LAND

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Chapter.2

いつも通り

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相変わらず退屈な授業をいつも通り受けて、いつも通りの代わり映えのない放課後を迎える。

絆月「それでさー、今日は茶道部に助っ人頼まれたんだよ。」
晴「そうなんだ」
絆月「いやいや、茶道部に助っ人いる!?って突っ込めよ!!」
晴「…確かに。」
絆月「…晴、今日体調悪い?」
晴「え?なんで?」
絆月「…なんか変だぞ、お前。」
晴「そうかな?」
絆月「…まさかとは思うけど、お前、あの、都市伝説試してないよな。」
晴「都市伝説って、何の話だっけ?」
絆月「…」
晴「俺も茶道部行ってみようかな」
絆月「…え?」
晴「どうせ家帰ってもやることないし。怒られるかな?」
絆月「お前…」
晴「いやー実は今日ばあちゃん家に居なくてさー。あ、明日休みだし、しばらくばあちゃんいないし、なんなら泊まりに来る?」

絆月は何故か訝しげにこちらを見て、黙っていた。が、しばらくして

絆月「おー、行く行く!今夜は寝かせないからな♡」
晴「なんだよそれ笑」

いつも通りの絆月に戻った。



俺は結局茶道部には行かず、いつも通り“まっすぐ”家に帰った。
絆月が来るから少しぐらい片付けておかないと行けない。
どうしようもない物たちは押し入れに詰め込んで、机の上を片付けて、花瓶の水を替えて、軽く掃除機をかけた。

ピンポーン

晴「よ」
絆月「よー。」
晴「茶道部どうだった?」
絆月「最強に美味いお茶、たててきたよん♡」
晴「なんだそれ」

いつも通り他愛のない話をして過ごす。
ばあちゃん以外の人と一緒に晩御飯を食べたのはとても久しぶりの事で、なんだか新鮮に感じた。

絆月「…こうしてると俺たち新婚みたいだなー」
晴「は?きもいこと言うなバカ」
絆月「なんでよー!やだ!あなた!今日は一緒に寝ましょ♡」
晴「ちょ、やめろって!!笑」
絆月「そうとくればベッドメイキング、しなくちゃ♡♡」

ふざけた絆月が俺の部屋へ向かう。俺も後を追う。

絆月「久しぶりのダーリンのお部屋♡」
晴「だからなんでだよ笑」
絆月「……」
晴「絆月?」
絆月「これ…」

絆月は机の上の小瓶を見て固まっていた。

晴「それがどうかしたの?」
絆月「どうかしたのって。これ、青い花じゃん」
晴「?うん、青い花だね?」
絆月「…やっぱりお前、青い花を取りにいったのか?」
晴「いや、この花はばあちゃんがくれたんだよ。」
絆月「…お前、行ったんだな、“LAND”に。」
晴「LAND…?」

聞いた事が無いはずの単語なのに、何故かとても知っている。何故かとても心地良い。分からない、どうしてかは分からないけど、“それ”が。“そこ”が。とても幸せだって俺は知っていた。

晴「…行かなきゃ。」
絆月「晴!!!」





…?

?「ちょっと!!起きてよハル!!」

ハル「いたたたた、、、勘弁してよ……エリー。」
エリー「もう。色んなとこ行くって約束したのに、急に倒れて起きないんだもん!!そりゃぺちぺちもしたくなるでしょ!!」
ハル「はは…そうだね、ごめんね。」
エリー「…凄いうなされてたけど、大丈夫?」
ハル「ああ、平気。変な夢を見てたんだ。」
エリー「夢?」
ハル「うん。そこにはエリーも、父さんも母さんも居なくて、僕はひとりぼっちなんだ。」
エリー「なにそれ、寂しいね」
ハル「…うん、寂しいね」
エリー「夢でよかったわね。エリーちゃんはちゃんとここにいるわよ!」
ハル「うん。そうだね。じゃあ、行こっか。どこからがいい?」
エリー「うーーーん。私、高いところが好きだから観覧車がいい!」
ハル「観覧車って帰る前に乗るところじゃないの?笑」
エリー「いいの!!帰る前にも乗るし、今も乗る!」
ハル「エリーは本当に自由だなぁ」
エリー「うるさーい!ほら、行こう!!」

エリーに手を引かれて、歩き出した。
さっきまでとても、身体が重かった。
悪い、夢を見ていた。
ここはとても幸せで、暖かい。
遊園地を一通り回り終わったら、エリーの親を探して、俺も母さんと父さんを探さないとな。

そんな事を考えながら、俺はエリーに付き合って色んな乗り物を楽しんだ。
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