生き残りゲーム

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Episode 9 / 本当の悲劇のハジマリ

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生存者11人 脱落者4人

side Mirai

次の日の朝。また、誰かの悲鳴で目覚める……… なんてことは無かった。
あの後、悠理はふらふらと、あの紅い脱落者部屋のある上の階へと続く階段をあがった。
海斗くんと桜葉渚を除いた私たちは動くことも、声をかけることも出来ず。Jから明日の集合時間を告げられるまでその場で固まっていた。そのまま、会話もなく部屋に戻った。
途中、遠山葉月と近藤和輝とすれ違った。当初の明るさとは別人のように暗くなってしまった遠山さんを、必死に慰めているようだった。実羽に声をかけるか悩んだが、部屋の前を通った時やけに静かだったので辞めておいた。

未来「…で、今何時よ」

時計を見ると4時半。
未来「は?…どうりで眠いと思った。窓から見える空も暗い。」

…窓は馬鹿みたいに頑丈だった。
皆で力を合わせてもびくともしなかった。
外に出られないのに窓から空を見せるなんて、悪趣味だと思う。
そんなことを考えながら私はまた眠りについていた。

目を覚ましたのはノックの音。

輝琉「未来、起きてる?」

部屋を訪ねてきたのは輝琉だった。
時計に目をやるともう8時半。すっかり外も明るかった。

私はインターホンで輝琉本人であることを確認し、ドアを開いた。

輝琉「おはよう。」
未来「…おはよう。どうしたの?」
輝琉「実は、昨日の…“人殺し”がわかったんだけど。優徒の次に未来に聞いておいて欲しくて。」
未来「うん…」
輝琉「桜葉渚、だった。」
未来「…そっか。なんとなくそうかなって思ってた。でもなんで私に?」
輝琉「冷静…だから?山下さんはきっと取り乱すだろうから言いづらいし、真澄さんたちは何するか分からないし、遠山さんたちもそれどころじゃないだろうから…。」
未来「そっか、確かにそうかも。」
輝琉「…とりあえず皆を集めよう」

私と輝琉は手分けして皆に声をかけ、9時、全員が食堂に集まった。正直実羽は来てくれるか不安だったのだが、9時ギリギリに静かに来てくれた。

優徒「それで…本題だが」
唯葉「“人殺し”がわかったんでしょ?早く教えて。」
輝琉「えっと…その」
未来「いいよ私が言う。“人殺し”は桜葉渚。」
海斗「え、」
渚「……」
海斗「本当に、渚なのか?」
照「黙ってちゃわかんないよ、ってこれ昨日も同じようなこと言ったっけ」
聖汰「お前が、悠理ちゃんを……」

いや聖汰、それは違うと思う。言わないけど。

葉月「で、でも。こいつはなりたくて“人殺し”になったわけじゃないんだろ…」
優徒「ああ、だが。なぜあの時名乗り出なかった。結果、仲野悠理を死に追いやったのはお前だぞ、桜葉」
海斗「お前なら………お前なら名乗り出てくれるって。俺も悠理も信じてた。……がっかりだよ。」
渚「……Jに」

ここに来て初めて桜葉渚が口を開いた。

渚「Jに、ポイントを貯めろって言われて。もしも、悠理のポイントが0になった時、ポイントが沢山あれば助けられるって。……そう言われて乗ってしまったんや。でも優徒くんの言う通り結果俺が悠理を……。俺、最低や……」

暫く沈黙が続いたが、かき消すようにあのチャイムが鳴り響いた。

J「チャオ~♡ちょーーっとはやいけど、みんなバッチリ起きてるみたいだし、ホールに集合してちょ!」

みんな固まっていた。…が、輝琉が口を開いた。

輝琉「……行きましょう」

誰からともなく立ち上がり、ふらふらとホールへ向かった。

J「さ~~て、みんな集合したわね!第3GAMEのルールを説明するよ! さて、ここまできてもまだまだシンプル!何故ならJさんの座右の銘はシンプル is ベストだからね!」
優徒「…いいから。ルールを言え」
J「やだぁ優徒きゅんったら冷たい(泣) まあいいや、ルールは簡単!……この中から誰か1人、死ぬ人を選んでください。」

………は?

J「いや~~ちょっとね、人数おおいな~~て思って、調整よ調整。色々あって“予定より”人数多くてさぁ。…そこにナイフ、置いてるから。誰か一人選んでパパっと殺しちゃって!一応GAMEっぽくする為に祭壇用意してるから、生贄風にそこに捧げたらゲームクリアだよん!」
聖汰「調整って……」
和輝「ふざけてんのか!人の命をなんだと!!!」
J「いやだって~、こんなに人数いたらこの後のゲームにも支障出るし~食糧問題とかもあるし~~みんな的にも困るんだって~!!別に誰でもいいから我こそは!って子がいたら立候補制でもいいのよ!自らを犠牲にする美しい友情……反吐が出ちゃうぐらい大好きだから!! …じゃあ、3時間後の13時までにクリアしてね! アディオス~♡」

和輝「くそ、言い逃げかよ…!」
葉月「和輝……」
優徒「…いつもの事だ。仕方ない、それより今は時間が無いから話を進めたい。いいか?」

皆頷いた。

海斗「俺は正直、渚が憎い……けど渚が悪いわけじゃないって言うのもわかってて、なのに渚を憎んでる自分が一番嫌だ。それに、悠理が居ないなら……」
渚「待って!…海斗先輩。俺が悪いんや…。俺を殺してくれ。俺は大切な人を死なせてしまったんや。」
葉月「……アタシでいいよ。死ぬのは怖いけど、アタシがあの時“死”を引いてたら悠理っちは死んでなかった。…その事実に耐えれる気がしないの。だから、」
和輝「ふざけんな!葉月が死ぬってなら代わりに俺が死ぬ!!!…お前はすっげぇ良い奴なんだからさ、生きろよ、」
葉月「余計なお世話よ… 本当は、本当は死にたくない。けど… 悠理っちへのこの想いが重すぎて。このまま生きていけるのかが不安で。」
輝琉「遠山さん……」
唯葉「ええ、なんかそんな感じ? 唯葉は普通に無理だよ、志願者の中から決めようよ」

それぞれが自分の意思を伝えあっている中、突然実羽が笑いだした。

実羽「はは、ははははは」
渚「池本……さん?」
実羽「あはははなはは」

頭のネジが外れたように笑い続ける実羽。目の焦点が合わず、幼い頃から知っている彼女が全くの他人に見えた。
そして実羽は走り出した。その先には

優徒「ナイフ……!!皆離れろ!!」
海斗「っ、走れ!入口の方へ!」

皆一目散に入口へ向かって走り出した。
が、意外なことに彼女は追いかけては来なかった。彼女が向かった先は、なんと祭壇の上だった。

聖汰「おい、何するつもりだ!」
実羽「あはははは!!! あのね!実羽ね!!!」
照「あーあ、完全にネジ外れちゃってるね~あれ」
実羽「えへへへへ……」
輝琉「…私が話してくる」
優徒「いや、俺が行く。輝琉や皆はここから動かないでくれ。」

そう言って青葉優徒は彼女に近寄ろうとしたが 

実羽「来ないで!! 来るなら刺すから……」

いくら少女とはいえ大ぶりの刃物を持った人間に素手の人間が立ち向かえるわけが無い。

渚「降りてこい!池本さん!」
実羽「…実羽ね、疲れちゃった。タカラ探しで大好きな理世ちゃんが死んで。でも仕方ない、こんなゲームに巻き込まれたのが悪い、実羽は悪くないって、偶然だってそう思ってた!!……なのに、“人殺し投票”で、桜葉渚が“人殺し”だって知って。つまりさそれって、私たちズルしてたわけじゃん。私たちが理世ちゃんを殺したんだよ!!!」
輝琉「それはちが」 実羽「それに!」
実羽「それに。私が“死”を引いてたら悠理ちゃんは死ななかった!!……私は2人も殺したの。そう、殺しタ……コロシタ、コロシタノ、アハハハハハ。ワタシハ、ヒトゴロシ………」
未来「やめてっ!!」

気付けば叫んでいた。実羽は自分の腹部に思いっきりナイフを突き刺したのだ。

実羽「これ、で、生贄は私で……済むでしょ。でも……できるなら……桜葉……渚…も…………わたしは…ずっと……ゆるさない………りぜちゃん……を………」

そこまで言って、彼女は息絶えた。

未来「実羽……そんなに思い詰めてたなんて………気付けなくて………ごめんね……」
渚「……俺の事も殺してくれ。悠理を殺したんも、池本さんをここまで追い込んだんも俺や。俺も、」

「その必要は無いよ。」

見知った声が後ろから響いた。

優徒「………まさか」
海斗「悠理………?!」
悠理「やっほー!!ただいまっ!☆」
渚「ゆう……り……なんで……」
悠理「ん~~~、話せば長くなるんだよねぇ」
海斗「………おかえり」
悠理「ただいま。…心配かけてごめんね」
海斗「本当に……無事でよかった……バカ……」
悠理「……ということで。私は生きてるしこの通り傷もなくピンピンしてるので、渚ちゃんを殺す必要はないよ!」
輝琉「……とにかく、これで第3GAMEの条件も満たされたわけですね……」
J「は~~い!!クリア~~!! と言いたいところなんだけどさ~!!よく考えてみて! “誰かが誰かを殺して”はないんだよねー……てことで、残念だけど第3GAMEは続行です!」
聖汰「……どう、する……」
唯葉「もうこの際、ルーレットとかでぱぱっと決めちゃおうよ」
照「やむを得ないね」

全員が納得した訳ではなかったが、他に方法がある訳でもなくて。私たちはそうすることにした。
そして、矢印の先は_____

聖汰「はは。俺は本当に運が悪いなぁ。」
未来「聖………汰………」
聖汰「俺さ、どうせ死ぬなら好きな子に殺されたいんだけど、歪んでるかな?」
未来「……バカ。」

私、山本未来は生まれて16年と3ヶ月と5日。初めて人を殺した。出会ったばかりだったけど、確かに大切な人だった。そんな人を、私はこの手で殺した。突き刺したナイフが肌を裂いていく感覚が手から消えない。

J「第3GAMEクリア~~!!」

メリーゴーランドみたいにぐるぐる回る頭の中で、もうすっかりと聞き慣れてしまった甲高い声と鬱陶しいピエロの顔がぐるぐると頭中を巡った。……頭が痛い。吐き気がする。何も考えたくない。そのまま私はその場に倒れた。
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