領地で作っている弓の輸入を持ちかけてきた。
「機械弓? 聞いた事のない弓ですわね。どのような物か聞かせていただけますか」
現物があるからと、ネイトスが自分の弓を持ってきて見せる。
「これはすごい仕掛けの弓ですわね。最近の王国ではこんな物が流行っているのですか」
「それだけじゃなくて、改良された農機具などもあるな」
賢者としてアドバイスした機械がハウランド伯爵の所で製造している。これも輸出できるだろう。
「なるほど、一考する価値はありそうですわね。でもこの道を通すのは容易ではないと思いますわよ」
「ベヒーモスの事であればこちらに考えがある。王国との貿易を望むなら仲介も任せてもらおう」
王国との交易路が確保できたら、魔国としては通行料が取れる。これは国として最も簡単で効率的な収入源。魔国はまだ貧しい国だからね、この収入が得られればおいしい話となる。
「魔王殿。今日は有益なお話ができましたわ、感謝いたします」
「それはこちらもだ。今後とも友好的であってくれれば助かる」
これを機に友好を深めて、魔国が発展できるようにしていきたいものだ。
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