ぼくのうた きみのこえ～発情期を抑えるために番になることは許されますか？～

33-5

「伊織って……本当にすごいな」

「何？　一樹まで僕に対して嫌味言うの？」

「ちげーよ」

「あっそ。まあ、一樹になんと言われようと、これぐらいはしていかないと、この世界でやっていけないからね。僕はデビューするためなら、何でもするよ」

「……。ほんと俺、お前のそういうところ尊敬するわ」

「何？　また嫌味？」

「いや、助かったってことだよ。もし、あのままアイツに殴りかかってたら、今回のバックダンサーの話はなかったことにされてただろうし」

「まあ、相手もそれを待っていただろうからね。一樹が待てのできる聞き分けの良い子で、僕も助かったよ」

　伊織が不敵な笑みを浮かべると、一樹は言われて初めて、自分の起こそうとしていた行動が男に利用されそうになっていたことに気が付いた。

「もっと、俺も行動には気を付けないとな」

「そうそう。だいたい僕たちは、なんとしても今回のコンサートで結果を出さないといけないんだから」

「ああ、そうだな」

「一樹、本当にわかってる？　今回の話がどれだけ僕たちにチャンスなのかって」