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第6章 魔族の国
第26話 魔族の国2
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「凄いじゃない。あの帝国の土地に魔族の国を造るだなんて」
「エルフィ。そんな大層な事じゃなくてね、王国が支配する代わりにボクの名前を貸してほしいってだけなんだよ」
「そうとは言え、新しい国ができるんでしょう。さすがリビティナね、これも最初から想定していた通りなのよね」
「こんなの想定してなかったよ~」
眷属の里に戻って、事の成り行きを話してみんなと相談する。一国の王なんて成りたくはないけど、平和のためには仕方ないからね。
「魔族の国との事ですが、私達がその魔族という事になるんでしょうか」
「ボクの眷属に変わりはないんだけど、キノノサト国に対する脅しとして魔族を名乗ってもらう事になるんだ」
「確かにキノノサト国は魔王と魔族を恐れていますから」
そう口を開いたのは元鬼人族の姫エリーシア。
「魔族は一時期この大陸の半分以上を支配していました。キノノサト国はその後、衰退した魔族に対し帝国と共に攻撃を仕掛け、多大な損害を受けたと聞いています」
魔王が居た最後の場所を帝国に渡し、王国との緩衝地帯として帝国を利用してきた。今その場所にかつての魔族が住み国境を接することになる。キノノサト国としては恐怖以外の何ものでもないだろうね。
「国ではいずれ魔王が復活すると言われていました。そうなれば攻められるのは恨みを買った帝国かキノノサト国であると」
そのためキノノサト国は軍事力を強化していったらしい。
この大陸で軍事大国と呼ばれているキノノサト国。魔王復活に備えての軍事力だったようだね。
「でも魔族の国を造っても、他国とは戦わないようにするよ。キノノサト国とは不可侵条約を結ぶつもりなんだ」
これ以上争いに巻き込まれたくないからね。妖精族とは友好関係を結びたいし、王国とは元々友好的だ。残るはノルキア帝国だけど、不可侵条約も友好関係も難しいかな。まあ、今回の戦いで疲弊している帝国が攻めてくる事はないだろうけど。
「リビティナ様、この里はどうなるんですか。ここは王国領です、新たな魔族の国に移住する事になるんでしょうか」
心配顔の眷属達に、安心するようにと説明する。
「いいや、みんなはここに居てもらって結構だよ。ここも魔族の国の領土になるんだ」
ハウランド伯爵が言うには既に国王と話し合っていて、友好の証しとして王国の一部、この眷属の里がある森と山の一帯を魔族領にすることが決まっているそうだ。
国境近くの森で、今まで何も利用していなかった場所だからね。譲り渡しても王国としては痛くもかゆくもないんだろう。
その土地を合わせて、ハウランド伯爵が納めているこの地方よりも少し広い土地に、元帝国の獣人と眷属の人達が住むことになる。
「魔族の国を嫌い、帝国に行きたいという獣人は帝国に送り届ける事になる。でも人気のあった帝国貴族のブクイット卿が実質的に治める土地だからと、魔族の国の国民になる獣人も多いらしい」
今まで帝国で貧しい生活をしてきているから、王国と友好関係にある魔族の国に期待している住民も居ると聞いている。
戦争の影響で避難していたレイン達も、住み慣れたエキソスの町に戻ってくると言っている。そんな人達のためにも、少しは頑張らないといけないね。
「その国の王様にリビティナが成るんでしょう。すごいじゃない。すると国の名前はリビティナ国かしら」
「そんなの恥ずかしすぎるよ、魔族の国でいいじゃないか」
ハウランド伯爵にも同じ事を言われたけど、王様になって自分の名前を国名にするなんて嫌だよ~。どこかの勇者のお話と同じじゃないか。
「それにね、僕は賢者のリビティナのままでいるんだ。魔王とは別人として存在する事になるのさ」
「なんでそんなややこしい事すんのよ」
「だってさ、王様になっちゃったらずっとお城で座ってないといけないんだよ。この里にも来れなくなるし、自由に動けなくなっちゃうじゃん」
そんなのは嫌だからね。引き籠るならお城よりもこの里の方がいいに決まっているよ。
「とは言え、国外の要人と会う必要があるでしょうな。その際はどうされますか」
ネイトスが国内運営や外交の事もあるからと心配するけど大丈夫さ。
「その時は魔王として演技しないといけないからね。仮面を外して翼を広げた形で人と会うようにするよ。賢者としては今まで通り仮面をつけローブ姿で現れるつもりさ」
魔王の名前は付けずに、魔族の王と名乗る。これで一人二役ができるだろう。
「では今まで通り、リビティナ様はこの里に居てくださると」
「そりゃそうだよ。眷属の君達と過ごすことがボクにとって一番だからね」
そう言うと里のみんなはホッとしたような顔をする。まあ少しの間は建国に関する行事があるから、ここを離れる事も多くなっちゃうけどね。
「と言う事で、みんなにも色々と協力してもらう事になるんだ。すまないけどよろしく頼むよ」
間もなく魔族の国の建国式典を大々的に行うそうだ。そのほとんどは王国の官僚達が準備してくれるけど、眷属の人達にも手伝ってもらう事になる。これから忙しくなるけどみんな快く引き受けてくれた。
なんだかややこしい事になっちゃったけど、ここに居るみんなとなら上手くやっていけるさ。
---------------------
【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
【設定集】を更新しています。
小説の参考になさってください。
タイトル
【設定集】転生ヴァンパイア様の引きこもりスローライフ。お暇なら国造りしませんか
・設定・地図(第6章 26話以降)
「エルフィ。そんな大層な事じゃなくてね、王国が支配する代わりにボクの名前を貸してほしいってだけなんだよ」
「そうとは言え、新しい国ができるんでしょう。さすがリビティナね、これも最初から想定していた通りなのよね」
「こんなの想定してなかったよ~」
眷属の里に戻って、事の成り行きを話してみんなと相談する。一国の王なんて成りたくはないけど、平和のためには仕方ないからね。
「魔族の国との事ですが、私達がその魔族という事になるんでしょうか」
「ボクの眷属に変わりはないんだけど、キノノサト国に対する脅しとして魔族を名乗ってもらう事になるんだ」
「確かにキノノサト国は魔王と魔族を恐れていますから」
そう口を開いたのは元鬼人族の姫エリーシア。
「魔族は一時期この大陸の半分以上を支配していました。キノノサト国はその後、衰退した魔族に対し帝国と共に攻撃を仕掛け、多大な損害を受けたと聞いています」
魔王が居た最後の場所を帝国に渡し、王国との緩衝地帯として帝国を利用してきた。今その場所にかつての魔族が住み国境を接することになる。キノノサト国としては恐怖以外の何ものでもないだろうね。
「国ではいずれ魔王が復活すると言われていました。そうなれば攻められるのは恨みを買った帝国かキノノサト国であると」
そのためキノノサト国は軍事力を強化していったらしい。
この大陸で軍事大国と呼ばれているキノノサト国。魔王復活に備えての軍事力だったようだね。
「でも魔族の国を造っても、他国とは戦わないようにするよ。キノノサト国とは不可侵条約を結ぶつもりなんだ」
これ以上争いに巻き込まれたくないからね。妖精族とは友好関係を結びたいし、王国とは元々友好的だ。残るはノルキア帝国だけど、不可侵条約も友好関係も難しいかな。まあ、今回の戦いで疲弊している帝国が攻めてくる事はないだろうけど。
「リビティナ様、この里はどうなるんですか。ここは王国領です、新たな魔族の国に移住する事になるんでしょうか」
心配顔の眷属達に、安心するようにと説明する。
「いいや、みんなはここに居てもらって結構だよ。ここも魔族の国の領土になるんだ」
ハウランド伯爵が言うには既に国王と話し合っていて、友好の証しとして王国の一部、この眷属の里がある森と山の一帯を魔族領にすることが決まっているそうだ。
国境近くの森で、今まで何も利用していなかった場所だからね。譲り渡しても王国としては痛くもかゆくもないんだろう。
その土地を合わせて、ハウランド伯爵が納めているこの地方よりも少し広い土地に、元帝国の獣人と眷属の人達が住むことになる。
「魔族の国を嫌い、帝国に行きたいという獣人は帝国に送り届ける事になる。でも人気のあった帝国貴族のブクイット卿が実質的に治める土地だからと、魔族の国の国民になる獣人も多いらしい」
今まで帝国で貧しい生活をしてきているから、王国と友好関係にある魔族の国に期待している住民も居ると聞いている。
戦争の影響で避難していたレイン達も、住み慣れたエキソスの町に戻ってくると言っている。そんな人達のためにも、少しは頑張らないといけないね。
「その国の王様にリビティナが成るんでしょう。すごいじゃない。すると国の名前はリビティナ国かしら」
「そんなの恥ずかしすぎるよ、魔族の国でいいじゃないか」
ハウランド伯爵にも同じ事を言われたけど、王様になって自分の名前を国名にするなんて嫌だよ~。どこかの勇者のお話と同じじゃないか。
「それにね、僕は賢者のリビティナのままでいるんだ。魔王とは別人として存在する事になるのさ」
「なんでそんなややこしい事すんのよ」
「だってさ、王様になっちゃったらずっとお城で座ってないといけないんだよ。この里にも来れなくなるし、自由に動けなくなっちゃうじゃん」
そんなのは嫌だからね。引き籠るならお城よりもこの里の方がいいに決まっているよ。
「とは言え、国外の要人と会う必要があるでしょうな。その際はどうされますか」
ネイトスが国内運営や外交の事もあるからと心配するけど大丈夫さ。
「その時は魔王として演技しないといけないからね。仮面を外して翼を広げた形で人と会うようにするよ。賢者としては今まで通り仮面をつけローブ姿で現れるつもりさ」
魔王の名前は付けずに、魔族の王と名乗る。これで一人二役ができるだろう。
「では今まで通り、リビティナ様はこの里に居てくださると」
「そりゃそうだよ。眷属の君達と過ごすことがボクにとって一番だからね」
そう言うと里のみんなはホッとしたような顔をする。まあ少しの間は建国に関する行事があるから、ここを離れる事も多くなっちゃうけどね。
「と言う事で、みんなにも色々と協力してもらう事になるんだ。すまないけどよろしく頼むよ」
間もなく魔族の国の建国式典を大々的に行うそうだ。そのほとんどは王国の官僚達が準備してくれるけど、眷属の人達にも手伝ってもらう事になる。これから忙しくなるけどみんな快く引き受けてくれた。
なんだかややこしい事になっちゃったけど、ここに居るみんなとなら上手くやっていけるさ。
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【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
【設定集】を更新しています。
小説の参考になさってください。
タイトル
【設定集】転生ヴァンパイア様の引きこもりスローライフ。お暇なら国造りしませんか
・設定・地図(第6章 26話以降)
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