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堕ちた聖女
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ミラが三人目の刺客を無力化したのと時を同じくして感じた気配。
それは正門とは真逆の裏門にただひっそりと佇むようにして存在していた。
「……こっちが気付いたことに気付いたな」
窓を叩き開けすぐさま屋根に飛び移った四条要は裏門を目指した。
――実際に会えるかは五分。
相手に交戦する意思がなければ四条要に気付かれた時点で撤退するだろう。
たとえそうだとしてもせめて尻尾を掴みたいという一心で四条要は急いだ。
「あいつか!」
なんとか捉えた気配の主。その影は逃げようとはしなかった。
かと言って敵意を感じるわけでもない。
四条要は考えるよりも先に屋根から一気に裏門前まで跳躍した。
「お久しぶりですね」
着地と同時に掛けられた声。
可能性の一つとして考えていたにもかかわらず驚きが波のように押し寄せた。
「……序列五位“堕ちた聖女”オルレアか……」
白銀の髪を靡かせ青と緑――左右で異なる瞳を高貴な出で立ちの女騎士。
四条要にとっては誰よりもよく知る人物なだけにその表情は一気に険しくなった。
「見違えたぞ……」
古の予言書によると世界の命運を左右する《神に選ばれし者》。
戦乱の世で親兄弟だけでなく生まれの故郷を焼かれ亡国の民となった若き聖女はその重圧に耐えかねて自らに課せられた“運命の歯車”から逃げ出した。
すべてを失ったオルレアが最終的に行き着いた先は悪名高き殺戮部隊。
元来より図抜けた資質を持つ彼女は殺戮部隊の中でも別格扱いされたうちの一人だった。
「十年前はまだあどけなかったが、ずいぶんと美人に成長したものだ」
「そうゆうカナメさんはさらにかっこよくになりました」
「……死んだかと思ってたぞ」
「それはお互い様です」
微笑を浮かべるオルレアとは対照的に四条要の頬には冷や汗が伝った。
感じるのは魔法使いとしての圧倒的な力の差。
ブランクで鈍っていることを差し引いてもお釣りがくるぐらいにオルレアは強く、十年前はまだまだ発展途上だったが今やその力は完全に成熟していた。
ネイロと組んで五分。とてもじゃないが四条要一人の手に負える相手ではなかった。
それは正門とは真逆の裏門にただひっそりと佇むようにして存在していた。
「……こっちが気付いたことに気付いたな」
窓を叩き開けすぐさま屋根に飛び移った四条要は裏門を目指した。
――実際に会えるかは五分。
相手に交戦する意思がなければ四条要に気付かれた時点で撤退するだろう。
たとえそうだとしてもせめて尻尾を掴みたいという一心で四条要は急いだ。
「あいつか!」
なんとか捉えた気配の主。その影は逃げようとはしなかった。
かと言って敵意を感じるわけでもない。
四条要は考えるよりも先に屋根から一気に裏門前まで跳躍した。
「お久しぶりですね」
着地と同時に掛けられた声。
可能性の一つとして考えていたにもかかわらず驚きが波のように押し寄せた。
「……序列五位“堕ちた聖女”オルレアか……」
白銀の髪を靡かせ青と緑――左右で異なる瞳を高貴な出で立ちの女騎士。
四条要にとっては誰よりもよく知る人物なだけにその表情は一気に険しくなった。
「見違えたぞ……」
古の予言書によると世界の命運を左右する《神に選ばれし者》。
戦乱の世で親兄弟だけでなく生まれの故郷を焼かれ亡国の民となった若き聖女はその重圧に耐えかねて自らに課せられた“運命の歯車”から逃げ出した。
すべてを失ったオルレアが最終的に行き着いた先は悪名高き殺戮部隊。
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「十年前はまだあどけなかったが、ずいぶんと美人に成長したものだ」
「そうゆうカナメさんはさらにかっこよくになりました」
「……死んだかと思ってたぞ」
「それはお互い様です」
微笑を浮かべるオルレアとは対照的に四条要の頬には冷や汗が伝った。
感じるのは魔法使いとしての圧倒的な力の差。
ブランクで鈍っていることを差し引いてもお釣りがくるぐらいにオルレアは強く、十年前はまだまだ発展途上だったが今やその力は完全に成熟していた。
ネイロと組んで五分。とてもじゃないが四条要一人の手に負える相手ではなかった。
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