上 下
48 / 55
2章 呪いの首輪と呪いのおパンツ

呪いのおパンツの手掛かり④

しおりを挟む
意識を飛ばしてるリビアを背負って塩まみれで宿に戻ると、それを見たジョニーが発狂した。

「何で塩まみれになってるの!?」
「あ、そこはリビアじゃないのね」
「どうせ変なことでもしてきみに怒られたんだろ」

あながち間違ってないから苦笑いするしかなかった。

「まったく、何をしたんだか。ほら、きみもキレイにしておいで」
「ほーい」

塩まみれの体を流しにシャワーへ。部屋に戻るとジョニーはまだソファーに座っていた。髪が濡れたままだけど隣に座る。

「収穫はあった?」
「んー、何かいろいろ」

おじいちゃんが教えてくれたことをジョニーに話した。うまく伝えられるか不安だけど、そこはさすがジョニーである。私のチグハグな話をうまく整理しながら話を聞いてくれた。

「依頼者を探した方が早いかもね。それとそれを作れる呪術者」
「うまくいくかな」
「さぁ、どうだろう。でも可能性はゼロじゃないだろう?また明日、お店に行くのならもっと詳しい話を聞かないと」
「……うーん、……うん」
「行きたくないの?」

行きたくない、と言えば、そうかもしれない。思い出したくない、助けてくれと、知らない私がまた嘆く。きっとあの不思議な感覚に陥ると思うし、やっぱり自分と向き合うにも、その覚悟が私にはない。

「私がもう一人いるみたい」
「もう一人?」
「自分を知るのが怖いの。きっとろくな話じゃないって私でもわかる。もう一人の私も嫌だって泣いてる」
「ハル」

どうやら震えてたらしく、ジョニーが背中を擦ってくれた。冷えた手が服越しに伝わる。素直になれる、優しい手だ。

「分かってるよ、向き合わないと前に進めないし、【呪いの首輪】も【呪いのおパンツ】も外せないって。でも、怖いよ」
「……ハル」
「ジョニー、怖いことから逃げるのはダメなことなの?」

私の嘆きにジョニーは答えなかった。ただずっと背中を擦ってくれた。私は気づいてる。その答えは私が出すべきであって、ジョニーが決めることじゃない。でも、甘えずにいられない。

「ねぇ、答えてよ」

ジョニーは背中を擦るのをやめて、肩に手を回しそっと抱き寄せてきた。その答えのない優しさに寄り掛かる。

「ジョニーは優しいね」
「そんなことないよ。これしか思い付かないだけ」
「十分優しい答えだよ」
「そう?」
「そうだよ。だからついつい甘えちゃう」
「いいよ、いっぱい甘えて。甘えたなきみも好きなんだ」
「じゃ、甘えよー!」

ジョニーの太ももに頭を預けた。濡れた髪が服を湿らせても、文句を言わずに、嬉しそうに頭を撫でてくる。それが堪らなく心地よくて、自然と喉がゴロゴロ鳴いた。

「優しいのはきみも同じだよ」
「そうでしょ?私ってば女神だから」
「そのワガママで図太い無神経な性格も二癖くらい味があっていいと思う」
「ねぇねぇ、ジョニーさん。それはただの悪口だから褒めるならキチンと褒めて」
「んー、宇宙一かわいいよ」
「アイス食べたいな」
「褒めたらそれ?」

鼻を摘まんできたジョニーにクスクス笑うと、「そういやリビアに何されたの?」と笑顔で質問された。その笑顔と穏やかな空気に釣られて、正直にキスされたとぶちまけた。しまった、リビアの運命分岐が!と焦ったのもつかの間、ジョニーは笑顔を崩さずに聞いてきた。

「そうだ、アイスキャンディを買ってあるんだけど食べる?」
「マジで!?食べる!」

どす黒い雰囲気を纏ったジョニーに気づかない私は、アイスという単語にテンションがうなぎ登り。ジョニーがアイスを取りに立ち上がったあとも、クッションを抱えながら上機嫌にゴロゴロしていた。

「はい、甘えん坊さん。ミルク味のアイスキャンディだよ。あーん、する?」
「あーーん!」

クッションで両手が使えないから代わりにアイスを持って口に近づけてきた。それを頬張ると、口いっぱいに甘いミルクの味が染み渡る。

「おいしい?」
「ん!」

でも人に食べさせるのは難しいらしい。たまに喉奥までグッと押し込まれる。

「ぐぅ」

苦しい声が出て、「ごめん!」と謝りながらジョニーがアイスを引っこ抜く。

「らいじょーぶだよ」

オドオドとした手つきでアイスを持ってきたかと思えば、舌が届く微妙な距離にアイスを置いた。舌を伸ばしてペロペロすると、今度は口に含ませて、そしてまた喉奥にぐっと押し込んでくる。思い切り噛み付きたいけど、それをしようとすると引っこ抜かれてしまう。

めちゃくちゃ焦れったい。でも食べさせてくれてるし。甘えたいと言ったのは私で、その流れでコレだし。

荒くなる息をそのままに、必死にペロペロしてアイスを食べて、ようやく違和感を感じた。

こういうのをリビア御愛用のビデオで見たことがある。女の人が男の人のアレを咥えてチュパチュパ的なやつ。……これチュパチュパしてるっぽくない?気のせい?私の考えすぎ?本物でチュパチュパ的なやつをしたことがないからわかんないけど……

でもまさかジョニーがチュパチュパ……ナイナイ、それはナイ。優しいジョニーが変態的行為に走るとか、絶対にナイナイ。

「はぁ、必死に舐めてる。上手だね、かわいいね。涙目になってるけど、疲れちゃった?」
「ん」
「でもせっかく買ってきたんだから、頑張って食べてね。ほら、こっちも舐めて。このままだと垂れちゃうよ」
「ふぁい」
「うん、上手。ねぇ、もっと舌を出して……そうそう、舐め上げるように…、もうちょっと、……口に含んで」

わざとじゃないと思う。思いたい。思わせて。ジョニーがこんなことを……いや、やっぱり違う。ナイナイ。認めナイ。絶対に認めるものか。

でも一応、リビアが目を覚ましたら……

「ハルは舐めるのも上手なんだね。体が元に戻ったらやりたいことリストに入れとくね。……絶対に舐めてもらうから」

ジョニーが変態になってしまった件について相談してみようと思う。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

もういいです、離婚しましょう。

杉本凪咲
恋愛
愛する夫は、私ではない女性を抱いていた。 どうやら二人は半年前から関係を結んでいるらしい。 夫に愛想が尽きた私は離婚を告げる。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

処理中です...