17 / 114
7−2.和解
しおりを挟む結局、数人ほど打身や深めの切り傷を治療し終えてやっと一息つく、リリーちゃんにお願いして全員分の紅茶を用意してもらった。
いつも何処からともなく取り出す地球の製品、リリーちゃんはどうやって取り寄せているのだろうか…
薪を囲むように座り、皆で暖かい紅茶をすする。
昼間とはいえ森の中は薄暗く今日は少々肌寒いので、火があると幾分か暖かい。
薪は癒されるなーと呑気に思いながら、私が熱々の紅茶をふーふーしてるその横で、グレンは熱々紅茶をー…グビグビ飲んでいる。
さすがは炎を噴き出すだけあって口内の高温対策バッチリなようだ…そんな事に感心していると
「すごくいい香りぃー、初めて飲むお茶だわぁ~」
なんとも間延びした話し方をするエルフだなと思って視線をやれば、露出狂並みの際どい服を着た…痴女!?
私の視線に気づいたのか痴女…いやエルフは
「あっ、私はロメーヌって言いますぅー
危ない所を助けて下さってぇー本当にぃー有難うございましたぁー」
この方は踊り子さんか何かなのかな?
そう思っているとロメーヌの隣に座っていた双子の兄弟のお姉さんも
「私はアレイナと申します。
先ほどは本当にありがとうございました。
命ばかりでなく弟の治療までして頂き、本当に感謝しております。」
次々と他のエルフからも感謝の言葉を述べられる。
いやー良かった。
リリーちゃんの布恐活動で一時はどうなる事かと思ったけれど、皆さんの信頼を少しばかり回復できたようだ。
「タキナ様に感謝を述べるのは当然の事!
ですが、私は忘れていませんよ!タキナ様を奴隷商人呼ばわりした事を!
タキナ様、この無礼者達には不敬罪で処罰が必要だと思います!」
キリッとした顔で、上げたばかりの信頼を落とすなー!!!
思わず米神を抑える。
どうしたものか、リリーちゃんの教育が最優先かも知れない。
私の頼れるリリーちゃんだが、この一点だけはどうにも…
「リリーちゃん、皆さんが疑うのも無理はりませんよ
聞けば盗賊に捕まり奴隷商人に売られそうになっていたのですから、その上私達の見た目は異端そのもの、不安がられるのも仕方ありません。
今はこうしてリリーちゃんのおかげで皆さんから色々とお話を聞かせて頂けているのですから、良いではありませんか」
ねっ?と言ってリリーちゃんに微笑みかけると、口を尖らせて不満げな顔になる。
「タキナ様がそう仰るならば…」
不満だが聞き入れてくれるようだ。
ヨシヨシとリリーちゃんの頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める。
表情がコロコロ変わって歳の離れた妹か、はたまた娘でもできた様な気分になる。
「けっ、間抜け面」
グレンの一言でリリーちゃんの顔が一瞬で真顔になり、殺さん勢いで睨みつける。
私を挟んで喧嘩するな2人とも…まったく
「やめなさい2人とも」
2人に威圧をかけると直ぐに大人しくなってくれたが、隙あらば喧嘩するんだからこの2人は…。
そう言えば私が死ぬ直前に助けようとした小学生とサラリーマンは無事だったんだろうか、事故当時の記憶が曖昧だったため2人を見ていてふと思い出した。
自称召使に会う機会があったら聞いてみよう。
ため息をついて皆に向き直る。
するとアレイナが、ほっとした表情を見せた後に遠慮がちにグレンに視線をやる。
「治療の最中にもチラッとお聞きしましたけれど、本当に…その…その少年が私達を追っていたドラゴンなんですよね?」
まぁ、無理もないアレがコレですもんね。
「ふん、気配で分からないのかよドラゴノイド
ドラゴノイドなら僕達ドラゴンが人型になれることくらい知ってるだろ」
そう言いながら、これまたリリーちゃんに出してもらったお茶請けのクッキーをムシャムシャ食べているもんだから、威厳もへったくれもない。
グレンがムシャムシャ食べているのを見て、ドラゴノイドやエルフの子供達も安全な物と思ったのか、クッキーを食べ始めて目を輝かせている。
よほど美味しかったらしい。
「いっ…いえ、ドラゴンが人の姿になれるなど聞いた事はございませんでした。」
なんだ人型になれるの知ってたのかーと思うのも束の間、知らなかったのか…
グレンの話ぶりからすると、ドラゴンが人型になれることは周知の事実と思っていたようだ。
うーん、この世界の種族はコミュニケーション不足が過ぎるのでは?
ドラゴンだけかもしれないけれど、争いを話し合いで全て解決するなんて出来るわけがないがないと、元の世界で重々承知の上だが、しないよりはした方が良いに決まっている。
種族長会議とか引きずって来てでもさせた方が良いんだろうか?
でもなー、地球でも主要国家首脳会議とかあるけど、たかが一介の市民ではアレがどれほどの意味を成していたのかは正直測りかねる。
やはり、モブの私にはこんなの荷が重すぎると内心で深い溜息をついた。
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~
星天
ファンタジー
幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!
創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。
『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく
はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!
Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~
天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。
現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。
オークに転生! フィジカル全振りは失敗ですか?
kazgok
ファンタジー
身の丈4メートルのオークに転生してしまった「彼」は、生まれた大森林からエルフに追い立てられ、逃げた先で可憐な姫に出合う。オークの軍団に襲われる自称「のじゃロリ姫」ことロジーナ姫を助けた「彼」は、特級冒険者の討伐隊を壊滅させたオークキングと戦う事になる。向かったオークの拠点には屈強な女戦士と豊満な女司祭が囚われていた……はたして「彼」は無限のパワーで未来を切り開けるか。
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
おおぅ、神よ……ここからってマジですか?
夢限
ファンタジー
俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。
人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。
そんな俺は、突如病に倒れ死亡。
次に気が付いたときそこには神様がいた。
どうやら、異世界転生ができるらしい。
よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。
……なんて、思っていた時が、ありました。
なんで、奴隷スタートなんだよ。
最底辺過ぎる。
そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。
それは、新たな俺には名前がない。
そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。
それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。
まぁ、いろいろやってみようと思う。
これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる