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2章 呪いの首輪と呪いのおパンツ
容赦はせぬぞ②
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部屋に戻るとリビアはベッドで寝転んで本を読んでいた。
「おかえり。遅かったじゃん」
「ただいま。ちょっと道に迷っちゃって」
「そ。んで、ガムは?」
紙袋に入ったゴムを渡そうとベッドに近づき差し出したけど、あることにようやく気づいて紙袋を背中に隠した。
リビアのおちゅんちゅんは、ほんとにMサイズなのだろうか?
我が手の中にある愛と優しさを具現化したMサイズのコンドーム。もしリビアがMサイズではなくSサイズならば、彼の心の中で世紀末が勃発。愛と優しさでできたコンドームが悲しみと憎しみに染まり、
「げへへ、俺はSサイズだぜ。S男なんだぜ。もう避妊なんて知らねぇ!だって俺はSだからぁ!ヒャッハーっ!」
と、こんな感じのゴムなし人生を歩ませてしまうことになるのではないだろうか。ヒャッハー化してしまうほど、彼の心はズタボロになってしまうのではないか。
「くそッ、どうしてこんなことに!どうせなら三種類用意すれば良かった!」
でも、嘆いてももう遅い。リビアは今か今かとゴムを待っている。
「そういうのいいから早く」
「それは出来ぬ相談だ。コレは我が手の手中にある。コレを渡してほしくば、我が拳と勝負するがいい!」
「あーハイハイ、拳と勝負ね」
「ぎゃーっ!?何であんたが私のミニハンマー持ってんのよ!」
「すばしっこいネコめ」
遠慮なくミニハンマーを振り回すリビアはやっぱりS男だ。おちゅんちゅんのサイズがSだからこんな性格になったんだ。もっと手加減してよ、酷いよ。
でもリビアは「こいつがある限り負ける気がしねぇ」と言ってベッドに腰掛けた。私も「ミニハンマーに勝てる気がしねえ」と呟いた。
武器の有無で、ここまで勝負が決まってしまうとは……。仕方ない、今回は潔く負けを認めてゴムを差し出そう。そして世紀末勃発してヒャッハーになったリビアを指差して笑ってやる。それが私に出来る唯一の償いだ。
「わかったよ、あげるよ」
「あげるも何もそれを買ってこいって頼んだの俺なんだけど。何なの間違えたの?」
「……怒らない?」
「なるほど、間違えた上に俺が怒るような物を買ってきたわけね。別にそんくらいで怒んねぇよ」
「……絶対に?」
「絶対に。だからほらさっさと渡せよ」
その言葉を信じて紙袋を渡す。
「つーかさっきからめんどくせぇよ。どうせ味を間違えたとかだろ」
紙袋から出てきたのは、うすうす0.01ミリと書かれた一箱のコンドーム。リビアはそれを見て、私を見て、もう一度それを見た。
「ガムがゴムになってる!?何で!?何がどうなってガムがゴムになんの!?どんな錬金術使ったの!?」
「ごめんね、メンソール系がいいって言ってたのに普通のやつを買っちゃったの」
「そこがごめんのポイントか!つかどこでどうなってキシリトールがメンソールになってんだよ!何かもう斜め上過ぎて処理すんのめんどくせぇよ!」
「でももう一つ、ごめんすることがあるの」
「まだあんの!?」
「Mサイズ買ってごめんね。リビアはSサイズなのにね。ブカブカだね、それMサイズだから」
「おん」
真っ白に染まったリビア。これでヒャッハーになったリビアを笑ってやれると思ったのもつかの間、リビアがジト目で見てきた。その目に光は灯ってなかった。
「こんな物をプレゼントするってことは、セックスに喜んで合意するってことだよな?言い逃れは絶対に出来ねぇと俺は思うんだけど」
「……ゴホンッ。……お猫様に愛や優しさは不要!容赦はせぬぞ!」
よし、この話は終わり!ってことで立ち去ろうとしたら手首を捕まれた。そして思い切り引っ張られベッドにダイブ。
これはヤバイと思ってスサササァと逃げようとしたけど、リビアの動きの方が早く、私の手首を一つにまとめてガッチリフォールド。お腹の上に股がって体をガッチリフォールド。コンドームを指で挟んで、無表情で見下ろしてきた。
クソ、やられた!ゴムをプレゼントするってそーいう事だったのか!思い付きもしなかったぜ!
「男にこんなモノをプレゼントするってことは、そういうことだぜ」
「我は知らぬぅ!故に無罪ナリィ!」
「知らぬ存ぜぬで逃げようってワケね。でもダメ。もうダメ。今回ばかりはお前に甘い俺でも見逃せねぇわ」
「それで甘いの?」
「はいはい、次は話題を変えて逃げるつもりね。でも、これ以上の抵抗は諦めろ。先にスイッチを押したのはお前」
「すみません、何のスイッチでしょーか?」
「そうだな、例えるなら……童貞が狼になっちまうスイッチってヤツだ」
そう言って、コンドームをビリッと口で破った。苦笑うしかなかった。
「もしかして……容赦はせぬぞ?」
「答えは、yes。童貞の理性で遊び過ぎ。絶対に、今回ばかりは逃がさねえ。覚悟しろよ」
「ぎゃあああああああ!!」
お猫様の叫び声が宿に響き渡った。すぐに「どうしたの!?」と、ジョニーが助けに来てくれた。
「……せっかくのチャンスだってのに邪魔しやがって。次は口を塞いでやらねぇと」
リビアはジョニーに聞こえない小さな声で反抗的なことを口にした。
お猫様は学んだ。
コンドームで遊んではいけないこと、リビアはヒャッハーではなく狼さんになること。
それと……
「ねぇ、ハル。そろそろぼくも本気で怒らないとダメみたいだね。ほんとに何回言っても学ばないんだもの。いい加減さ、堪忍袋の緒が切れるよ」
「ハンマーだけは!ハンマーだけは!どうかお許しください!」
「正座」
「……え?」
「出来ないのなら」
「……なら?」
「うんめいぶんきぃ~」
「すんませんでしたあああ!!」
ジョニーのブキ切れ説教は世界で一番恐ろしいものだと、ようやく学んだ日でした。
「おかえり。遅かったじゃん」
「ただいま。ちょっと道に迷っちゃって」
「そ。んで、ガムは?」
紙袋に入ったゴムを渡そうとベッドに近づき差し出したけど、あることにようやく気づいて紙袋を背中に隠した。
リビアのおちゅんちゅんは、ほんとにMサイズなのだろうか?
我が手の中にある愛と優しさを具現化したMサイズのコンドーム。もしリビアがMサイズではなくSサイズならば、彼の心の中で世紀末が勃発。愛と優しさでできたコンドームが悲しみと憎しみに染まり、
「げへへ、俺はSサイズだぜ。S男なんだぜ。もう避妊なんて知らねぇ!だって俺はSだからぁ!ヒャッハーっ!」
と、こんな感じのゴムなし人生を歩ませてしまうことになるのではないだろうか。ヒャッハー化してしまうほど、彼の心はズタボロになってしまうのではないか。
「くそッ、どうしてこんなことに!どうせなら三種類用意すれば良かった!」
でも、嘆いてももう遅い。リビアは今か今かとゴムを待っている。
「そういうのいいから早く」
「それは出来ぬ相談だ。コレは我が手の手中にある。コレを渡してほしくば、我が拳と勝負するがいい!」
「あーハイハイ、拳と勝負ね」
「ぎゃーっ!?何であんたが私のミニハンマー持ってんのよ!」
「すばしっこいネコめ」
遠慮なくミニハンマーを振り回すリビアはやっぱりS男だ。おちゅんちゅんのサイズがSだからこんな性格になったんだ。もっと手加減してよ、酷いよ。
でもリビアは「こいつがある限り負ける気がしねぇ」と言ってベッドに腰掛けた。私も「ミニハンマーに勝てる気がしねえ」と呟いた。
武器の有無で、ここまで勝負が決まってしまうとは……。仕方ない、今回は潔く負けを認めてゴムを差し出そう。そして世紀末勃発してヒャッハーになったリビアを指差して笑ってやる。それが私に出来る唯一の償いだ。
「わかったよ、あげるよ」
「あげるも何もそれを買ってこいって頼んだの俺なんだけど。何なの間違えたの?」
「……怒らない?」
「なるほど、間違えた上に俺が怒るような物を買ってきたわけね。別にそんくらいで怒んねぇよ」
「……絶対に?」
「絶対に。だからほらさっさと渡せよ」
その言葉を信じて紙袋を渡す。
「つーかさっきからめんどくせぇよ。どうせ味を間違えたとかだろ」
紙袋から出てきたのは、うすうす0.01ミリと書かれた一箱のコンドーム。リビアはそれを見て、私を見て、もう一度それを見た。
「ガムがゴムになってる!?何で!?何がどうなってガムがゴムになんの!?どんな錬金術使ったの!?」
「ごめんね、メンソール系がいいって言ってたのに普通のやつを買っちゃったの」
「そこがごめんのポイントか!つかどこでどうなってキシリトールがメンソールになってんだよ!何かもう斜め上過ぎて処理すんのめんどくせぇよ!」
「でももう一つ、ごめんすることがあるの」
「まだあんの!?」
「Mサイズ買ってごめんね。リビアはSサイズなのにね。ブカブカだね、それMサイズだから」
「おん」
真っ白に染まったリビア。これでヒャッハーになったリビアを笑ってやれると思ったのもつかの間、リビアがジト目で見てきた。その目に光は灯ってなかった。
「こんな物をプレゼントするってことは、セックスに喜んで合意するってことだよな?言い逃れは絶対に出来ねぇと俺は思うんだけど」
「……ゴホンッ。……お猫様に愛や優しさは不要!容赦はせぬぞ!」
よし、この話は終わり!ってことで立ち去ろうとしたら手首を捕まれた。そして思い切り引っ張られベッドにダイブ。
これはヤバイと思ってスサササァと逃げようとしたけど、リビアの動きの方が早く、私の手首を一つにまとめてガッチリフォールド。お腹の上に股がって体をガッチリフォールド。コンドームを指で挟んで、無表情で見下ろしてきた。
クソ、やられた!ゴムをプレゼントするってそーいう事だったのか!思い付きもしなかったぜ!
「男にこんなモノをプレゼントするってことは、そういうことだぜ」
「我は知らぬぅ!故に無罪ナリィ!」
「知らぬ存ぜぬで逃げようってワケね。でもダメ。もうダメ。今回ばかりはお前に甘い俺でも見逃せねぇわ」
「それで甘いの?」
「はいはい、次は話題を変えて逃げるつもりね。でも、これ以上の抵抗は諦めろ。先にスイッチを押したのはお前」
「すみません、何のスイッチでしょーか?」
「そうだな、例えるなら……童貞が狼になっちまうスイッチってヤツだ」
そう言って、コンドームをビリッと口で破った。苦笑うしかなかった。
「もしかして……容赦はせぬぞ?」
「答えは、yes。童貞の理性で遊び過ぎ。絶対に、今回ばかりは逃がさねえ。覚悟しろよ」
「ぎゃあああああああ!!」
お猫様の叫び声が宿に響き渡った。すぐに「どうしたの!?」と、ジョニーが助けに来てくれた。
「……せっかくのチャンスだってのに邪魔しやがって。次は口を塞いでやらねぇと」
リビアはジョニーに聞こえない小さな声で反抗的なことを口にした。
お猫様は学んだ。
コンドームで遊んではいけないこと、リビアはヒャッハーではなく狼さんになること。
それと……
「ねぇ、ハル。そろそろぼくも本気で怒らないとダメみたいだね。ほんとに何回言っても学ばないんだもの。いい加減さ、堪忍袋の緒が切れるよ」
「ハンマーだけは!ハンマーだけは!どうかお許しください!」
「正座」
「……え?」
「出来ないのなら」
「……なら?」
「うんめいぶんきぃ~」
「すんませんでしたあああ!!」
ジョニーのブキ切れ説教は世界で一番恐ろしいものだと、ようやく学んだ日でした。
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