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第十七話 魔法結晶
しおりを挟む俺が今までに起こった全ての出来事を蘭子先生に話した。蘭子先生は俺の話をずっと、真剣な表情で聞いていた。
「話は、分かったけれど。
いいえ……やっぱり、にわかには信じられないわね」
蘭子先生は首を小さく振った。
まあ、そうだろうな。
いきなり異世界だとか、スキルだとか、ステータスだとか言われてもそうすんなりと信じるわけがない。
現に俺だってこの世界に来た直後は、自分にそんな能力が宿っているなんて微塵も思わなかったわけだし。
だから、動かぬ証拠を見せることにした。
「じゃあ、証拠でも見せましょうか?」
俺は周囲を見渡して、樹高の高い木を指さした。
「蘭子先生、あの木が見えますか」
「え、えぇ……見えるけれど……」
「今から数秒であの木を登って、降りてきますから、よく見ていてくださいね」
俺の言葉に蘭子先生はぽかーんとした表情を浮かべたまま、固まっている。まあ、そりゃそうか。
俺が指さした木は、てっぺんまで十数メートルはあるだろうか。首を限界まで反らしてもてっぺんが見えないほどに高い。
しかも、あの木は幹の途中に枝が一切ない。
少なくとも素人が何の道具もなしに数秒で登れるわけがない。でも、今の俺にはそれが可能だ。
「……お、おい何だ……何をする気なんだ?」
「分からないわよ、でも……なんか黒羽君と綾峰先生が話していているみたい……」
バスの中ではクラスメイト全員が窓際に近づいてこちらを凝視している。
意識しなくとも半吸血鬼(デイウォーカー)としての鋭敏な感覚は、彼ら、彼女らの視線を敏感に感じ取ってしまう。
クラスメイト達はぼそぼそと小声で話しているようだが、窓を少し開けているおかげで、俺にはまる聞こえだ。
半吸血鬼(デイウォーカー)の聴覚を舐めるな。
だが、丁度いい。
ここであの木に登って見せれば、蘭子先生だけじゃなくクラスメイトたちにもスキルの力を知らしめることができる。
あの巨木を数秒で登り切り、さらに数秒で降りてくれば、スキルの力を証明することができる。
そして、スキルの力が証明されれば、俺の話にもかなりの信ぴょう性が生まれる。
俺は腰元のブロードソードを外すと、地面の上へと投げ捨てた。そして、首の関節を鳴らして、準備運動をしながら木へと近づいていく。
そして、
「よっ……と」
親指で手のひらを噛み千切り、操血のスキルを発動させると、木へと向かって跳躍した。そのまま木の幹に着地すると、操血のスキルを伸ばして木の幹にひっかける。それを支えに、一気に木の幹を垂直に駆けあがる。
強化された俺の脚力と、放った血液を体内に引き戻す力が合わさり、俺はぐんぐんと木の幹を駆け登っていく。
凄まじい速度で木の幹を一息に駆け抜けると、一切の減速をせずにそのまま木の葉を蹴って、木のさらに上の何もない虚空へと跳躍する。
樹上の空中へと飛び出した俺は、そこでバク宙の要領で、身を翻すと中空へと飛び出した。
「…………」
俺は空中を落下しながら、操血のスキルで操った鮮血を木の幹に引っ掛ける。そして、そのまま鮮血で木の幹を削りながら、一気に減速しながら地面の上まで滑り下りていく。
「よっ、ほっ……とっ、ととっ!?」
最後は着地の衝撃で少しよろめいてしまったが、まあ十分に及第点かな。
「……う……そ……」
茫然と呟く声が聞こえてきた。そちらを見ると、蘭子先生が唖然とした様子で俺のことを見つめていた。
いや、蘭子先生だけじゃない。
バスの中に残っていたクラスメイト達も全員が、無言のまま息を呑むように俺のことを見つめている。
ふむ、こんなに注目を浴びるなんてな。
どうやらこの曲芸もどきはクラスメイトたちの目に、信じられない異様な光景、としてしっかりと焼き付いたみたいだ。
良かった、良かった。
そんなに物珍しいものかな、こんな曲芸ごときが。
「これで……俺の言葉も新焦れてくれますかね?」
「そう……ね……未だに信じ……られ、ないけれど……。
今の黒羽君の人間離れした動きを見ると、信じざるを得ない……わね」
蘭子先生は目を何度も瞬かせながら、巨木と俺とを何度も交互に見つめている。そのまま気まづい沈黙が流れる。
俺もどう声をかけようかと迷っていると、
「すっごぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぃッ!!?」
蘭子先生の後ろから、甲高い歓声があがった。そちらを見ると、高木さんが目を輝かせながら立っていた。
「ねっ……ねっ、ねっ!!! 今のどうやったのッ!!
まるで映画みたいなカッコイイ動きだったんだけどッ!!!」
「あっ、いや……」
高木さんは俺に近づいてくると、俺の両手を握りしめて顔を近づけてくる。
その瞬間、トクンっ……と俺の中で再び衝動が脈打った。
俺はそれを感じて、反射的に後ろに下がった。
「スキルの力だよ。
こんなもの、スキルがあれば誰でもできるって、さ……」
「すきる?」
「……スキル」
俺は可愛らしく小首を傾げる高木さんに職業(ジョブ)とスキルのことを説明する。高木さんの隣では蘭子先生が、俺の説明を静かに聞いていた。
「く、黒羽……お前、凄いなっ!?」
「あの……本当に、黒羽……君なんだよね?」
二人に説明をしていると、恐る恐るといった様子でバスを降りたクラスメイト達が俺の周りに集まってきた。
気が付くと、俺はクラスメイト達全員の前で職業(ジョブ)とスキルの説明をさせられていた。
「職業(ジョブ)とスキル、ですかぁ……にわかには、信じ難いですが」
そう発言したのは運転手さんだった。
「ですが……先ほどの黒羽君の身体能力を見ると、どうにも信じざるを得ないようでしょうなぁ」
そう言うと運転手さんは自分の目の前にステータスウィンドウを表示させている。周りを見れば、他のクラスメイト達も各々が自分のステータスを表示させて一喜一憂している。
「おぉ……すげぇっ!
念じたら本当に出たぜっ! これが職業(ジョブ)かよ」
「ちょっと待ってっ! 私っ! 私の職業(ジョブ)はっ!? えっと……戦士(アサルト)なのね。
ねえ、戦士(アサルト)って凄いの?」
「俺に聞くなよ。
おぉ……っ!?
すげぇ、本当に念じればステータスが表示された。しかも、俺の職業(ジョブ)は魔術師(マジシャン)だっ!」
俺が周りのクラスメイトの様子を眺めていると、肩先をちょい、ちょい、と引っ張られた。そちらを見ると、高木さんが立っていた。
「えっとさ、ごめん。アタシのステータスを、ちょっと見て欲しいんだけど」
そういうと高木さんは目の前に彼女のステータスを表示させた。
=====================
ステータス
名前:高木麗奈(たかぎれな)
性別:女性
種族:人間
未熟(ビギナー)な白魔法使(ホワイトウィッチ)い LV1
初級魔装師(デミ・エンチャンター) LV1
生命力:9
集中力:10
筋力:4
防御:5
知性:12
魔防:3
運:8
HP:80/80
MP:200/200
物理攻撃力:60
物理防御力:75 +20
魔法攻撃力:180
魔法防御力:45 +15
クリティカル率:2%
【保有スキルポイント:20】
アクティブスキル:
ヒール LV1
キュア LV1
魔法結晶作成(クラフト・マジッククォーツ) LV1
魔法刻印(マジック・キャスティング) LV1
パッシブスキル:
取得経験値上昇 LV1 (回復魔法)
結晶強化(リーンフォース) LV1
【保有エクステンドポイント:10】
これが高木さんのステータスか。他人のステータスを見るのは初めてだ。
高木さんも俺の時と同じように初期特典として20ポイントのスキルポイントと、10ポイントのエクステンドポイントが付与されているみたいだな。
「ねっ、これって……どうしたら、良いのかな?
アタシってさ、ゲームとかあまりやらないから、さ」
高木さんはそう言うと、助けを求めるような表情で俺を見つめてきた。
「……仕方ないな」
俺は高木さんに近づこうとして、ふと立ち止まった。
待て、このまま不用意に近づいても良いのか……?
また、あの謎の衝動に襲われたら……。
そう思うと怖くて高木さんに近づけない。俺は彼女と絶妙な距離感を保ったまま、高木さんのステータスを指さした。
「まず見るべきなのは、職業(ジョブ)の欄だな。
自分がどんなタイプの職業(ジョブ)を持っているかを把握することがまず大事なんだ」
例えば、自分が【戦士(アサルト)】や【剣士(ソードマン)】などの前衛職の職業(ジョブ)を持っているのならば、【生命力】、【筋力】、【防御】辺りのパラメータを重点的に上げるべきだ。
逆に、自分が【魔術師(マジシャン)】などの後衛職の職業(ジョブ)を持っているのなら、【集中力】、【知性】、【魔防】などのパラメータを重点的に上げるのが良いと思う。
「見たところ高木さんの職業(ジョブ)は後衛職みたいだが……ちょっと良いか?」
俺は高木さんの職業(ジョブ)に鑑定のスキルを発動させる。
未熟(ビギナー)な白魔法使(ホワイトウィッチ)い
回復の魔法を得意とする下級(ノービス)職業(ジョブ)。
回復系統のスキルを豊富に習得し、仲間をサポートする補助スキルも数多く習得する。後衛から前線の仲間をサポートする戦い方を得意とする。
初級魔装師(デミ・エンチャンター)
魔法を【魔法結晶(マジック・クォーツ)】と呼ばれるアイテムに変換し、それを活用することに長けた下級(ノービス)職業(ジョブ)。
魔法結晶(マジック・クォーツ)に関連する様々なスキルを取得する。
「【未熟(ビギナー)な白魔法使(ホワイトウィッチ)い】に【初級魔装師(デミ・エンチャンター)】か……」
どうやら、高木さんの二つの職業(ジョブ)はどちらも後衛職みたいだな。
次に、彼女の職業(ジョブ)のスキルの説明を表示させる。
ヒール
説明:
HPを回復させる魔法スキル。
LV1時の一回の回復量は、100。
種別:アクティブスキル
消費MP:10
キュア
説明:
毒・麻痺・眠りの状態異常を回復させる魔法スキル。
種別:アクティブスキル
消費MP:7
魔法結晶作成(クラフト・マジッククォーツ)
説明:
魔法をキャプチャーして魔法結晶(マジッククォーツ)に変換することができる。作成した魔法結晶は砕けやすく、砕かれるとその場でキャプチャーした魔法が発動する。
種別:アクティブスキル
消費MP:なし
魔法刻印(マジック・キャスティング)
説明:
魔法結晶(マジッククォーツ)を武器や防具に刻印することができる。魔法結晶(マジッククォーツ)が刻印された武具は、魔法結晶(マジッククォーツ)にキャプチャーされた魔法を任意で発動できるようになる。
種別:アクティブスキル
消費MP:30
取得経験値上昇 (回復魔法)
説明:
回復魔法を使用した際に得られる取得経験値を増加させる。得られる経験値は、癒した傷の重軽度に比例する。
種別:パッシブスキル
消費MP:なし
結晶強化(リーンフォース)
説明:
魔法結晶(マジッククォーツ)を作成する際に、自らのMPを使用して魔法結晶(マジッククォーツ)の威力と効果範囲を強化する。
種別:パッシブスキル
消費MP:10
「ねっ……アタシの場合さ。このすきるぽいんと、って奴をどう割り振ればいいの?」
「んっ、見た感じだと後衛職の場合と同じステ振りで良いと思うが、ちょっといいか?」
俺は高木さんにヒールのスキルを使ってみて欲しいとお願いした。
「分かった。ええっと……ヒールっ!」
高木さんが叫ぶと、彼女の手元に緑色の光が輝いた。光は少しの間だけ虚空を彷徨って、俺の身体に吸い込まれていき、俺の身体全体が緑色の光に包まれる。
「へぇ……これがヒールのスキルなのか」
残念ながら今の俺はHPが減っていないからそのスキルの効果の程を知ることはできないが、それでも緑色の光に包まれていると身体の奥底から力が漲ってくるような感覚がある。
「じゃあ、次だ。
魔法結晶作成(クラフト・マジッククォーツ)のスキルを使ってみてくれ」
「う、うん。えっと……えいっ!!」
高木さんは可愛らしい掛け声と共に、スキルを発動させた。
だが、いつまで待ってみても何も起こらない。
「高木さん?」
「う、うん。なんか、目の前に半透明の画面が出てきちゃったんだけど……」
話を聞くと、どうやら魔法結晶作成(クラフト・マジッククォーツ)のスキルはこの状態でさらに魔法を発動させる必要があるらしい。
「高木さん、もう一度ヒールの魔法をお願い」
「う、うんっ! えっと……ヒ、ヒールっ!」
高木さんが叫ぶと彼女の手のひらに緑色の魔法光が集まっていく。けれど、先ほどと違い、今回は緑色の魔法光が高木さんの手のひらの中に集束していく。
やがて、彼女の手のひらの上に緑色の綺麗な結晶が握られていた。
「ほへぇ……すっごい。綺麗……」
「これが魔法結晶(マジッククォーツ)か。ちょっと、触ってもいいかな?」
俺は高木さんに許可を取ると、彼女の手のひらの上にある緑色の結晶を手に取った。
軽い。
見た目とは違って、まるで綿を手に持っているかのように軽い。俺は手のひらの中で結晶の感触を確認すると、そのまま結晶を握り潰した。
「えっ、ちょ――」
「ふむ、なるほど……」
緑色の結晶を握り潰すと、俺の手の中から緑色の魔法光が広がっていく。
「確かに強度はかなり脆いな。それで握り潰すと中に込められた魔法が発動するわけか」
それと普通に魔法を発動させるよりも、魔法結晶(マジッククォーツ)を握り潰した方が魔法の威力が上がっている。
恐らくは、結晶強化(リーンフォース)のパッシブスキルの効果だな。
「じゃあ、今度はこっちを頼む」
今度はヒールの魔法ではなく、俺の闇(ダーク)の弾(ショット)の魔法を魔法結晶(マジッククォーツ)にしてもらう。
すると、今度は闇色の黒い結晶が出来上がった。
「ふぅん? 結晶化する魔法の種類によって色も形も変わるわけか」
先色のヒールの魔法結晶(マジッククォーツ)は美しい緑色のひし形の綺麗な結晶だった。でも、いま俺の手元にある黒い結晶はどこか禍々しく形もでこぼこで、いびつだ。
「じゃあ、これを魔法刻印(マジック・キャスティング)というスキルで、これにエンチャントしてくれないか?」
俺は高木さんに鋼のブロードソードと黒い闇色の結晶を手渡した。高木さんは少し戸惑っているようだが、恐る恐るスキルを発動させる。
すると、黒い闇色の結晶が鋼のブロードソードの中へと吸い込まれていった。
高木さんから鋼のブロードソードを受け取る。
「ふむ?」
軽く振りまわしてみるが、見た目は何も変わらないが……。
「なんか、手ごろな的(まと)はないかな」
俺は辺りをキョロキョロと見渡した。すると、少し離れた場所で数人のクラスメイト達が木の幹に向かってスキルを撃っていた。
「オラっ! 喰らえ……ファイアーボールッ!!」
「ハハっ! やるじゃないかッ! でも、俺のスキルはもっと強いぜ?
喰らえ、空圧弾(エアフォース)ッ!!」
数人のクラスメイト達が、魔法系のスキルを木の幹に撃ち込み、その度に木が大きく揺れて、木の幹の表面が抉られていく。
「ちょっと、良いか?」
「あ?」
「なんだ、黒羽かよ。何だ、お前も魔法の試し撃ちを……」
俺は喋りかけてくるクラスメイト達を無視して、手に持っていた鋼のブロードソードの切っ先を木々に向ける。
「闇(ダーク)の弾(ショット)」
魔法の名を呟くと、ブロードソードの切っ先に闇(ダーク)の弾(ショット)の黒い球体が出現して、木々に向かって射出される。
――――ッ!!!
射出された黒い球体は、木の幹にぶつかると、その幹を一瞬で粉砕した。巨大な木を粉砕した闇(ダーク)の弾(ショット)の魔法はそのままの勢いでそのすぐ後ろにあった木に激突して、その幹を大きく抉り抜いた。
一息遅れて、幹を砕かれた巨木がメキっ、メキっ、と音を立てて地面の上に倒れ込んでいった。
「へぇ……確かに魔法結晶のままより、武器にエンチャントした方が威力が高いな」
ただ、どうやら武器にエンチャントされた魔法は残弾数があるみたいだ。一発撃ったら、剣の上に表示されていた数字が6から5へと減っている。
「嘘……だろ……」
「ぉ……ぉぉ、ぉ」
と、俺の真横から呻くような声が聞こえてきた。そちらを見ると、今さっきまで魔法の試し撃ちをしていたクラスメイト達が、茫然とした様子で粉砕された木を眺めている。
やがて、彼らはギギギ……とさび付いた機械のような動きでこちらを見つめてきた。
「あぁ、悪い。邪魔したな」
数人のクラスメイト達の唖然とした視線を背中に受けながら、俺は高木さんのところへと戻った。
「高木さん。君のスキルは大体把握した。まあ、典型的な後衛職と思っていいと思う。だから……って、高木さん?」
高木さんは唖然とした様子で口を半開きにしながら、俺の顔を見つめている。いや、彼女だけじゃなくて良く見れば周りにいたクラスメイト達が信じられないものでも見る目で俺を見つめていた。
「く、くく、黒羽君……い、今の……」
「今の? あぁ、俺の魔法系のスキルだけど?」
「じゃなくてっ!? 何なの今の……おっきな木が一瞬で粉々になっちゃったんだけどっ!?」
そこでようやく高木さんたちが何に驚いているのかに気づいた。
そうか。
彼女たちの前で俺の攻撃系のスキルを見せるのは初めてだったか。
確かに、この世界で目覚めたばかりの彼女たちと違って俺は職業(ジョブ)のレベルも少し高いし、スキルだっていくつかカンストしている状態だ。
だから、彼女たちと俺ではスキルの威力が違う。
「えっと……ほら、俺のステータスを見てみなよ。少し高いだろ? だから、スキルの威力が高いのも当たり前の話――」
俺は高木さんに自分のステータスを見せた。すると、高木さんは目を見開いたまま固まってしまった。
……あれ? なんか、反応が予想していたのと、全然違っ……、
「えええええええええええええぇぇぇぇぇええぇぇぇぇぇっ!!?」
俺のステータスを見た高木さんが絶叫した。その声で、クラウスメイトたち全員の視線が再び俺に集まる。
「すっごっ!! 何このステータスっ!!! 私のより全然高いじゃんよっ!!?」
高木さんは興奮した様子で俺の身を乗り出して、俺のステータスを食い入るように魅入る。
「それに黒羽君。職業(ジョブ)を四つも持っているのっ!? スキルもほぼLV5しかないしっ!!?」
高木さんの言葉を聞いて、他のクラスメイト達も俺の周りに集まってきた。そして、皆が我先にと俺のステータスを覗いてくる。
「はっ……? えっ……はあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「ちょっ、すごっ!! 黒羽君だけ何でこんなに職業(ジョブ)とスキルのレベルが高いのっ!?」
「見せて、見せてっ!! うおおおおぉおぉぉぉぉぉっ!!
凄いじゃんっ! 黒羽っちたら、化け物じゃんっ!!」
クラスメイト達は俺のステータスを覗いては興奮した様子で詰め寄って来た。
「ねえっ! 何でっ!? 何で、黒羽っちだけそんなにステータスが高いのっ!?」
「そうだっ! おい、黒羽。俺にも教えろ、何でお前だけこんなにステータスが高けぇんだよっ!!
そういうアイテムか何かあるのかっ!!」
「えっと、あの……ちょっ……」
気が付くと、俺はクラスメイト達に囲まれてもみくちゃにされていた。いや、だからね……。
これは別にズルとかじゃなくて、ただ単に俺が四日も前にこの世界に来ていただけ……。
俺は弁明しようと口を開こうとするが、興奮したクラスメイトたちにもみくちゃにされて弁論の余地すら与えられない。
いや、ちょっと待って。
やっ、あの、ちょっ……、
「だああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
テメェら、ちっとは俺の話を、聞けぇぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇっ!!!」
俺は思い切り息を吸い込み、そして絶叫した。
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