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第3章 安住の地
第39話 帝国冒険者のレイン
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レインの言っていた野営地に到着して食事の用意をする。川が近くにあるし平らで広い場所。確かに野営には打って付けの場所だ。
「俺は森で兎でも狩って来ます」
「ああ、お願いするよ」
「そ、それじゃさあ。このお嬢ちゃんの護衛をしておくから、アタイの分も獲物を狩って来てくれないかな」
「ボクに護衛は要らないよ。自分の食料が必要なら、君も一緒に狩りに行ってきなよ」
「えっ、でもあんた、Eランクの冒険者だって言ってなかった?」
「とにかく、護衛なんていらないから!」
人をランクだけで判断するのは冒険者の悪い癖だよ。ほんと困った娘だ。本当なら今頃、町のレストランで美味しい料理を食べているはずなのに。こんな所で全く予定外の野営になったのも君のせいなんだからね。
機械弓を持ち森に入って行くネイトスの後ろを、慌てたようにレインも弓を持って付いて行く。
「ねえ、ねえ。その弓、変わってるね」
「おい、触るんじゃねーぞ」
「あっ、ごめんよ。それ高そうな弓だもんな。やっぱり王国の冒険者は金持ちなんだね」
そんな二人を見送って、リビティナは料理するためのかまどを地面に作る。鍋に水と野菜を入れて火に掛けて待っていると、ネイトスとレインが一緒に帰ってきた。
「あんたのその弓、威力がものすごいね。それって王国で流行っているのかい」
「これは特別製で、リビティナ様に作ってもらった物だ」
「へぇ~、そうなんだ。あのお嬢ちゃん、リビティナって言うんだ。なんで様付け?」
キャピキャピとネイトスのすぐ近くで笑いながら話すレイン。腰をかがめて上目遣いで見てくるポーズに、まんざらでもないって顔をしているネイトス。
なんだか、すごく仲良くなっているじゃないか。眷属の君がイチャイチャしてちゃダメなんだからね。
「ネイトス。さっさと解体して鍋にお肉を入れなよ」
「は、はい。リビティナ様」
「レイン。あんたの分もちゃんと狩って来たんだろうね」
「うん。ほら、この通りさ」
腰の後ろに括り付けていた兎の耳を持ってリビティナに見せる。仕方ない、一緒に鍋を作ってやるか。
「うわ~、このスープすごく美味しいよ。お嬢ちゃん料理じょうずだね」
「バカ、リビティナ様と呼ばないか」
「え~、だってアタイよりも年下だろう。アタイは二十一歳なんだ。リビティナは成人したばかりかな」
リビティナの胸を見ながら言う。確かにレインのように胸は大きくないけど、こっちの方が遥かに年上なんだからね。
「ねえ、スープ余っていたら、お代わりをもらえるかな」
ほんと厚かましい娘だ。スープを注いでお碗をぐっと前に出す。
「あれ、リビティナの腕、毛が無くて真っ白だよ!」
しまった。獣人用の手袋から肩の部分の白い肌を見せてしまった。慌てて手を引っ込めたけどもう遅い。
「あぁ~、それでお面で顔を隠してるんだ。帝国だと白子の子供は殺されちゃうからね」
――白子? 殺される? レインが意味不明な言葉をつなげている。
ネイトスが詰め寄る。
「おい、レイン。それはどういう事だ、詳しく聞かせてくれ」
「アタイの子供の頃なんだけど、故郷の村にも白子になった子供が隠れ住んでいてね。半年ほどで死んじゃったんだけど、リビティナは元気だね」
レインの言葉は要領を得ず分かりずらいけど、白子と言うのは普通の獣人の子供が高熱を出し、突然毛が抜けて顔の形まで変わってしまう奇病だと説明してくれた。
「白子が見つかった村は、村ごと焼き払われるって言われてたから、村人みんなで匿っていたんだよ。伝染なんてする病気じゃないのにね」
レインはその子の友達で、白子になった後も家に行って遊んでいたそうだ。
レインの話をよくよく聞くと、その子は眷属になったのと同じ状態だ。一晩苦しんでその後、体中の毛皮が体から剥がれ落ちている。
「ねえ、レイン。その子は誰かに噛まれたりとかしなかったのかい」
「噛まれる? そんな事ないよ。原因は分からないけど急に熱が出てそうなったらしいよ」
ヴァンパイアはこの世界で一人だけ。リビティナ以外にそんな事ができるはずはない。すると人間化が自然発生したと言う事か……詳しく調べた方が良さそうだね。
「そんな子供は、他にも沢山いるのかな」
「どうだろう。アタイが冒険者になりたての頃に、村を焼く手伝いをする依頼が一度だけあったよ」
なるほど。村全体を焼くとなれば大仕事だから、冒険者ギルドに依頼が来るんだね。帝国の冒険者ギルドに行けばその辺りを調べられるかな。
「ボクは森でモンスターに噛まれてこんな体になったんだ。そんな話を帝国で聞いた事はあるかい」
「へぇ~、王国だとそんな怪物が居るんだ。帝国でそんな毒を持っている怪物の話は聞いた事ないよ」
レインは知らないようだ。でも、モンスターに噛まれて白子になったという設定で他の人に聞けば、詳しい事を知ることができそうだ。
「俺は森で兎でも狩って来ます」
「ああ、お願いするよ」
「そ、それじゃさあ。このお嬢ちゃんの護衛をしておくから、アタイの分も獲物を狩って来てくれないかな」
「ボクに護衛は要らないよ。自分の食料が必要なら、君も一緒に狩りに行ってきなよ」
「えっ、でもあんた、Eランクの冒険者だって言ってなかった?」
「とにかく、護衛なんていらないから!」
人をランクだけで判断するのは冒険者の悪い癖だよ。ほんと困った娘だ。本当なら今頃、町のレストランで美味しい料理を食べているはずなのに。こんな所で全く予定外の野営になったのも君のせいなんだからね。
機械弓を持ち森に入って行くネイトスの後ろを、慌てたようにレインも弓を持って付いて行く。
「ねえ、ねえ。その弓、変わってるね」
「おい、触るんじゃねーぞ」
「あっ、ごめんよ。それ高そうな弓だもんな。やっぱり王国の冒険者は金持ちなんだね」
そんな二人を見送って、リビティナは料理するためのかまどを地面に作る。鍋に水と野菜を入れて火に掛けて待っていると、ネイトスとレインが一緒に帰ってきた。
「あんたのその弓、威力がものすごいね。それって王国で流行っているのかい」
「これは特別製で、リビティナ様に作ってもらった物だ」
「へぇ~、そうなんだ。あのお嬢ちゃん、リビティナって言うんだ。なんで様付け?」
キャピキャピとネイトスのすぐ近くで笑いながら話すレイン。腰をかがめて上目遣いで見てくるポーズに、まんざらでもないって顔をしているネイトス。
なんだか、すごく仲良くなっているじゃないか。眷属の君がイチャイチャしてちゃダメなんだからね。
「ネイトス。さっさと解体して鍋にお肉を入れなよ」
「は、はい。リビティナ様」
「レイン。あんたの分もちゃんと狩って来たんだろうね」
「うん。ほら、この通りさ」
腰の後ろに括り付けていた兎の耳を持ってリビティナに見せる。仕方ない、一緒に鍋を作ってやるか。
「うわ~、このスープすごく美味しいよ。お嬢ちゃん料理じょうずだね」
「バカ、リビティナ様と呼ばないか」
「え~、だってアタイよりも年下だろう。アタイは二十一歳なんだ。リビティナは成人したばかりかな」
リビティナの胸を見ながら言う。確かにレインのように胸は大きくないけど、こっちの方が遥かに年上なんだからね。
「ねえ、スープ余っていたら、お代わりをもらえるかな」
ほんと厚かましい娘だ。スープを注いでお碗をぐっと前に出す。
「あれ、リビティナの腕、毛が無くて真っ白だよ!」
しまった。獣人用の手袋から肩の部分の白い肌を見せてしまった。慌てて手を引っ込めたけどもう遅い。
「あぁ~、それでお面で顔を隠してるんだ。帝国だと白子の子供は殺されちゃうからね」
――白子? 殺される? レインが意味不明な言葉をつなげている。
ネイトスが詰め寄る。
「おい、レイン。それはどういう事だ、詳しく聞かせてくれ」
「アタイの子供の頃なんだけど、故郷の村にも白子になった子供が隠れ住んでいてね。半年ほどで死んじゃったんだけど、リビティナは元気だね」
レインの言葉は要領を得ず分かりずらいけど、白子と言うのは普通の獣人の子供が高熱を出し、突然毛が抜けて顔の形まで変わってしまう奇病だと説明してくれた。
「白子が見つかった村は、村ごと焼き払われるって言われてたから、村人みんなで匿っていたんだよ。伝染なんてする病気じゃないのにね」
レインはその子の友達で、白子になった後も家に行って遊んでいたそうだ。
レインの話をよくよく聞くと、その子は眷属になったのと同じ状態だ。一晩苦しんでその後、体中の毛皮が体から剥がれ落ちている。
「ねえ、レイン。その子は誰かに噛まれたりとかしなかったのかい」
「噛まれる? そんな事ないよ。原因は分からないけど急に熱が出てそうなったらしいよ」
ヴァンパイアはこの世界で一人だけ。リビティナ以外にそんな事ができるはずはない。すると人間化が自然発生したと言う事か……詳しく調べた方が良さそうだね。
「そんな子供は、他にも沢山いるのかな」
「どうだろう。アタイが冒険者になりたての頃に、村を焼く手伝いをする依頼が一度だけあったよ」
なるほど。村全体を焼くとなれば大仕事だから、冒険者ギルドに依頼が来るんだね。帝国の冒険者ギルドに行けばその辺りを調べられるかな。
「ボクは森でモンスターに噛まれてこんな体になったんだ。そんな話を帝国で聞いた事はあるかい」
「へぇ~、王国だとそんな怪物が居るんだ。帝国でそんな毒を持っている怪物の話は聞いた事ないよ」
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