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第33話『星穿つ竜星』
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「いったい……いつまで、遊んでる……おまえは……城をも落とせる力を持つ……相手はBランク…………ええぃ……調《ブリ》ィ……、えっ」
声を発した男の右肩が爆ぜた。
俺は適当な小石を投げただけだ。
だが、それで十分。
虫の鳴き声はおさまった。
親子水入らずのジャマをするな。
焦るな、礼儀正しく順番を待て。
おまえは、ちゃんと殺してやるから。
そこで、おとなしく待っていろ。
「あたい……やっぱり、パパに、全然勝てないや」
「諦めるのはまだ早いぞ」
ルナがふるふると小さく首を振るう。
「ムリ……だって、パパ……あたいに……一度も攻撃してない……受けてるだけ」
俺は頭をポリポリと掻く。
「そりゃ、そうだろ。父親が、自分の娘に手を上げたりするもんかよ」
「あははっ……そっか……そうだよね、……パパっ!」
「そうだ。そんなことはなぁ、当たり前のことなんだぜ!」
ルナは連撃を止める。
拳圧によって巻き起こっていた暴風は止まる。
そして、闇夜に静寂が訪れる。
ルナは目をつぶり、深く息を吸う。
体を最善の状態に整えている。
「パパ……次が、……正真、正銘、全身、全霊、究極、本気、最後の一撃っ!」
「そうか、ドンとこいッ!」
「うん、それじゃ――いくよっ! 星を穿つ竜星!!!」
太陽のような黄金の輝きがより一層激しくなる。
黄金の輝きは徐々に光を増し、やがて穏やかな白になる。
今のオーラは白金《プラチナ》、更に体内に収束《しゅうれん》。
ルナの背中の翼の色も白金色に変わる。
まるで……その姿は。
「はは……すげぇ。ルナ、まるで天使だ」
ルナが白金色のオーラに包まれる。
そして更にそれを覆うように、七色のオーラが包む。
幾層の色が重なりあいオーロラのように光り輝く。
強化付与魔術《エンチャント・パワー》、属性付与魔術《エンチャント・エレメント》でもない。
これはマナそのもの。
魔力に変換される前の、純粋なマナ。
「はは……っキレイじゃんか。これで、最後と思うともったいない気すらするぜ」
ルナの背中の左右の翼は、水平方向に最大展開。
トッ――、ルナはつま先で軽く地面を蹴る。
超低空、超高速、直線的飛行。
そういえば一番初めに使ったのがこの技だったな。
規模が違いすぎるけど。
直線状には、俺が立ちふさがっている。
体の重心を下げる。
靴底を地面にがっしりと構える。
相撲の四股の構えがこんな感じだったかな。
左右の腕はルナを受け止めるために前へ。
前方から超エネルギー体。
流れ星を受け止めるようなものだ。
そんなこと……できるか?
「できるに決まってるだろぅおおおおッ!!!」
――超弩級の衝撃。
足もとの大地がえぐれる。大気が爆発する。
まるで朝が訪れたかのような激しい、光。
「掴まえたぜ」
ルナの両手、俺の両手ががっちりかみ合う。
あとは、ただの力比べ。意地の張り合い。
俺は、まだ一歩も後退していない。
だが、ルナの勢いも止められていない。
白金色に輝く両翼がルナに推進力を与えているのだろう。
靴底から根が生えているイメージを、想像しろ。
一歩も譲らない。後退なんて許さない。
「ぬらぁあああああああああああああああっ!!!!!」
押し戻す。左足を一歩、前へ。
押し戻せ。右足を一歩、前へ。
一歩、一歩、前進――、前へ。
七色の光をまとったルナがゆっくり押し返されていく。
まとっていた七色の光が消えてゆく。
黄金の光もやがて消えた。
翼も角も消え、元のルナの姿に戻った。
力を失い、倒れかけた体を両腕で強く抱きしめる。
「はは……っ……やっぱり……パパには勝てなかった」
「当たり前だ。おまえの親なんだからな」
「うん……、そうだったね」
ルナは安心し、俺の胸で眠りについた。
こうやって寝顔を見れば、本当にただの子供だ。
「ルナの本当の親の仇は、俺がきっちり取る」
俺の胸で眠っているルナをアルテに預ける。
自壊式《オーバー・クロック》も解除。
アルテの胸でルナが眠っているのを確認する。
俺の仕事は、子供の情操教育に良くない。
「ここから先は、――大人の時間だ」
声を発した男の右肩が爆ぜた。
俺は適当な小石を投げただけだ。
だが、それで十分。
虫の鳴き声はおさまった。
親子水入らずのジャマをするな。
焦るな、礼儀正しく順番を待て。
おまえは、ちゃんと殺してやるから。
そこで、おとなしく待っていろ。
「あたい……やっぱり、パパに、全然勝てないや」
「諦めるのはまだ早いぞ」
ルナがふるふると小さく首を振るう。
「ムリ……だって、パパ……あたいに……一度も攻撃してない……受けてるだけ」
俺は頭をポリポリと掻く。
「そりゃ、そうだろ。父親が、自分の娘に手を上げたりするもんかよ」
「あははっ……そっか……そうだよね、……パパっ!」
「そうだ。そんなことはなぁ、当たり前のことなんだぜ!」
ルナは連撃を止める。
拳圧によって巻き起こっていた暴風は止まる。
そして、闇夜に静寂が訪れる。
ルナは目をつぶり、深く息を吸う。
体を最善の状態に整えている。
「パパ……次が、……正真、正銘、全身、全霊、究極、本気、最後の一撃っ!」
「そうか、ドンとこいッ!」
「うん、それじゃ――いくよっ! 星を穿つ竜星!!!」
太陽のような黄金の輝きがより一層激しくなる。
黄金の輝きは徐々に光を増し、やがて穏やかな白になる。
今のオーラは白金《プラチナ》、更に体内に収束《しゅうれん》。
ルナの背中の翼の色も白金色に変わる。
まるで……その姿は。
「はは……すげぇ。ルナ、まるで天使だ」
ルナが白金色のオーラに包まれる。
そして更にそれを覆うように、七色のオーラが包む。
幾層の色が重なりあいオーロラのように光り輝く。
強化付与魔術《エンチャント・パワー》、属性付与魔術《エンチャント・エレメント》でもない。
これはマナそのもの。
魔力に変換される前の、純粋なマナ。
「はは……っキレイじゃんか。これで、最後と思うともったいない気すらするぜ」
ルナの背中の左右の翼は、水平方向に最大展開。
トッ――、ルナはつま先で軽く地面を蹴る。
超低空、超高速、直線的飛行。
そういえば一番初めに使ったのがこの技だったな。
規模が違いすぎるけど。
直線状には、俺が立ちふさがっている。
体の重心を下げる。
靴底を地面にがっしりと構える。
相撲の四股の構えがこんな感じだったかな。
左右の腕はルナを受け止めるために前へ。
前方から超エネルギー体。
流れ星を受け止めるようなものだ。
そんなこと……できるか?
「できるに決まってるだろぅおおおおッ!!!」
――超弩級の衝撃。
足もとの大地がえぐれる。大気が爆発する。
まるで朝が訪れたかのような激しい、光。
「掴まえたぜ」
ルナの両手、俺の両手ががっちりかみ合う。
あとは、ただの力比べ。意地の張り合い。
俺は、まだ一歩も後退していない。
だが、ルナの勢いも止められていない。
白金色に輝く両翼がルナに推進力を与えているのだろう。
靴底から根が生えているイメージを、想像しろ。
一歩も譲らない。後退なんて許さない。
「ぬらぁあああああああああああああああっ!!!!!」
押し戻す。左足を一歩、前へ。
押し戻せ。右足を一歩、前へ。
一歩、一歩、前進――、前へ。
七色の光をまとったルナがゆっくり押し返されていく。
まとっていた七色の光が消えてゆく。
黄金の光もやがて消えた。
翼も角も消え、元のルナの姿に戻った。
力を失い、倒れかけた体を両腕で強く抱きしめる。
「はは……っ……やっぱり……パパには勝てなかった」
「当たり前だ。おまえの親なんだからな」
「うん……、そうだったね」
ルナは安心し、俺の胸で眠りについた。
こうやって寝顔を見れば、本当にただの子供だ。
「ルナの本当の親の仇は、俺がきっちり取る」
俺の胸で眠っているルナをアルテに預ける。
自壊式《オーバー・クロック》も解除。
アルテの胸でルナが眠っているのを確認する。
俺の仕事は、子供の情操教育に良くない。
「ここから先は、――大人の時間だ」
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