電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~

にゃーにゃ

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第2話『死にかけて覚醒』

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(……ヤバいヤバいヤバい! このままじゃ頭から落ちて死ぬぞ!)

 雷術を自分に使ってみるか。ぶっつけ本番だが、やるしかない。

(いちかばちかだ――雷術!)

 うおッ! これは、……痺れる! 当然のことだけどやっぱ痛いな! 俺の体の中で電気の波がが荒れ狂う。

(落ち着け、雷術は電気を支配するスキルだ。ならば、俺のなかで荒れ狂うこの電気の波も制御することができるはずだ。雷術師の俺なら、それが可能だ!)

 集中しろ。俺は極限まで意識をとぎすます。電気の流れを制御するイメージだ。荒れ狂う波が静まるイメージ。

(やったぜ、ヘビのようにのたうちまわる電気を止めることができた)

 この出血、ハンパない。まずは止血だ。俺は雷術で損傷した部分を焼き切る。痛いが、これで出血は止まった!

 次は止まりかけている心臓に雷術だ。心臓が止まったらいっかんの終わりだからな。

(――成功! 心臓の鼓動が強くなった)

 あとはのどにつまった血を吐き出して、深呼吸っと! か、地面が見えてきたぞ。地面まであと、20メートルくらいか。空中で体勢を変える。できるか? るしかねぇ!

「うおおおおおおおおおっ!!!」

 両ひざにズシリと強い衝撃。

「ギリギリだったが、なんとかなったぜ」

 あやうく死ぬとこだったがな。

「といってもまだ助かったわけではない。安心するにはまだ早い」

 問題はここからどうやってここから帰るかだ。ここは奈落と呼ばれる大穴の底だ。ギルドが調査のために派遣した冒険者で戻ってこられた者はいない。ただ深いだけのアナっていうことはなさそうだ。

「あたり一面、まっくら闇だ。やっかいだな。このフロアの壁はまわりの光を吸収するみたいだ。まずは、奈落の構造を把握しないとだ。――雷術〈聴覚強化〉」

 雷術によって聴覚を強化、指をパチンと弾く。音の反響で、奈落の構造を把握するためだ。

「ふむふむなるほど。ここがダンジョンの真の最終階層だったってわけか。だからエンシェントドラゴンを倒しても帰還用の転移門があらわれなかったということか」

 魔獣ヘルズバッドのソナーのマネだが何とかなるものだ。おおまかな地形を把握できた。ダンジョンの一部ということは、ボスフロアがあるはず。そこから地上にでることができるはずだ。

「その前にまずは、目の前の課題を片付けないとだな!」

 球状の魔獣が俺に近づいている。ボールスライムとよく似た形状だが、比べ物にならないくらい、速い。

「やるっきゃねぇ! 雷術〈身体強化〉」

 雷術で強化した脚で魔獣を蹴りつける。ドチャッという音とともに爆散。当てればなんとかいけそうだ。

「ボールスライムと似ている魔獣だが、凶悪さはダンチガイだな。暗闇の戦闘はなれていないけど、生きのびるためには、やるっきゃない!」

 あちらこちらから襲いくる魔獣をかたっぱしから蹴り殺す。数十匹は倒したはずだ。

「ふぅ。聴覚で確認できる範囲の魔獣は狩り尽くした。今日は寝るか」
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