11 / 83
団長の実力
しおりを挟む
――蚊柱のように蠢く黒い霧。
ターニャを中心としてその周囲を漂うのは夥しい量の砂鉄。
少量でも銃弾に匹敵する威力。仮にそのすべてを受けることになればまず原形を留めて死ぬことは叶わないだろう。
目前に迫った“死”を意識したミラは身体を小刻みに震わせ顔を強張らせた。
「やれば……できる……じゃない……。もっと……私を……感じ……させて……」
――殺そうと思えばいつでも殺せる。
恐怖で震えるミラを見るなり詠唱を止めたターニャは不気味にほくそ笑んだ。
「闇の従者よ! 我が命に従いその大いなる力を解放するがいい!」
そんな中で横槍とばかりに聞こえてきた詠唱。
直後にターニャ目掛けて黒い波動が襲い掛かるも、周囲を浮遊する砂鉄が瞬時に反応してそれを打ち消す。
「フン、かかりおったな。くらえ! “闇帝の一撃”!」
二段構えとばかりに発動された限定魔法。
アウロの足元にブラックホールのような異次元が発生すると蜘蛛のように無数の手を生やした巨大な鎧武者が召喚され間髪入れずに手にする巨大な黒剣を敵目掛け振り下ろした。
「――――ッ!?」
並の術者なら訳もわからぬうちに粉砕されているであろう強力な一撃。
普通ならばそれで勝敗が決していたが、殺戮部隊の名は伊達ではない。
「……“砂鉄重障壁”」
咄嗟の判断で巨大な盾を作り上げたターニャはアウロの攻撃を防いで見せた。
まさに間一髪。コンマ数秒反応が遅れていれば即死コースだっただろう。
結果としてアウロを警戒していた事が功を奏した。
そんなターニャが抱いた当然の疑問。
――アウロと対峙した仲間は何をやっていたのか。
それは数秒にも満たない疑問だったが、ターニャはすぐにその答えに辿り着いた。
「ミラ! いけるなッ!」
「はい!」
息の合ったコンビネーション。迂闊だった。
ミラの動きを阻止しようにも今はアウロの攻撃を防ぐことで手一杯。
とてもじゃないがミラを攻撃する余裕などなかった。
「他の……二人は……?」
「どうやら全員が同じ手に引っ掛かったわけだ」
殺戮部隊の三人ともが手段は違えどアウロの攻撃を防ぐ形で牽制されていた。
そんなアウロを肩に乗せて従うのは“魔王”の二つ名で知られる鎧巨人。
聖騎士団最強と名高い術者の限定魔術は三人の殺戮部隊をして厄介と思わせるものだった。
「うおおおおおおおッ! させるかあああああああ!」
最初にアウロの攻撃を弾いたのはカーチェス。
本来なら蚊ほどの存在でしかない小娘だが今は違う。
厄介事を招く前に始末する必要性を経験から感じ取っていた。
「なかなかやる。しかしそう簡単にぬけられると思うなよ」
巨人の肩から飛び降りてカーチェスの前に立ちはだかるアウロ。
「くっ……」
――相手にとって不足はない。
カーチェスは惜しみなく自身の限定魔法を発動させた。
ターニャを中心としてその周囲を漂うのは夥しい量の砂鉄。
少量でも銃弾に匹敵する威力。仮にそのすべてを受けることになればまず原形を留めて死ぬことは叶わないだろう。
目前に迫った“死”を意識したミラは身体を小刻みに震わせ顔を強張らせた。
「やれば……できる……じゃない……。もっと……私を……感じ……させて……」
――殺そうと思えばいつでも殺せる。
恐怖で震えるミラを見るなり詠唱を止めたターニャは不気味にほくそ笑んだ。
「闇の従者よ! 我が命に従いその大いなる力を解放するがいい!」
そんな中で横槍とばかりに聞こえてきた詠唱。
直後にターニャ目掛けて黒い波動が襲い掛かるも、周囲を浮遊する砂鉄が瞬時に反応してそれを打ち消す。
「フン、かかりおったな。くらえ! “闇帝の一撃”!」
二段構えとばかりに発動された限定魔法。
アウロの足元にブラックホールのような異次元が発生すると蜘蛛のように無数の手を生やした巨大な鎧武者が召喚され間髪入れずに手にする巨大な黒剣を敵目掛け振り下ろした。
「――――ッ!?」
並の術者なら訳もわからぬうちに粉砕されているであろう強力な一撃。
普通ならばそれで勝敗が決していたが、殺戮部隊の名は伊達ではない。
「……“砂鉄重障壁”」
咄嗟の判断で巨大な盾を作り上げたターニャはアウロの攻撃を防いで見せた。
まさに間一髪。コンマ数秒反応が遅れていれば即死コースだっただろう。
結果としてアウロを警戒していた事が功を奏した。
そんなターニャが抱いた当然の疑問。
――アウロと対峙した仲間は何をやっていたのか。
それは数秒にも満たない疑問だったが、ターニャはすぐにその答えに辿り着いた。
「ミラ! いけるなッ!」
「はい!」
息の合ったコンビネーション。迂闊だった。
ミラの動きを阻止しようにも今はアウロの攻撃を防ぐことで手一杯。
とてもじゃないがミラを攻撃する余裕などなかった。
「他の……二人は……?」
「どうやら全員が同じ手に引っ掛かったわけだ」
殺戮部隊の三人ともが手段は違えどアウロの攻撃を防ぐ形で牽制されていた。
そんなアウロを肩に乗せて従うのは“魔王”の二つ名で知られる鎧巨人。
聖騎士団最強と名高い術者の限定魔術は三人の殺戮部隊をして厄介と思わせるものだった。
「うおおおおおおおッ! させるかあああああああ!」
最初にアウロの攻撃を弾いたのはカーチェス。
本来なら蚊ほどの存在でしかない小娘だが今は違う。
厄介事を招く前に始末する必要性を経験から感じ取っていた。
「なかなかやる。しかしそう簡単にぬけられると思うなよ」
巨人の肩から飛び降りてカーチェスの前に立ちはだかるアウロ。
「くっ……」
――相手にとって不足はない。
カーチェスは惜しみなく自身の限定魔法を発動させた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる