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勝ち目のない戦い
しおりを挟む「森羅万象契約の理よ、今こそ我と契約を結び給え」
――契約術式。
素質のある者だけが発動できる魔法使いの原点とも言うべき最初の魔法。
術者はその際“声”を聞き、その声の主たる精霊や神を身体に宿す――すなわち契約を交わすことで正式な魔法使いとして自身が契約した精霊や神が属する系統の魔法を使えるようになる。
「しまった……」
だがそれは今明らかに場違いな術式。そのことに気付いたミラは硬直する。
切羽詰まった状況とはいえ何故契約術式なんてものを発動させてしまったのか。
自分でも意味がわからなかったのでミラはパニック状態に陥った。
「余計なことしやがって! 覚悟しろよ嬢ちゃん!」
そんなミラに迫るのは殺戮部隊のカーチェス。今さら小娘一人殺したところで状況に変化が生じるなんてことはなかったが面倒事を招いてくれた以上は死んでもらうしかない。
少なくてもカーチェスにとってそれはケジメだった。
「荒ぶる火神の大いなる力よ、今こそ我が力となりて敵を殲滅せん」
見ただけで戦意喪失するぐらい絶対的な力の差。
それは同じ魔法使いとは思えないぐらい圧倒的なものだった。
――魔法使い同士の戦いにおいて“絶対”はない。
学校ではそのように教えられ、ミラ自身もそうだと信じ切っていた。
だが実際は違った。それは大きな誤りだった。
ミラの眼前にはどう足掻いても勝ち目がないと確信させるほどの絶対的強者。
同じ魔法使いとして格の違いを感じずにはいられなかった。
「“炎極拳”!」
すべてを焼き尽くす紅蓮の業火。
限定魔法としては比較的シンプルな部類だったが、直撃などせずともミラを消し去るには十分過ぎる殺傷力を秘めていた。
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