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第1章 始まりの洞窟
第4話 ヴァンパイア能力を確かめる
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自身の能力を確かめつつ食料となる獣を狩るために、洞窟のすぐ下に広がる森へと山道を降りて行く。途中大きな岩を持ち上げてみたけど、両手で頭の上まで上げる事ができた。武器は持っていないけど、この力があれば素手でも大丈夫だろう。
森に入ってすぐ、運よく大型の鹿のような獣をみつけた。その獣は大きな角があるものの見慣れない黒っぽい縞模様と、やけに筋肉質な体。やっぱりここは異世界、見知った動物とは違うようだね。
その鹿を仕留めるべく、リビティナはそっと近づいていく。獲物までの距離は遠く木々も多くて邪魔だけど、ここからはヴァンパイアの身体能力を頼りに走り出す。
「どりゃ~」
デコボコの地面であっても、その速度は自動車並。もしここで翼を出したら空を飛べるんじゃないかという速度で走る。当然そんなリビティナに気付いた鹿は、倒木などを避けて飛び跳ねながら逃げていく。
「そうは、させないぞ~。今晩のおかずは君に決めたんだからね」
神様からもらったこの体はすごい。獲物を目で追ってこっちのコースを進みたいと思っただけで、即座に体が反応してくれる。
よし追いついたぞ、と思った瞬間、逃げられないと思ったのか鹿が急に振り向いて、頭を下げて角をこちらに向けてきた。
「うわっ、わっ! ちょっと待ってよ~」
急に止まる事ができず、両腕をクロスして膝を抱えるような体制で防御する。そのまま鹿にぶち当たった衝撃で横に弾かれて、大きな木の幹に背中からぶつかってしまった。
「痛ってて、急に止まるなんて反則だよ~」
幸い鋭い鹿の角に当たった腕には傷一つ付いていなかった。ぶつかった衝撃で、背中の大木がギギィーと軋む音を立てながらゆっくりと後ろに倒れていく。
大木だけでなく、目の前の鹿ももんどりうって横倒しになっているじゃないか。ぶつかって無事なのはリビティナ一人だけだった。
「えっ、なんで。攻撃してきたのはそっちだよね? まあ、いいか。先に止めを刺しちゃおうかな」
膝に手を突きヨイショと立ち上がり、お尻についた砂を払い落とす。足をバタつかせている鹿に近づいて首に手刀を一閃すると、日本刀で斬られたかのように首が落ちて血を噴き出した。
「あれ、この血も栄養になるんだっけ」
血が一番の栄養だと言っていたから、もったいないような気がしたけど、獣の血は吸っても美味しくなさそうだし、そのままにしておこう。
落ちた首はここに放っておいて、まだ血を噴き出している胴体だけを持って帰る事にした。
――んん、何だ?
草むらの向こう、誰かが見ている気配がする。人……いや違うね。もっと大きな……獣かな。その途端、気配のする方向から火の玉が飛んできた。
「うわっ、なに!」
肩に担いでいた鹿を放り出して、咄嗟に腕で火の玉を弾く。リビティナに向かって来た火の玉は上空へと弾き飛ばされ飛散した。
「熱いじゃんか!」
あれは魔法……ゲームで言うところのファイヤーボールだよね。
神様から、この世界には魔法があるとは聞いてたけど、獣まで魔法を使って来るんだ。びっくりだよ。
魔法を撃ってきた方へ駆けだすと、そこには大きな二本の牙を生やしたサーベルタイガーのような獣が、口を開けてまた火の玉を撃って来た。
「このボクを、舐めるなよ!」
その火の玉を紙一重で躱して、大きく開いた口へと手刀を叩きこむ。獣の後頭部からは、閉じられた五本の指が赤く血に染まって、剣先のような形で突き出ていた。即死だね。
「この森には、こんな獣まで居るんだね。こいつも食べられるのかな」
血に染まった右手を引き抜きシュッと腕をひと振りし、手に着いた血を振り飛ばす。
こんな大きな獣を持ち帰っても、腐らせてしまうだけだろう。今日のところはさっきの鹿一頭で十分だと鹿の居た場所に戻る。すると、ハイエナのような動物が鹿の首を咥えて逃げていくところだった。
「うひゃ~。この森は油断も隙もないね」
他の獣に横取りされないように、今日の晩ご飯の胴体だけでもすぐに持ち帰ろう。鹿を肩に担いで全速力で洞窟へと戻って来た。
神様が言った通り、ヴァンパイアというのは相当の強さだと実感する。大きな鹿だけでなく、魔法を撃ってくる獣を難なく倒すこともできた。この分なら食料の心配をする必要はなさそうだ。
――しかし、この鹿をどうやって料理したらいいんだ?
前の世界での記憶はないけど、獣を解体した経験はないはずだ。列車も高速道路もある世界だ、精肉関係に就職でもしていない限り、お肉はスーパーでパックに入った物を買っていただろう。
これは困ったなと思ったけど、『獣の解体』と心に念じると、それに関する知識が頭の中に浮かんできた。
「おお、これは便利だね」
これは神様が、何も知らない自分のために授けてくれたガイダンス能力のようだ。転生時にもらえるチートスキルみたいなものかな、ありがたく使わせてもらうことにする。
「なになに、獣は木などに逆さに吊るして血抜きをする?」
あれ、おかしい。ヴァンパイアにとっては、血は栄養になるから全部飲んじゃえばいいはずなんだけど……。この知識は一般の人間のためにある知識みたいだね。さっき『魔法を使う獣』と心に念じても、フィクションの怪物としか出てこなかった。この、異世界に対応した知識とは違うようだ。
「神様。ちゃんとアップデートしておいてよ~」
この世界ではあまり役立たない知識が多いかも知れないけど、獣の皮を剥ぎ鹿のステーキを作る事はできた。今日のところは神様に感謝して美味しくいただいておこう。
お腹も満腹になったし、お風呂にでも入ろうと、一番奥にあるお風呂場へと向かう。食事前に湯船に水を張って、窯に火を入れてある。
「ちょうどいい湯加減だ。疲れた一日の最後にお風呂に入れるなんて最高だね」
さっさと服を脱いでお風呂に浸かる。誰もいないここは気兼ねする必要も無いから楽でいいね~。
おっと、そうだ。自分自身の事をちゃんと知っておかないとね。元々男なのか女なのかすら記憶がないリビティナ。そのせいか、自分の体なのに何となく違和感がある。
でもこの体は十四、五歳の女の子の体だ。お風呂に入りながら自分の体を触り確かめていく。
胸は手に収まるぐらいの大きさ、Cカップと言ったところだろうか。腰は細くくびれ、ヒップはまあある方だし、体形としてはいいんじゃないかな。
白くて綺麗なピチピチの肌は若さの象徴だね。そうだ、女の子として肝心な部分はどうなっているんだ? 毛は生えていないようだけど、下半身へと指を這わせて確かめてみる。
「んんっ、ああっ……。ちょっとくすぐったいね」
ちゃんと女の子としての機能はあるようだね。子供を産めるかどうかまでは分からないけど。
この小さな胸も、尖った耳も神様の趣味だって言っていたけど、胸はもう少しあっても良かったんじゃないかな。これから成長もできないし、神様ちゃんと作っておいてくださいよ~。
森に入ってすぐ、運よく大型の鹿のような獣をみつけた。その獣は大きな角があるものの見慣れない黒っぽい縞模様と、やけに筋肉質な体。やっぱりここは異世界、見知った動物とは違うようだね。
その鹿を仕留めるべく、リビティナはそっと近づいていく。獲物までの距離は遠く木々も多くて邪魔だけど、ここからはヴァンパイアの身体能力を頼りに走り出す。
「どりゃ~」
デコボコの地面であっても、その速度は自動車並。もしここで翼を出したら空を飛べるんじゃないかという速度で走る。当然そんなリビティナに気付いた鹿は、倒木などを避けて飛び跳ねながら逃げていく。
「そうは、させないぞ~。今晩のおかずは君に決めたんだからね」
神様からもらったこの体はすごい。獲物を目で追ってこっちのコースを進みたいと思っただけで、即座に体が反応してくれる。
よし追いついたぞ、と思った瞬間、逃げられないと思ったのか鹿が急に振り向いて、頭を下げて角をこちらに向けてきた。
「うわっ、わっ! ちょっと待ってよ~」
急に止まる事ができず、両腕をクロスして膝を抱えるような体制で防御する。そのまま鹿にぶち当たった衝撃で横に弾かれて、大きな木の幹に背中からぶつかってしまった。
「痛ってて、急に止まるなんて反則だよ~」
幸い鋭い鹿の角に当たった腕には傷一つ付いていなかった。ぶつかった衝撃で、背中の大木がギギィーと軋む音を立てながらゆっくりと後ろに倒れていく。
大木だけでなく、目の前の鹿ももんどりうって横倒しになっているじゃないか。ぶつかって無事なのはリビティナ一人だけだった。
「えっ、なんで。攻撃してきたのはそっちだよね? まあ、いいか。先に止めを刺しちゃおうかな」
膝に手を突きヨイショと立ち上がり、お尻についた砂を払い落とす。足をバタつかせている鹿に近づいて首に手刀を一閃すると、日本刀で斬られたかのように首が落ちて血を噴き出した。
「あれ、この血も栄養になるんだっけ」
血が一番の栄養だと言っていたから、もったいないような気がしたけど、獣の血は吸っても美味しくなさそうだし、そのままにしておこう。
落ちた首はここに放っておいて、まだ血を噴き出している胴体だけを持って帰る事にした。
――んん、何だ?
草むらの向こう、誰かが見ている気配がする。人……いや違うね。もっと大きな……獣かな。その途端、気配のする方向から火の玉が飛んできた。
「うわっ、なに!」
肩に担いでいた鹿を放り出して、咄嗟に腕で火の玉を弾く。リビティナに向かって来た火の玉は上空へと弾き飛ばされ飛散した。
「熱いじゃんか!」
あれは魔法……ゲームで言うところのファイヤーボールだよね。
神様から、この世界には魔法があるとは聞いてたけど、獣まで魔法を使って来るんだ。びっくりだよ。
魔法を撃ってきた方へ駆けだすと、そこには大きな二本の牙を生やしたサーベルタイガーのような獣が、口を開けてまた火の玉を撃って来た。
「このボクを、舐めるなよ!」
その火の玉を紙一重で躱して、大きく開いた口へと手刀を叩きこむ。獣の後頭部からは、閉じられた五本の指が赤く血に染まって、剣先のような形で突き出ていた。即死だね。
「この森には、こんな獣まで居るんだね。こいつも食べられるのかな」
血に染まった右手を引き抜きシュッと腕をひと振りし、手に着いた血を振り飛ばす。
こんな大きな獣を持ち帰っても、腐らせてしまうだけだろう。今日のところはさっきの鹿一頭で十分だと鹿の居た場所に戻る。すると、ハイエナのような動物が鹿の首を咥えて逃げていくところだった。
「うひゃ~。この森は油断も隙もないね」
他の獣に横取りされないように、今日の晩ご飯の胴体だけでもすぐに持ち帰ろう。鹿を肩に担いで全速力で洞窟へと戻って来た。
神様が言った通り、ヴァンパイアというのは相当の強さだと実感する。大きな鹿だけでなく、魔法を撃ってくる獣を難なく倒すこともできた。この分なら食料の心配をする必要はなさそうだ。
――しかし、この鹿をどうやって料理したらいいんだ?
前の世界での記憶はないけど、獣を解体した経験はないはずだ。列車も高速道路もある世界だ、精肉関係に就職でもしていない限り、お肉はスーパーでパックに入った物を買っていただろう。
これは困ったなと思ったけど、『獣の解体』と心に念じると、それに関する知識が頭の中に浮かんできた。
「おお、これは便利だね」
これは神様が、何も知らない自分のために授けてくれたガイダンス能力のようだ。転生時にもらえるチートスキルみたいなものかな、ありがたく使わせてもらうことにする。
「なになに、獣は木などに逆さに吊るして血抜きをする?」
あれ、おかしい。ヴァンパイアにとっては、血は栄養になるから全部飲んじゃえばいいはずなんだけど……。この知識は一般の人間のためにある知識みたいだね。さっき『魔法を使う獣』と心に念じても、フィクションの怪物としか出てこなかった。この、異世界に対応した知識とは違うようだ。
「神様。ちゃんとアップデートしておいてよ~」
この世界ではあまり役立たない知識が多いかも知れないけど、獣の皮を剥ぎ鹿のステーキを作る事はできた。今日のところは神様に感謝して美味しくいただいておこう。
お腹も満腹になったし、お風呂にでも入ろうと、一番奥にあるお風呂場へと向かう。食事前に湯船に水を張って、窯に火を入れてある。
「ちょうどいい湯加減だ。疲れた一日の最後にお風呂に入れるなんて最高だね」
さっさと服を脱いでお風呂に浸かる。誰もいないここは気兼ねする必要も無いから楽でいいね~。
おっと、そうだ。自分自身の事をちゃんと知っておかないとね。元々男なのか女なのかすら記憶がないリビティナ。そのせいか、自分の体なのに何となく違和感がある。
でもこの体は十四、五歳の女の子の体だ。お風呂に入りながら自分の体を触り確かめていく。
胸は手に収まるぐらいの大きさ、Cカップと言ったところだろうか。腰は細くくびれ、ヒップはまあある方だし、体形としてはいいんじゃないかな。
白くて綺麗なピチピチの肌は若さの象徴だね。そうだ、女の子として肝心な部分はどうなっているんだ? 毛は生えていないようだけど、下半身へと指を這わせて確かめてみる。
「んんっ、ああっ……。ちょっとくすぐったいね」
ちゃんと女の子としての機能はあるようだね。子供を産めるかどうかまでは分からないけど。
この小さな胸も、尖った耳も神様の趣味だって言っていたけど、胸はもう少しあっても良かったんじゃないかな。これから成長もできないし、神様ちゃんと作っておいてくださいよ~。
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