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「聖さん、これって……」

『今からね、その歌を届けたい人に会うんだ。でも正直、一人で会うのが怖いんだ』

「聖さん……」

『大人なのにね。僕はその歌詞と……人と向かいあうのが怖いんだ』

「……」

『一緒に僕と彼の話、聞いてくれる?』

「僕が聞いていて大丈夫なんですか?」

『璃玖君ならね。むしろ、知って欲しいはずだから』

「それって……」

「聖さん? あれ、聖さん?」

 電話は繋がったままだが、急に聖の反応がなくなってしまった。

 スマホからは微かに布が擦れるような音と、遠くで人の声が聞こえた。

 おそらく電話が繋がったままのスマホを聖はポケットなどにしまったのだろうと璃玖は思い、仕方なく電話を終わらせようと通話終了ボタンを押そうとした。

(……)

 だが、先程の聖の声を思い出し、通話終了ボタンを押そうとした指をゆっくりと離した。

(聖さんが会う人って……やっぱり相良先生なのかな。そして、僕に話を聞かせるってことは……僕に曲を作らせることに関係しているのかも……)

 たった半日だったが、一緒にいたことで、聖の突拍子のない行動や言動には必ず理由があると璃玖は知った。

 璃玖はスマホを操作して音声をスピーカーにすると、ピアノの譜面台に、歌詞が書かれた紙と一緒に立てかけた。

 そして、ピアノに向かうよう椅子に腰掛け、誰のものかわからない書き途中の歌詞を見つめ、会話が始まるの待つことにした。
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