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第6章 魔族の国

第27話 魔族の国3

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「建国式などの段取りは、こちらに任せてくれるかな。君は威厳に満ちた姿を皆に見せてくれるだけでいい」
「ボクは何もしないで、玉座に座っているだけでいいんだよね。本当に頼むよ、伯爵~」

 辺境伯のお城で、魔族の国の建国に関する打ち合わせをしているけど、王様の大役なんて上手くできるのか不安しかない。

「こんなのボクは初めてなんだ。やり方も全く分からないんだからね」
「そりゃ私も同じさ。建国の式典なんて見たこともない、というよりここ二百年ほど新しい国なんて生まれていないからな。誰も知らんさ」

 内乱で誕生したノルキア帝国が一番新しいけど、戦乱の中での誕生だからこんな建国式はしていないそうだ。

「だからアルメイヤ王国やヘブンズ教国が誕生した時の式典を参考に、今回の式典を行う予定をしている」

 王都にある資料を取り寄せたり、ヘブンズ教国の司祭に古いしきたりを聞いたりと苦労しているそうだ。大陸の各国から要人を呼ぶそうで、遠くはリザードマンのガゼノラ帝国にまで連絡していると言う。

 そんなに大勢の人を呼ばないでほしいんだけどな。でも大々的に魔族の国が誕生したことを周知させるのが、目的の一つでもあるから仕方ないんだけど。

「まあ、そっちの方は何とかなる。それより各国との条約の調印式、これが一番大事なんだぞ」

 建国後すぐに周辺国を回って、不可侵条約や友好条約を結ばないといけない。これらの条約を結んで安定した国を作るのが今回の建国の理由。建国式も大事だけどその最初の外交が一番大事になってくる。

 下準備の交渉は既に行なわれていて、建国式のように形式的なものになるんだけど、そこは魔族の王としての資質が問われる事になる。

「一国の王として他国の王に対面する事になる。そこで侮られては後々に響くからな」
「ボクはすっと里にいて、貴族にもほとんど会っていないんだよ」
「まずは練習として、このアルメイヤ王国の王都に行ってもらおうと思っている」

 アルメイヤ王国の意向に沿う形で建国しているから、事情を知る王国での友好条約を最初に結ぶ事になっている。調印式を王都で開くから、それに参加するのが最初の仕事となる。

 王国なら友好的だから、何とかなるかもしれないけど、王都か……この国に八十年近く住んでいるけど、王都なんて行った事もないや。

「その後に鬼人族のキノノサト国の首都。最後に妖精族のミシュロム共和国の州都を予定している」

 貴族に対する挨拶などそれなりの練習はしているけど、貴族の風習は難しくて慣れないね。

「それと、各国との条約調印のときに持ってく手土産だが……用意はできそうか」

 各国の王に会う時は、儀礼として贈り物を用意してお互いが贈り合うそうだ。
 魔族の国としての特産品なり、高価な宝石や飾り物が必要になってくる。

「それならこちらで準備しているから大丈夫だよ」

 各国の王に合わせた物を今作っていて、もうすぐ完成する。

「結局、ノルキア帝国とは和平条約を結べなかったんだね」
「まあな、向こうは頑なに北部の地域を返せと言っているからな。王国も南に侵攻して占領している地域を返せと対立している。国境の確定や条約を結ぶ雰囲気じゃないな」

 その時々の国力によって国境線が決まっていくこの世界、そうそう対立の種が消える事はないんだろうね。
 まあ、今回対立しているノルキア帝国との国境は長くない。国境警備隊を配置しておけば戦争になる事もないだろう。

「泣いても笑っても、建国式まで後一ヶ月。最後の準備頑張らないとな」

 建国式典は、元ライダノス市のお城で執り行なう。帝国貴族のブクイットが使っていたお城をそのまま使い、ライダノスはヘレケルトスと改名して魔族の国の首都とする。この都市が国土の中央にあって便利だからそのまま使わせてもらう事にする。

 国名も結局『魔国』と単純な名前にした。リビティナ国だけは断固拒否したよ。要は魔族が支配する国だと分かってもらえばいいだけなんだからね。

「今日はゆっくりできるんだろう、是非私の屋敷に泊まっていってくれ。息子や娘も賢者様に会いたいと言っているからな」
「ああ、そうさせてもらうよ」

 ハウランド伯爵の息子さんはついこの間成人したばかり。次期領主として勉強している最中で大変だそうだけど、その成長した姿を見れるのは楽しみだよ。
 ハウランド伯爵とのこういう関係は、リビティナが魔王として建国した後も続いてほしいね。


 さて、眷属の里でも建国に向けた準備をしないと。

「で、ネイトスには魔国の首相になってもらうよ」
「首相!? 俺がですかい。それは無理ですぜ」
「そんな事言ったら、ボクだって王様なんて無理なんだからね」

 ここまで来たら、無理は承知でやらないとダメなんだよ~。

「外部大臣をエリーシアにお願いするよ」
「リビティナ様がそう言われるのでしたらお受けしますわ」
「貴族の振る舞いなど全く分からないからね。周辺国を回るときに外交官として一緒に来てアドバイスしてほしいんだ」
「はい、承知しました」

 国として主要な役職を決めて、各国に示さないといけない。実質的な仕事はアルメイヤ王国から来た文官や、この地を治めていた元帝国貴族のブクイットに任せるけど、体面的には眷属の人に各役職を担ってもらう。

 とはいえ人数が少ない。各大臣も実務を兼ねてもらう。その内、部下を付けて組織化していきたいところだ。

「ねえ、ねえ、リビティナ。あたしはなんか役職無いの」
「エルフィ。君は眷属じゃないんだから、そんなの無いよ。でも、妖精族の国に行く時は一緒について来てくれるかい」
「え~、それだけ。そんなの、つまんない!!」

 いや、そんな事言われても……エルフィはお気楽でいいよね~。
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