殺戮部隊と弟子

水無月14

文字の大きさ
上 下
13 / 83

勝ち目のない戦い

しおりを挟む
 
 「森羅万象契約の理よ、今こそ我と契約を結び給え」
 ――契約術式。
 素質のある者だけが発動できる魔法使いの原点とも言うべき最初の魔法。
 術者はその際“声”を聞き、その声の主たる精霊や神を身体に宿す――すなわち契約を交わすことで正式な魔法使いとして自身が契約した精霊や神が属する系統の魔法を使えるようになる。

 「しまった……」
 だがそれは今明らかに場違いな術式。そのことに気付いたミラは硬直する。
 切羽詰まった状況とはいえ何故契約術式なんてものを発動させてしまったのか。
 自分でも意味がわからなかったのでミラはパニック状態に陥った。
 「余計なことしやがって! 覚悟しろよ嬢ちゃん!」
 そんなミラに迫るのは殺戮部隊のカーチェス。今さら小娘一人殺したところで状況に変化が生じるなんてことはなかったが面倒事を招いてくれた以上は死んでもらうしかない。
 少なくてもカーチェスにとってそれはケジメだった。

 「荒ぶる火神の大いなる力よ、今こそ我が力となりて敵を殲滅せん」
 見ただけで戦意喪失するぐらい絶対的な力の差。
 それは同じ魔法使いとは思えないぐらい圧倒的なものだった。

 ――魔法使い同士の戦いにおいて“絶対”はない。

 学校ではそのように教えられ、ミラ自身もそうだと信じ切っていた。
 だが実際は違った。それは大きな誤りだった。
 ミラの眼前にはどう足掻いても勝ち目がないと確信させるほどの絶対的強者。
 同じ魔法使いとして格の違いを感じずにはいられなかった。

 「“炎極拳ヘルフレイム”!」

 すべてを焼き尽くす紅蓮の業火。
 限定魔法としては比較的シンプルな部類だったが、直撃などせずともミラを消し去るには十分過ぎる殺傷力を秘めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

完結 幽閉された王女

音爽(ネソウ)
ファンタジー
愛らしく育った王女には秘密があった。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

処理中です...