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えっ?それ「俺」でも気に食わないなら燃やしてない? ○△
しおりを挟む【レオンハルト】
…夜になってもいい脱出法は結局思いつかなくて、鳥が目を覚ました。
鳥は俺の顔を見てどこかに飛び去ったので、その間に携帯食を食べる。
食欲は正直そんなになかったけど、大事な時に動けなくなるくらいなら食べておかないといけないと思ったから。
しばらくすると鳥が帰ってきて、べちゃ、とでかい鹿っぽい魔獣の死骸を俺の前に置く。
「……?」
「コレ、タベロ」
あ、話せるんだ…。
しっかり洗脳が効いてるのはいいんだけど、どうしよう。
俺は鹿と鳥を交互に見つめて頭を抱えた。
====
【レイン】
気分が悪い。
部屋を進む度に大量の触手が襲ってきて、それを全部焼いた。
遺跡は外観の古代の石造りとは反して、中は新しい建物ように文明的で、しっかりしたレンガの壁や床でできていた。
鉄製の重い扉を開けるたび、触手が飛びかかってくる。
焼くたびに身体が熱を持ち怠くなっていくのが分かってたけど、こんなところで立ち止まってる場合じゃないから全部燃やしていく。
「…ここは?」
息が上がって不快になる、けどずっと進んで、次の部屋への扉を開けるとそこでは触手は襲って来なかった。
部屋の真ん中に気持ちの悪い肉の蔓でできたような椅子だけが置いてあって、
その中央には男性器を模した肉の棒が立っていてる。
悪趣味な椅子に思わず眉を顰め、それを無視して横切り次の部屋の扉へ手をかけた。
「開かない」
けれど、扉はまるで固まっているかのようにピクリとも動かない。
扉に何発も攻撃魔法をぶつけたけれど無傷のままで、破壊では次の部屋には進めそうになかった。
どうしようかと考えて、ドアノブの下に文字を書いたプレートが貼ってあることに気づいた。
「座って椅子を満足させたら開きます」
その一行だけだったけれど何をすればいいのかわかって、気分が悪くて頭痛がした。
…けれど、レオンのためだったから。
早く終わらせて助けに行こう、と思い椅子に真ん中のものを避けて腰掛ける。
けれど何も起きなくて、諦めて下着を脱いでそれに跨った。
「…う、っく…!」
熱く火照っていた身体はその刺激を感じ取って反応してて、その体内に入れたものの形や大きさがレオンのにそっくりだと気づいた。
こんなものがレオンを模すなんて、と殺意に近い激しい怒りも沸いてきたけど同時に嫌でもレオンの事を思い出して淋しくなった。
腰を全部下ろして椅子に座った瞬間、足元を触手に絡め取られる。
そのままミミズのような細い触手が足を伝って全身に這い、目を覆って視界を隠してきた。
「う、ふっ……やめ、ろ…!」
言っても仕方がないんだろうけど、それでも口をついて静止の言葉が出た。
触手は細い何本もの腕で前を刺激し、そのまま後ろの律動も開始する。
なにか粘液でも出しているのかニチャ、ニチャ、と揺すられるたび耳障りな音が下半身からしていた。
人の指のような形に姿を変えた触手も胸を弄っている。
…それもやっぱりレオンの指にそっくりな長さや形をしてて視界が見えない中、レオンと同じようにそいつらが動くから段々さっきまでの全部が嘘で、今はレオンと愛し合っているんじゃないかと錯覚しそうになる。
「レオン…」
淋しくて名前を呼んで欲しくて、声に出したけれど返事はない。
それが当たり前なのに、つらくて悲しい。
…もしかしたら、ここには認知や記憶を歪めるような術式でも発動してるのかもしれない。
マズいと思ったけどもう手遅れで、先に「レオンに今愛されている」と思い込んでしまっている身体の方が素直に触手の愛撫を受け入れて反応してしまっている。
「う、ぁ、はぁ、あぁ」
何度も前の先端をぬるぬるとした触手でくすぐられ、いくつも突起や起毛のついた太い触手が全身のいろんなところを撫でてくる。
身体を浮かされて突かれて、気持ち良くなって思わず腰が動いた瞬間触手が首に巻きついてきてきゅ、と気道を締めるよう力が入った。
「……!?ぁ、げほっ、ぇ……」
苦しい。
酸欠で視界がぼやけた瞬間それは緩まる。
呼吸を整えるとまた触手は首を絞めてきた。
「も、やめ……げほ、おぇっ、えぇ…!」
何度もそれは繰り返され、触手は首を絞める事で生理的に身体が反応するのを楽しんでいるようだった。
「…レ、オン、お願い、やめて」
苦しくて泣いているのに、それはやめてもらえない。
足の間にはすでに、何度か何かを放たれているようでぼたぼたと床に液体が垂れ落ちる音がしていた。
カシャン、と前方で鍵が開くような音がしたけどもう僕はレオンに許しを乞うのに必死で、なんで扉を開けたのかったのかも思い出せなかった。
「くるし、ごめ、ん、なさ、レオン…!」
また足元でそれは動き始める、気持ちいいけど辛くて、怖くなって懇願していた。
「おねがい、せめて、名前を呼んで…」
けれどそれは返事をくれない、まだ勝手に動き続けている。
「レオ、……どう、して」
どうして。
「どうして、名前を呼んでくれないの?」
こんなにお願いしているのに。
名前を呼んでくれたら今までも、続きの全ても苦しくても許すのにそれすらしてくれないなんて、あんまりだと思う。
許せなくて感情のまま全身にまとわりついてくる鬱陶しい全部を燃やした。
発火した瞬間それは驚いて僕を締め上げようと巻きついてきたけど、その前に焼き尽くされて炭になっていく。
「……」
持ち上がっていた身体が地面に降り、一面が火の海になった。
火の粉が舞う中心で触手が苦しんで燃え尽きるそれを最後まで見つめていた。
「…あんなものが、レオンのわけがないのになぁ」
自分が何で今、こんなことをしていたのか思い出した。
なにかの魔法にかかっていたとしてもレオンと醜い肉塊の区別が付かなくなった自分に呆れてしまう。
「…ご褒美、くれるかな」
扉はもう開いていたから次に進む。
会えたら触手とレオンを間違ったことを謝って、抱きしめてもらってちゃんとレオンを次は忘れないように全部を覚えよう。
焦げ臭い部屋を後にした。
====
【イリア】
「お頭、どうしたんですか?」
「…え、いや、あぁ」
…なにをしていたんだったか。
いつも通り起きて、いつも通り近辺でしょうもない事をする奴らや迷子が出ていないか、拠点の近くを探索させていつも通り夕食の時間になったのに何かがすっぽり抜けて忘れている気がする。
「大丈夫?」
「…あぁ、レーヴェ…、いや、大丈夫だ」
レーヴェが心配そうに隣で俺の顔を覗き込んでいる。
先月くらいに魔獣に襲われていたところを助けて、それ以来俺に懐いてここで暮らしてる変なヤツ。
身なりが綺麗なので育ちが良さそうだと思うが、そんなヤツが何が楽しいのかここで狩りをして身銭を稼ぐような生活を隣でしている。
「…いや、顔色もちょっと悪いし、休んだ方がいいんじゃないか?デコも熱い」
額同士をつけて体温を計られ驚く、サンや他の手下が何かその様子を茶化していた。
「お前…、こういうことは」
「ごめんごめん、俺がしたくてした」
ケラケラ笑われて、周りの視線にもそれにもなにか言うのも面倒で、たしかに拭えない違和感に少し気分も悪かったので休むことにした。
「大丈夫?」
「…病人を労わる態度じゃないな」
横になると追いかけてきたレーヴェに馬乗りになられて、見下ろされる。
その目に少し欲が宿っていて指摘すると諦めたように降りて、「ごめん」と謝られた。
「…お前こそ、どこか調子が悪いんじゃないか」
「えっ、なんで」
「いつものお前なら」
…いつも?
レーヴェも困ったように、俺っていつもこんなことしてたっけ?と首を傾げている。
そんな、病人にちょっかいをかけてくるようなヤツじゃないかコイツは。
(そもそもそんな人間はそんなにいない筈だ)
「大丈夫そうならいいや、近くにいるしなんかあったら呼んでよ」
「いや、…隣で寝てろ」
自分の住まいにいるのに、ここにいるべきではないという焦燥感がある。
それを追い払いたくてレーヴェを呼んでいた。
「…う…っ」
「ん…、くすぐったい?」
結局またアイツは俺の上に覆い被さり、何が楽しいのか猫のように人の胸の先端を舐めている。
綺麗な顔をしていて、男でも女でも好きに手を出せそうなのに自分をなぜ気に入っているのか理解できなかった。
「あは、ミルク出てきた」
レーヴェはそれを美味しそうに飲みながら、膝で俺のものを押して刺激してくる。
前に飲んだミルクのせいで、極端に性的な快感を感じたり気分が高まるとたまに胸からミルクが出てしまうのだが、コイツにだけは出るタイミングを行為を肯定していると受け取られたくないのでバレたくない。
が、「前に飲んだミルク」がなんなのかわからないし、
なぜレーヴェに自分が「レーヴェに性的な刺激を与えられて気分が高まった」ことがバレたくないのか、よくわからなくてまた不思議な気分になった。
このあたりのことを考えるとき頭に靄がかかって思考がまとまらない。
ぼんやりしていると、それを見透かしたレーヴェに拗ねたように竿を扱いて横から舐められた。
「何考えてたの」
「…、いや…」
「俺のことだけ考えててよ」
それに口付けて、レーヴェは先端を唇で覆い口内へ入るギリギリまで頬張った。
喉奥がきゅ、と締まり先端を刺激するのでその心地よさに息を漏らす。
「んっ、ぢゅ、む…っ」
俺の反応にめざとく気づいて、激しく口淫をレーヴェは繰り返し、やがて閉じた足の間、極力触らせたくないような場所へ指を入れてそこを拓いてくる。
「っ、ふ、お前、本当にどこで、そんな…っ、う」
気を抜いたら射精してしまいそうな刺激がきて、身を捩って堪えるとレーヴェは咥えていたものから口を離し、
熱に蕩けた目でそれに頬擦りしながら「アンタに喜んで欲しくて」と笑っていた。
「ねぇ、イリア、もういいよね」
意思を確認され、余裕がなさそうなのに俺の返事を健気にレーヴェは待っている。
その瞳が不安そうで、肯定の意味を込めて一度だけ頷くと嬉しそうにキスをされた。
「いっぱい優しくするね」
横を向かされ、後ろからゆっくりと熱いものが身体に入ってくる。
「大丈夫?」
また聞かれて、労わるように前に手を回されて上下に扱かれた。
頸に何度もキスをされ、まるで繊細なものでも扱うようにされている自分が情けなくて少し泣きそうになる。
「動くね」
やがてレーヴェがゆっくりを腰を振る。
熱いそれが体内を往復するたびに、ビリビリと痺れるような快感がして、身体の内側から直接芯に刺激を与えるような箇所を擦られると息苦しいほどに身体が反応した。
「ん、んんっ、イリア…っ」
名前を呼ばれ、後ろから背中にキスをされる。
何度も緩慢な動きで突かれて余裕なく声を漏らし、芯の先端を人差し指を食い込ませるように何度か腹で掻かれると限界を感じ程なくして精を吐き出した。
「…っ、あ、あぁ…!」
真後ろでレーヴェも出したのか、背中に生暖かい感触がありピッタリとくっつかれた。
「イリア」
名前を呼ばれてなにかと振り向く、唇にキスをされた。
「愛してるよ、イリア」
「……は?」
その瞬間、これまでの比ではない強烈な違和感。
…いや、だれだ、こいつは。
思い出した。
こいつは山中で薬物を飲んで気分が高揚し崖から落ちかける、自分が苦労するのが嫌だからと俺とイチを触手の餌と囮にしたバカだ。
種を撒くだけ撒いて責任を全く取らない。
スノウやレインはまだ着いて来ただけいい方で、立ち寄った村で俺まで保護者として理解できないがアイツが手を出した相手の家族に謝った記憶が数回ある。
そんなやつが「愛してる」?
鳥肌が立って、咄嗟に隣のレーヴェに似た何かへ起き上がって腹に拳を入れた。
「あー、…バレたか」
「アイツがこんなにまともなら、俺もここでまだ暮らせてただろうな…」
痛がる素振りもなく、ドロドロと景色と一緒に残念そうな言葉を吐きレーヴェの紛い物が溶けていく。
「お気の毒に」
と最後に言われた気がしたが聞き取れなかった。
気がつくと遺跡の一室、何もない部屋で座り込んでいた。
端に衣服と荷物が落ちていたのでさっさと着て扉を開ける。
…扉の向こうは暗くて、風がそよいでいた。
出てすぐに、もうすぐ夜が明けるような霞色の空が目に入りここが屋外なのだと分かった。
数歩前に出る、鳥の巣が見える。…また前に進む。
「あ!イリア!やっほー!」
…こっちの心情に不釣り合いな、無駄に明るい声が聞こえてきた。
「レーヴェ」
無事だったのか、と聞くまでもなくアイツはこっちまで歩いてきて焦っただの、いかに催眠魔法が便利かだの力説している。
「いやぁもうダメかと思ってた、ちなみにどうやって帰んの?ここ降りれそうになくてさぁ」
「…あ、あぁ、鳥の巣か枯れ木の幹にでもこのロープを結んで降り……」
「鳥の巣」
鳥の巣、と聞いてすこし都合が悪そうにしどろもどろになっているレーヴェに引き止められつつ、ロープを片手に一番安定していそうな鳥の巣に近づいて、絶句した。
レイン、スノウが半裸で転がっているのはまだわかる。
…ハーピーまで、何もなかったと思う方が難しそうな顔で寝ている。
「お前」
「いや、ちがう。
スノウとレインはなんか二人とも着いてすぐ『ご褒美をください』とか言いながら発情しててさぁ、なんかする間も無くちょっと乳首とか摘んだらすぐイって寝たんだって、何もしてない!」
「…ハーピーは」
「あ、あの鳥?アイツはうん……番の洗脳したから勢いで…、あ!場所よくわかんないし本番はシてない」
「判ればしていたのか…?」
呆れてもう何かを言うつもりにもなれず、さっさとロープを巻きつけて自分だけ遺跡を降りた。
しばらくして体力が戻ったのかスノウとレイン、それからレーヴェが降りてきたがさっきの幻だかの少しキリッとした知性のありそうな瞳を思い出し、どうして現実はこうも無常なんだろうとため息が出た。
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