上 下
28 / 55

第28話『屋根裏の散歩者【勇者サイド】』

しおりを挟む
 やあ。ボクだ、シンだ。勇者だっ! ボクはいま、愚民どもの上に君臨している。 ここはクロノの部屋の上。屋根裏だ。

「マリア、ボクは屋根裏の散歩者だ。まるで優雅だっ!」

「いえいえ。シンさまは屋根裏の不審者です。完全に」

 この子はマリアというメスガキだ。 ボクが修行をつけてるメスガキの弟子だ。

「シンさま、今日もまた屋根裏でノゾキですか?」

「うん。クロノがわるさをしないか、監視しなきゃ」

「シンさま。ほんと、ヒマ人ですね」

 このメスガキはボクの弟子だ。 黒髪黒目で背が小さい。 たぶん処女。

「クロノさんの監視、ですか? なんのために」

「クロノはバカだ。きっと妹をいつかおそう」

「はあ。それとシンさまと、なんの関係が?」

「妹をおそった瞬間、天井をけやぶり、妹のピンチを救う」

 聖剣カリバーンでズバーンっと、ね!

「はあ。それで。どうなるんでしょう?」

「ボクに救われた妹にほれられて結婚。これが作戦だ」

「どうでしょう。うまくいきますかね。うまくいかないような」

「大丈夫。完ぺきなプランだから。大丈夫だ」

 マリアはばかだ。教養もない。 胸が小さい。それはいい。 まだボクの格にはふさわしくない。だから修行をつけているところだ。

 もちろん、すでにクロノよりは格が高い。フレイと違って非処女のアバズレではない。 アバズレでキズモノのフレイより素晴らしい。友達を悪くいうのはよくない。だけど、事実だ。

「マリア、キミの能力はなんだ? ボクに教えてくれ」

「シンさま。それ346回説明しました。ボケてますか」

「あー。おぼえてる。空気が読めない能力、だったっよね」

「全然ちがいます。それは完全にシンさまの能力ですね」

「はて? 意味不明だ」

「マリアの能力は、完全に気配を遮断する能力です!」

 ふーん。だ、そうだ。聞いたか、クロノ? このとおりだ。このメスガキは、あまりに無能。 ありとあらゆる気配を完全に遮断する無能。

 そんなの赤ちゃんにだってできる。はあ。あまりに恥ずかしすぎる。

「シンさまはバカにしてますけど凄い能力なんですよ?」

「どこが? だって、気配なんて誰でも消せるじゃん?」

「今、誰にも気づかれず屋根裏にいられるのは誰のおかげです?」

「ボクの力だ。この、勇者シンのっ!」

「ぶっぶー。ハズレです。マリアの能力のおかげですね。完全に」

 マリアは、ありと(略)完全に遮断するだけの無能だ。 だが、クロノ。キミにはそんな簡単なことができるか? 無理だろうな。キミは、平民だから。 クロノ、見たか? 笑われてるぞ? マリアに。 勇者シン、神に選ばれたボクの、弟子に。 こなまいきなメスガキに。

「やれやれ。クロノはバカだ」

「ですね。クロノさんはバカです」

 はい、そうです。 ボクがマリアを育てました。

「そういえば、クロトカゲさん、どうしてるんですか?」

「んっ? しらん。死んだんじゃない? 平民だし」

「わーっ! だめですよっ、シンさま? 恩人ですよっ?」

 クロトカゲっちはボクを逃してくれた。 そのついでにマリアも。まあ、ボクひとりでも脱獄できたけどね。なぜ助けたか?

 ボクにコビを売るためだ。平民はこれだから。やれやれ。勇者にコビを売り、コネを作ろうとする。 仕方のないことだ。 当然のことでもある。

 クはあまりに格も徳も高すぎる。 

「まあ。クロトカゲっちには今度お礼に胸でももんどくわ」

「シンさま。普通に殺されます。発想が完全におっさんです」

 ありえない。まるで意味がわからない。マリアは教養がないバカ弟子だ。少しずつ、教育しなければならない。

「わー。クロノさんと妹さんまたマクラ投げしてます」

「とほほ。また妹とマクラ投げ大会。クロノ、正気か?」

 クロノは毎日マクラ投げをしている。あまりに無邪気すぎる。マリアとどっちが勝つか賭けをしてる。

 マリアに1点リードされている。くやしい。誰のせいだろうか? クロノのせいだ。 クロノが妹に負けるのが悪い。 

「妹さん似てませんね。なんって子なんですか?」

「うーん。忘れた。クロノの妹だ。妹でいいんじゃない?」

「どうでしょうか。たぶん。よくないと思いますね。だめですね」

 はて?

「おやまあ。兄妹なかよくベッドに入りましたよ?」

「はあ。すやすやねてらぁ。まるでのんびり屋だ」

 のんきにペアのナイトキャップなんて被ってる。まぬけな顔してベッドでねてらぁ。 勇者のボクはこんなに働いているのに。 ボクはマリアにクロノの愚痴をこぼした。 3時間くらい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。 ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。 ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。 この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。 一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。 女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。 あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね? あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ! あいつの管理を変えないと世界が滅びる! ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ! ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。 念のためR15にしてます。 カクヨムにも先行投稿中

一般職アクセサリーショップが万能すぎるせいで、貴族のお嬢様が嫁いできた!〜勇者や賢者なんていりません。アクセサリーを一つ下さい〜

茄子の皮
ファンタジー
10歳の男の子エルジュは、天職の儀式で一般職【アクセサリーショップ】を授かる。街のダンジョンで稼ぐ冒険者の父カイルの助けになるべく、スキルアップを目指すが、街全体を巻き込む事態に? エルジュが天職【アクセサリーショップ】で進む冒険物語。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

トカゲ(本当は神竜)を召喚した聖獣使い、竜の背中で開拓ライフ~無能と言われ追放されたので、空の上に建国します~

水都 蓮(みなとれん)
ファンタジー
 本作品の書籍版の四巻と水月とーこ先生によるコミックスの一巻が6/19(水)に発売となります!!  それにともない、現在公開中のエピソードも非公開となります。  貧乏貴族家の長男レヴィンは《聖獣使い》である。  しかし、儀式でトカゲの卵を召喚したことから、レヴィンは国王の怒りを買い、執拗な暴力の末に国外に追放されてしまうのであった。  おまけに幼馴染みのアリアと公爵家長子アーガスの婚姻が発表されたことで、レヴィンは全てを失ってしまうのであった。  国を追われ森を彷徨うレヴィンであったが、そこで自分が授かったトカゲがただのトカゲでなく、伝説の神竜族の姫であることを知る。  エルフィと名付けられた神竜の子は、あっという間に成長し、レヴィンを巨大な竜の眠る遺跡へと導いた。  その竜は背中に都市を乗せた、空飛ぶ竜大陸とも言うべき存在であった。  エルフィは、レヴィンに都市を復興させて一緒に住もうと提案する。  幼馴染みも目的も故郷も失ったレヴィンはそれを了承し、竜の背中に移住することを決意した。  そんな未知の大陸での開拓を手伝うのは、レヴィンが契約した《聖獣》、そして、ブラック国家やギルドに使い潰されたり、追放されたりしたチート持ちであった。  レヴィンは彼らに衣食住を与えたり、スキルのデメリットを解決するための聖獣をパートナーに付けたりしながら、竜大陸への移住プランを提案していく。  やがて、レヴィンが空中に築いた国家は手が付けられないほどに繁栄し、周辺国家の注目を集めていく。  一方、仲間達は、レヴィンに人生を変えられたことから、何故か彼をママと崇められるようになるのであった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

スキル【特許権】で高位魔法や便利魔法を独占! ~俺の考案した魔法を使いたいなら、特許使用料をステータスポイントでお支払いください~

木塚麻弥
ファンタジー
とある高校のクラス全員が異世界の神によって召喚された。 クラスメイト達が神から【剣技(極)】や【高速魔力回復】といった固有スキルを受け取る中、九条 祐真に与えられたスキルは【特許権】。スキルを与えた神ですら内容をよく理解していないモノだった。 「やっぱり、ユーマは連れていけない」 「俺たちが魔王を倒してくるのを待ってて」 「このお城なら安全だって神様も言ってる」 オタクな祐真は、異世界での無双に憧れていたのだが……。 彼はただひとり、召喚された古城に取り残されてしまう。 それを少し不憫に思った神は、祐真に追加のスキルを与えた。 【ガイドライン】という、今はほとんど使われないスキル。 しかし【特許権】と【ガイドライン】の組み合わせにより、祐真はこの世界で無双するための力を得た。 「静寂破りて雷鳴響く、開闢より幾星霜、其の天楼に雷を蓄積せし巍然たる大精霊よ。我の敵を塵芥のひとつも残さず殲滅せよ、雷哮──って言うのが、最上級雷魔法の詠唱だよ」 中二病を拗らせていた祐真には、この世界で有効な魔法の詠唱を考案する知識があった。 「……すまん、詠唱のメモをもらって良い?」 「はいコレ、どーぞ。それから初めにも言ったけど、この詠唱で魔法を発動させて魔物を倒すとレベルアップの時にステータスポイントを5%もらうからね」 「たった5%だろ? 全然いいよ。ありがとな、ユーマ!」 たった5%。されど5%。 祐真は自ら魔物を倒さずとも、勝手に強くなるためのステータスポイントが手に入り続ける。 彼がこの異世界で無双するようになるまで、さほど時間はかからない。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

底辺冒険者だけど魔法を極めてみることにした ~無能スキルから神スキルに進化した【魔法創造】と【アイテム作成】で無双する~

蒼乃白兎
ファンタジー
 冒険者のロアはみんなから『無能』と有名な底辺冒険者である。  所持スキルは【アイテム作成】のみ。  能力はレベルと引き換えにアイテムを作成する、というものだった。   ロアはこのスキルのせいで、他の人に比べてレベルが上がった時の恩恵が雀の涙ほどしかない。  それこそロアが『無能』とバカにされている大きな理由だった。  しかし、ロアは少しでも自分の実力を上げようと【アイテム作成】の能力を使うことなくレベルを上げ続けた。  スライムやゴブリンなどの低級モンスターを狩り続けて1年。  50レベルに到達したロアにとんでもない変化が訪れた。 『【アイテム作成】が【魔法創造】に進化しました』  手に入れた【魔法創造】はレベルと引き換えに魔法を創造できるというもの。  つまりレベルを消費すればするほど、レベル上げの効率はドンドン上がる。  更に【アイテム作成】の能力も利用することで、強力な装備でステータスを補ったり、価値の高いアイテムを作成できたり、超便利!  【アイテム作成】と【魔法創造】──二つのスキルが相乗効果を生み、ロアは驚異的な成長を遂げていく。  ※2/27日間総合1位 3/3週間総合1位

処理中です...