上 下
9 / 55

第9話『どうしてこうなった【勇者サイド】』

しおりを挟む
 ここはSランクダンジョンの一階層。 神に選ばれたボクの記念すべきデビュー戦だ。 だというのに。

「どうしてこうなった」

 わかりきったことだ。 ぜんぶクロノがわるい。 地獄の底で反省しているか? クロノ。

「コレ、ピンチじゃん。シン、うしろの魔獣、きって!」

「聖剣カリバーン! シュパパパパッ!」

 目にもとまらぬ高速の連撃。 シュパパパパと切られて魔獣はしんだ。 みたかクロノ、これがボクの聖剣だ。 神から授かった聖剣カリバーンだ。  わるい。クロノ。 聖剣のキレ味はキミが一番よく知ってるよね。

「シン、フレイをサポートなさい。たちどまっているヒマはありません」

「サポート、ボクが? フレイがサポートだろ? ボクは勇者だ」

 フレイの悲鳴が聞こえた。 ほら、言わんこっちゃない。 セーラがいきなり話しかけたせいで集中がとぎれた。

「血、切られた、顔が、姫なのにっ! マジ、超ありえないっ!」

「はわわわわわわわ。グロい、まるでホラーだ」

 フレイの顔がエグれてグロい。痛そうだ。 非処女だからってこんな仕打ち、あんまりだ。 魔獣には良心も常識もないのだろうか?

「三連詠唱、エクスヒール、セイクリッドオーラ、マイティーガード」

「ナイスセーラ! いまのサポート、まじ、たすかったし!」

  魔獣がとんだりはねたりまるでサーカスだ。 ボクの聖剣がまったく当たらない。卑怯だ。 

「セーラ、フレイ、魔獣の動きを完全に停止させろ。ボクが倒す」

「不可能です」

「はあっ? 完全に停止?! 無理にきまってんじゃん。あーた、正気?!」

 なんてことだ。ふたりとも無能すぎる。 格が高い時点でクロノよりは優れているが。 それでも魔獣の動きを完全に停止できないとは。 何しにダンジョンにきているのだろうか。ばかだな。

「もういい! ボクがいく! 聖剣カリバーン! ズヴァアンッ!」

 真っ二つだ。魔獣は死んだ。 見たか? クロノ。 これが、ボクの力だ。

「セイクリッドプロテクション」

 魔獣のツメが防御結界にはばまれる。 魔獣がボクをひっかこうとしていた。 魔獣の接近をゆるしてしまった。 セーラとフレイが魔獣を停止させることができないから。

「これ、……マジ、ムリ。シン、撤退するよ」

「シン、フレイに従いなさい」

「うおぉぉぉおおおおおおおおおっ!!!!!」

 ボクはダンジョンを駆け抜けた。風になった。 いかに恐ろしい魔獣相手にもボクは引かない。 なぜならボクの背中を見守る仲間たちがいるから。 Sランクの大聖女と、Sランクの姫騎士が。 クロノ、地獄で友達はできたか? ボクはSランクダンジョンで戦っている。 格の高い仲間とともに。勇者として。

「シン!? あた、なにぼっとしてんの?! 前っ! 攻撃当たるしっ!!」

「へっ? ぎゃふんっ!」

 トロールみたいなやつにハンマーで頭を殴られた。くらくらする。どうしてこうなった? フレイとセーラが無能だからだ。ふたりが魔獣を完全に停止させることができないのが原因だ。

 冒険者の仕事を花嫁修業とでも勘違いしているのだろうか? いや、仲間を悪くいうのはよくないことだ。 犯人さがしはよくない、クロノ。わかるか?

 キミはボクのように反省することができるだろうか。

 ボクはあらためて自問自答した。
 どうしてこうなった?
 クロノが死んだから。
 ぜんぶクロノがわるいからだ。

 ボクは意識を失った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。 ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。 ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。 この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。 一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。 女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。 あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね? あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ! あいつの管理を変えないと世界が滅びる! ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ! ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。 念のためR15にしてます。 カクヨムにも先行投稿中

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

トカゲ(本当は神竜)を召喚した聖獣使い、竜の背中で開拓ライフ~無能と言われ追放されたので、空の上に建国します~

水都 蓮(みなとれん)
ファンタジー
 本作品の書籍版の四巻と水月とーこ先生によるコミックスの一巻が6/19(水)に発売となります!!  それにともない、現在公開中のエピソードも非公開となります。  貧乏貴族家の長男レヴィンは《聖獣使い》である。  しかし、儀式でトカゲの卵を召喚したことから、レヴィンは国王の怒りを買い、執拗な暴力の末に国外に追放されてしまうのであった。  おまけに幼馴染みのアリアと公爵家長子アーガスの婚姻が発表されたことで、レヴィンは全てを失ってしまうのであった。  国を追われ森を彷徨うレヴィンであったが、そこで自分が授かったトカゲがただのトカゲでなく、伝説の神竜族の姫であることを知る。  エルフィと名付けられた神竜の子は、あっという間に成長し、レヴィンを巨大な竜の眠る遺跡へと導いた。  その竜は背中に都市を乗せた、空飛ぶ竜大陸とも言うべき存在であった。  エルフィは、レヴィンに都市を復興させて一緒に住もうと提案する。  幼馴染みも目的も故郷も失ったレヴィンはそれを了承し、竜の背中に移住することを決意した。  そんな未知の大陸での開拓を手伝うのは、レヴィンが契約した《聖獣》、そして、ブラック国家やギルドに使い潰されたり、追放されたりしたチート持ちであった。  レヴィンは彼らに衣食住を与えたり、スキルのデメリットを解決するための聖獣をパートナーに付けたりしながら、竜大陸への移住プランを提案していく。  やがて、レヴィンが空中に築いた国家は手が付けられないほどに繁栄し、周辺国家の注目を集めていく。  一方、仲間達は、レヴィンに人生を変えられたことから、何故か彼をママと崇められるようになるのであった。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

一般職アクセサリーショップが万能すぎるせいで、貴族のお嬢様が嫁いできた!〜勇者や賢者なんていりません。アクセサリーを一つ下さい〜

茄子の皮
ファンタジー
10歳の男の子エルジュは、天職の儀式で一般職【アクセサリーショップ】を授かる。街のダンジョンで稼ぐ冒険者の父カイルの助けになるべく、スキルアップを目指すが、街全体を巻き込む事態に? エルジュが天職【アクセサリーショップ】で進む冒険物語。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

処理中です...