殺戮部隊と弟子

水無月14

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幕引き

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 「構えッ!」
 そこに待ち構えていたのは無数の人影。
 すべてを終えたと思っていた四条要は思わず息を呑んだ。

 「どうやら依頼をやり遂げてくれたみたいだな」

 聖騎士を従え盤石の布陣とばかりに待ち構えていたのは今回の依頼主。
 もしもアウロがその気になれば満身創痍の三人の始末など造作もないだろう。
 事実上、漁夫の利という形でアウロがその命運を握っていた。

 「……治療班。重症者二人だ。すぐに手当てをしてやれ」

 疑いの眼差しを向ける四条要の心を知ってか知らずか傍にいる部下にそう告げるアウロ。
 ミラとネイロは速やかにその身柄を引き取られた。
 「本当によくやってくれた。約束の報酬だ」
 アウロがポケットから取り出した小さな箱に入っていたのは望みの品。
 ――思いのほか呆気ない。
 一瞬は邪推とも思ったが、四条要はあえてその疑問を口にした。
 「……殺戮部隊オレたちを根絶やしにするのなら今が千載一遇のチャンスだぜ?」
 「奇遇だな。私もまったく同じことを考えていたところだ」
 「まあ、タダでこの首くれてやるほど俺は羽振りが良くねえ。やるならここにいる聖騎士の半分は道連れになると思えよ」
 「それは脅しかね?」
 「単に事実を言っただけだ。なんなら実践して見せようか?」
 「いやいや、それには及ばんよ」
 「あん……?」
 「無益な戦いをする気はないと言っている。もしも貴様が序列一位にとって代わり世界を滅ぼそうというのならば話は別だがね」
 「悪ぃが興味ねぇーな。そーゆーのは」
 「そう言うだろうと思った。それよりも洞窟内で何があったか教えてくれ」
 「先に風呂と睡眠をとらせてくれたらな」
 「よかろう。すぐに手配しよう」
 ようやく訪れた戦いの終わり。人々の記憶としては十年前に終わった戦争だったが、四条要にとっての戦争はたった今終わりを迎えた。
 「はぁ……」
 長い間、風呂に入っていなかったような肌がざらつく感覚。
 残りの人生は争いとは無縁の地で静かに暮らしたい。
 それがかつて哲学者を志した男のささやかな願いだった。
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