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第六十八話 自動修復の性質珠
しおりを挟む俺が今回ニャスコの店で買ったアイテムは召喚石の他にもう一つある。
それは魔法素材だ。
ニャスコの店で、インゴットや召喚石、進化の証は狩ったことがあるが今まで俺がまったくと言ってよいほど手を付けてこなかった分類がある。
それが魔法素材だ。
「これが……氷の性質珠か」
俺がアイテムボックスの中から取り出したのは、青白く輝く性質珠だ。
ニャスコの店で売っている魔法素材のなかで、今回は俺のスキルに直結するアイテムを買ってみた。
「凄いな。触れているだけでもひんやりとする」
氷の性質珠は手に持っているだけでも、冷たい冷気が手のひらを冷たくさせる。
以前に作った炎の性質珠は触れても熱くなることはなかったのだが、なんだろうか性質珠の種類によって違うのだろうか。
「とりあえずまずは必要なスキルをセットし直して……っと」
俺は魔導武器を作るのに必要なスキルを付け替えると、適当に鋼の剣をクラフトした。
さっそくこの鋼の剣に、この氷の性質珠を組み込んでみよう。
氷の性質珠をセットすると、冷気を纏った小さな玉が鋼の剣の刀身へと吸い込まれていった。
出来上がった鋼の剣は、その刀身に白い靄を纏っている。
「なるほど? 氷の性質珠を組み込むと、冷気を纏った剣になるわけか」
ただ、この程度の冷気では大した効果はなさそうだな。
少なくとも同じ氷結系の能力なら、俺のスキルである【瞬間凍結(チリングタッチ)】の方が遥かに強力だ。
それは以前に作った炎の性質珠にも同じことが言える。
「うーん……レア度の低い性質珠ばかりを使っているから威力が低いのか……」
もし、この炎や氷の付与効果の威力を上げることができたのならばかなりの戦力になるのだが。
と、色々と試行錯誤しているとあることに気づいた。
「そうだ。そうだよっ!
武器の空きスロット全てに同じ性質珠をセットしてみれば、良いんじゃないか?」
さっそくやってみよう。
俺は再びニャスコの店に行くと、そこで氷の性質珠を追加購入してくる。
「あとはこの冷気を纏った剣に、新たに購入した氷の性質珠を組み込んで、っと」
鋼の剣の空きスロット枠は三つ。その三つすべてに氷の性質珠をセットしてみる。すると、刀身が纏う冷気の質が明らかに変化した。
「これは……」
鋼の剣の刀身は、見るからに強力な冷気を纏っており、軽く振るうだけでも冷気が空気を凍結させる。
「凄いな。これなら……」
俺は近くの木の枝で試し斬りをしてみた。すると、先ほどとは明らかに冷気の威力が上がっている。
なるほどな。
威力が低いのならば同じ種類の性質珠を重ね掛けしていけばいいのか。
これは知らなかったな。
この仕様は地味だが、非常に便利だ。
例えば空きスロット全てを【動物解体の性質珠】にした剣を作れば、動物の肉を解体する速度と能力が大幅に上昇する。
他にも空きスロット全てを【鋭利な性質珠】にして斬る能力を極限まで上げた剣とか。
変わり種でいえば【自動修復の性質珠】を空きスロット全てにセットして、折れても自然に直る剣……なんてこともできるかもしれない。
「これは、突き詰めていくともっと面白いことができそうだな」
しかし、そうなると性質珠生成のスキルレベルが低いことが少しネックになってくるか。
俺の性質珠生成のスキルレベルは2だ。
レベルが低いせいでまだ威力の低い性質珠しか作れない。
この性質珠生成のスキルレベルをもっと上げていけば、さらに強力な性質珠が作れるようになる。
それを重ね掛けすることができれば、かなり強力な魔法効果が付与された武器を作ることができるようになる。
その手ずから作った武器で俺の軍団を強化していく、というのもかなり魅力的だ。
今までは質よりも量を優先していたが、量を増やすよりも個々の質を高めていくのは全然良いと思う。
「割と消去法で選んでみたが……刻印鍛冶師(ルーン・ブラックスミス)の職業は思った以上のポテンシャルを秘めているな」
今までは金がなくてまともな性質珠を買えなかったが、進化の証に余計な出費をしなくて済んだ今はその分を思う存分に性質珠へと注ぐことができる。
「これは、次のレベルアップの時にはぜひとも刻印鍛冶師(ルーンブラックスミス)のスキルを上げていきたいな」
あと刻印鍛冶師(ルーンブラックスミス)の職業のスキルをもっと使いこなすには、ニャスコの店を活用するべきだな。
ニャスコの店では魔法素材の購買カテゴリーのところに魔導武器を作るための素材を売っている。
ニャスコに聞いた話では、ニャスコの店では、俺が性質珠生成では生み出せないレアな性質珠を売ってくれるらしい。
現に氷の性質珠も、影の性質珠も性質樹生成のスキルでは生み出せないしな。
今までは金がなくて後回しにしてきたが、この【魔法素材】の購買レベルは重点的に上げておきたいところだな。
ということで、
「来ちゃったっ!」
「ニャっ!! またですかニャッ!!」
俺はカウンターに近づいていくと、そこに置いてあったカタログを手に取った。
「……せっかく今回は普通のお取引ができたと思ったのにニャ」
俺がカタログをめくっているとニャスコがガックリと肩を落とした。
おい、失礼な奴だな。
「その言い方は少し気になるな。まるで、俺が毎度毎度無茶な買い方をしているみたいな言い草じゃないか」
「ま・さ・にッ!!
ミャーは前回のことを一生忘れないニャっ!」
俺の言葉にニャスコはフシャーと全身の毛を逆立たせた。
そんな大げさな、たかが店と倉庫を何十往復かさせただけじゃないか。
「おミャー……人から性格が悪いと言われないかニャ?」
たまに言われる。たまにな。
「安心しろって、今回は普通に魔法素材を買いに来ただけだからさ」
俺は魔法素材のカテゴリーの中から、ルーンクリスタルと幽月草を購入する。
「ニャっ! 今回は控えめだったニャ」
だろ。
俺だって良心ぐらいはある。あんな無茶な買い方はたまにしかやらんよ。
「……何だろうかニャ。
いま、とてつもない寒気が背中を駆け抜けていった気がするニャ」
「気のせいだろ」
「んニャ。それはそうと、今回のお買い上げで【魔法素材】の購買カテゴリーの購買レベルが上がりましたニャ」
だろうな。
今回の買い物は、それが目的だったからな。
「んニャ……。
お客様はお金持ちだニャ。
前回と今回のお買い上げですべてのカテゴリーの購買レベルが上がりましたニャ。
時間をおいてまた来てくれれば、新しい商品をドサっと入荷しておきますニャ」
ほう。
それは楽しみだな。
「新しい商品が入荷されるのっていつ頃だ?」
「それは難しい質問だニャ。
それはミャーではなく本部長がお決めになることだからニャ。だから、ミャーには分からないニャ。
ただ、早くても丸一日はかかると思うニャ」
一日か……。
まあ、今は買いたくても金がないしな。また、金になりそうな物を手に入れたらまた来るか。
ニャスコの店を後にすると、現実世界へと戻って来た。
「さて、と……収穫としてはまずまずだな」
ニャスコの店で魔法素材の購買レベルを上げる為にルーンクリスタルと幽月草(ゆうげつそう)の二つを買ってきた。
これはどちらも性質珠の素材になるアイテムだ。
俺はさっそく性質珠生成のスキルを発動させる。
「やっぱりルーンクリスタルがあるだけで一気に作れる性質珠の選択肢が増えるな」
基本的に性質珠生成のスキルはMP消費だけで性質珠を作ることができるが、ルーンクリスタルや幽月草などの素材アイテムがあるとより強力な性質珠を作ることができる。
「重厚の性質珠、斬撃強化の性質珠、健脚の性質珠……作れる物が色々とあるな」
重厚の性質珠は、セットした武器や防具の重量を増やす効果を持つ性質珠だ。
この性質珠は、例えば俺の白夜刀などの武器の重量が重要な武器の威力を強化することに使えると思う。
ただ、使うと武器の重量が増えてしまうためよく考えて作らないとマイナスにしかならなそうだ。
斬撃強化の性質珠は、鋭利の性質珠の上位互換となる性質珠だな。
この性質珠を剣などの斬撃武器に付与すると、文字通りに切れ味が大幅に強化される。
健脚の性質珠は、足具専用の性質珠でセットすることで走る速度を上げることのできる変わった性質珠だ。
あとは以前にも見た、武器や鎧を自動で修復してくれる【自動修復の性質珠】なんかも作ることができる。
「斬撃強化の性質珠も良いが……健脚も捨てがたいな。
いや、それともやはりここは自動修復の性質珠か……?」
悩むな。
ニャスコの店でルーンクリスタルを買ったとはいえ、作れるのは二つが限界か。
俺は悩んだ末に、【自動修復の性質珠】と【斬撃強化の性質珠】の二つをクラフトした。
機動力を強化できる健脚の性質珠も捨てがたいが、もっと直接的に役に立つ他の二つの性質珠を今回は優先した。
クラフトした二つの性質珠は、どちらも白夜刀へセットする。
「よし、っとこれで良いかな」
後はできれば配下達の武器にも性質珠を付与したいところだが……。
「MPが足りねぇな」
これだ。
これが俺が今まであまり性質珠のスキルを多用してこなかった理由でもある。
性質珠生成のスキルは便利だが、性質珠を作成する際に必ずMPを消費する。
そのせいで使う時と場所を選ばなければいけなかった。
「ただ、今が絶好のチャンスなんだよな」
今日は不覚ながら俺が暴走してしまったせいで二匹の岩盤竜と戦う羽目になってしまった。
心身ともにボロボロのこの状態では、拠点から出るに出られない。それは逆に言えばMPを気にする必要がまったくないということだ。
「普段は有事に備えてある程度のMPを温存しておかなければいけないから、大したことはできないしなぁ……」
俺の軍団全員分を強化するのは流石に無理だが、せめてゼクトールやハーキュリーなどのネームドの連中の分の武器は強化しておきたいな。
「……仕方ない。
増田さんに頼むか」
あまり気乗りはしないが、まあ仕方がない。
俺は増田さんを探して、拠点の方へと足を向けた。
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