21 / 55
2章 呪いの首輪と呪いのおパンツ
拾われたネコと呪いのおパンツ⑥
しおりを挟む
【呪いの首輪】【呪いのおパンツ】
ここまでくると平常心が保てなくてソファーの上で丸まってしくしくと泣いた。泣くことしか出来なかった。
「【呪いの首輪】に【くそエロい呪いのパンツ】に【半猫半人間】か。三つもあんぞ、お前の謎」
二つじゃなかった事実に頭を抱えた。
「まっ、俺たちも呪われてるしさ、呪われてる者同士、仲良く暮らそうぜ!」
明るく言われてもちっとも明るくなれない話題を振られて、黒髪少年の顔を見た。
「こいつが、あー……その、こいつね」
こいつと指差した相手はゾンビ少年だ。
「呪われてるんだ。だからこんな姿になっちまった」
「……呪われてる?」
呪われたってよりも、この世に未練があって死に戻ってきたって感じのお姿なんだけど。呪いのホラーそのものだよ、そのお姿。
でも【呪いの首輪】や【呪いのおパンツ】をつけた【半猫半人間】が居るくらいだもの、【呪われた人間】が居てもおかしくない。どっちかっていうと私の方が【呪われた人間】に近い気もする。……ははっ、なるほどな、そーいうことか。
「さぁ、熱い握手を交わそうではないか!我が同士よ!」
ゾンビ少年に手を差し出した。
「……同士?」
「きっと我らは、遠い昔に滅ぼされた【呪われた種族】に違いない」
「……【呪われた種族】?」
「もう、そういう設定にするの!ほら、さっさと握手するよ!」
無理やりゾンビ君の手を取って、ぐっと握手をした。ひやっと冷たい肌から【生】を感じないけど、「なにそれ変なの」と笑うゾンビ少年の顔は【死】を感じない。生きてるゾンビだ。
「改めてよろしくね、ゾンビ少年」
「こちらこそよろしくね。でもぼくの名前はジョバンニュだよ。ジョニーって呼んでくれると嬉しいな」
「ジョバンニュのジョニーね!」
「えへへ、かぁわいい」
ジョニーは間違いなくネコ好きだ。ルンルン気分でまた耳を触り始めた。さっきと違って良きよ、良き。触り方が上手いもの。ゴロゴロ鳴いちゃう。
「ってことで一緒に暮らすことが決まったし、次はルールを決めたいと思います!」
「ルールゥ?んなもん、ご主人様(仮)である俺に従え。それ以外にない」
「リビアには近づいたらダメだよ。特に夜は。あれはむっつり隠れ狼だから何をされるか分かんないよ」
「何もしねぇよ!俺だって誰でもいいわけじゃねぇんだぞ!つーか、どんだけ犯罪者に見られてんの、俺!」
「ついさっきのこと忘れた?……ギンギンだったくせに」
「あれはっ!生理現象だっつーの!」
「さっきから何を言ってるの?狼ってなに?噛みつかれるの?ギンギンって何?」
ゴロゴロ鳴きながらジョニーに質問。でもジョニーの手が止まったから、閉じてた目を開けた。真顔のジョニーがそこにいた。
「ごめんね、セクハラするつもりはないんだけど……セックスって知ってる?」
「セックス?なにそれ」
「……ペニスって知ってる?」
「ペ?ううん、知らない」
「キスは?」
「うーんと、【特別の証】だったと思う」
「赤ちゃんはどうやってできる?」
「それは知ってるよ!コウノトリさんが運んでくれるの!」
私の答えに二人が頭を抱えた。
「壊滅的だな」
「ねぇリビア、飼い主の性癖が明るみに出てほんと心苦しいんだけど」
「性的な知識は一切与えずに、くそエロいパンツを履かせて遊んでる時点で、ろくでもねえ飼い主っつーのは理解した」
「最低最悪の変態くそ野郎だね」
「ああ、同じ男として軽蔑する」
ーー違う、わたしじゃない!性的知識を与えなかったのは認めるが、それ以外はわたしじゃないんだ!信じてくれ!
耳の奥の方で何だか懐かしい声が聞こえた気がするが気のせいだろう。なんせ私は記憶喪失中だ。
「男女が同じ屋根の下に暮らすんだもの、これは絶対に教えるべきだと思う」
「俺が!?」
「ううん、ぼくが教えるよ。リビアに任せたら実技までしそうだし」
「するわけねぇだろ!俺をこいつの飼い主と一緒にするな!」
ーーあああ!違う!違うんだああ!
ーーやっぱり気色の悪いエロオヤジのやることは……心の底から軽蔑する。
また何か聞こえたけど、ジョニーがぽんぽんと頭を軽く撫でたから意識がそれた。
「待っててね」
ジョニーはおもむろにカバンを漁ると、その中から本を数冊取り出した。「な!?」と驚き焦るリビアを無視して、それを私に差し出した。
「これで勉強しようね」
「なにこれ」
「リビアが厳選したエッチな本だよ」
本の中を見ると、女の人と男の人が裸で密着している。なぜかズキンと心が傷んだ。痛くて、怖くて、でも嬉しくて。
あのとき、逞しい体に手を回したの。
溶けそうなほどの体温を感じながら、幸せいっぱいの眠りに就いたの。
誰だっけ?
ソノヒトハダレ?
「 」
喉から出た音は無だった。
呼びたいのに、名前がわからない。
わからない。
ワカラナイ。
アカニウモレル、アノヒト
「……あ、れ」
ポロポロと涙が出てくる。慌ててジョニーが涙を拭いてくれた。
「ごめんね、怖かったね」
「ちがう、の。これ、しってるの。しらないのに、しってる……」
「うん、大丈夫だよ。もう、大丈夫」
よしよしと頭を撫でてくれるジョニーの優しさに抱きついた。
これ以上、考えたくない。
これ以上、思い出したくない。
怖い。
アカイの、コワイ。
「マジで正真正銘の変態くず野郎じゃねぇか」
「これは何がなんでも返せないね」
「ったりまえだろ。……おい、猫!」
涙をそのままにリビアを見た。キッと睨んでくるから怖くてジョニーの服を握りしめた。
でも、違った。
「今日から俺たちが家族だかんな!だから安心して大いに笑え!泣かれると……なんつーか、困るんだよ!飼い主を困らすな!これは命令だかんな!」
その不器用な優しさにまた涙が出てきた。
でも涙を拭いて二人に向き合った。
「ありがとう」
感謝の言葉と笑顔とともに。
ここまでくると平常心が保てなくてソファーの上で丸まってしくしくと泣いた。泣くことしか出来なかった。
「【呪いの首輪】に【くそエロい呪いのパンツ】に【半猫半人間】か。三つもあんぞ、お前の謎」
二つじゃなかった事実に頭を抱えた。
「まっ、俺たちも呪われてるしさ、呪われてる者同士、仲良く暮らそうぜ!」
明るく言われてもちっとも明るくなれない話題を振られて、黒髪少年の顔を見た。
「こいつが、あー……その、こいつね」
こいつと指差した相手はゾンビ少年だ。
「呪われてるんだ。だからこんな姿になっちまった」
「……呪われてる?」
呪われたってよりも、この世に未練があって死に戻ってきたって感じのお姿なんだけど。呪いのホラーそのものだよ、そのお姿。
でも【呪いの首輪】や【呪いのおパンツ】をつけた【半猫半人間】が居るくらいだもの、【呪われた人間】が居てもおかしくない。どっちかっていうと私の方が【呪われた人間】に近い気もする。……ははっ、なるほどな、そーいうことか。
「さぁ、熱い握手を交わそうではないか!我が同士よ!」
ゾンビ少年に手を差し出した。
「……同士?」
「きっと我らは、遠い昔に滅ぼされた【呪われた種族】に違いない」
「……【呪われた種族】?」
「もう、そういう設定にするの!ほら、さっさと握手するよ!」
無理やりゾンビ君の手を取って、ぐっと握手をした。ひやっと冷たい肌から【生】を感じないけど、「なにそれ変なの」と笑うゾンビ少年の顔は【死】を感じない。生きてるゾンビだ。
「改めてよろしくね、ゾンビ少年」
「こちらこそよろしくね。でもぼくの名前はジョバンニュだよ。ジョニーって呼んでくれると嬉しいな」
「ジョバンニュのジョニーね!」
「えへへ、かぁわいい」
ジョニーは間違いなくネコ好きだ。ルンルン気分でまた耳を触り始めた。さっきと違って良きよ、良き。触り方が上手いもの。ゴロゴロ鳴いちゃう。
「ってことで一緒に暮らすことが決まったし、次はルールを決めたいと思います!」
「ルールゥ?んなもん、ご主人様(仮)である俺に従え。それ以外にない」
「リビアには近づいたらダメだよ。特に夜は。あれはむっつり隠れ狼だから何をされるか分かんないよ」
「何もしねぇよ!俺だって誰でもいいわけじゃねぇんだぞ!つーか、どんだけ犯罪者に見られてんの、俺!」
「ついさっきのこと忘れた?……ギンギンだったくせに」
「あれはっ!生理現象だっつーの!」
「さっきから何を言ってるの?狼ってなに?噛みつかれるの?ギンギンって何?」
ゴロゴロ鳴きながらジョニーに質問。でもジョニーの手が止まったから、閉じてた目を開けた。真顔のジョニーがそこにいた。
「ごめんね、セクハラするつもりはないんだけど……セックスって知ってる?」
「セックス?なにそれ」
「……ペニスって知ってる?」
「ペ?ううん、知らない」
「キスは?」
「うーんと、【特別の証】だったと思う」
「赤ちゃんはどうやってできる?」
「それは知ってるよ!コウノトリさんが運んでくれるの!」
私の答えに二人が頭を抱えた。
「壊滅的だな」
「ねぇリビア、飼い主の性癖が明るみに出てほんと心苦しいんだけど」
「性的な知識は一切与えずに、くそエロいパンツを履かせて遊んでる時点で、ろくでもねえ飼い主っつーのは理解した」
「最低最悪の変態くそ野郎だね」
「ああ、同じ男として軽蔑する」
ーー違う、わたしじゃない!性的知識を与えなかったのは認めるが、それ以外はわたしじゃないんだ!信じてくれ!
耳の奥の方で何だか懐かしい声が聞こえた気がするが気のせいだろう。なんせ私は記憶喪失中だ。
「男女が同じ屋根の下に暮らすんだもの、これは絶対に教えるべきだと思う」
「俺が!?」
「ううん、ぼくが教えるよ。リビアに任せたら実技までしそうだし」
「するわけねぇだろ!俺をこいつの飼い主と一緒にするな!」
ーーあああ!違う!違うんだああ!
ーーやっぱり気色の悪いエロオヤジのやることは……心の底から軽蔑する。
また何か聞こえたけど、ジョニーがぽんぽんと頭を軽く撫でたから意識がそれた。
「待っててね」
ジョニーはおもむろにカバンを漁ると、その中から本を数冊取り出した。「な!?」と驚き焦るリビアを無視して、それを私に差し出した。
「これで勉強しようね」
「なにこれ」
「リビアが厳選したエッチな本だよ」
本の中を見ると、女の人と男の人が裸で密着している。なぜかズキンと心が傷んだ。痛くて、怖くて、でも嬉しくて。
あのとき、逞しい体に手を回したの。
溶けそうなほどの体温を感じながら、幸せいっぱいの眠りに就いたの。
誰だっけ?
ソノヒトハダレ?
「 」
喉から出た音は無だった。
呼びたいのに、名前がわからない。
わからない。
ワカラナイ。
アカニウモレル、アノヒト
「……あ、れ」
ポロポロと涙が出てくる。慌ててジョニーが涙を拭いてくれた。
「ごめんね、怖かったね」
「ちがう、の。これ、しってるの。しらないのに、しってる……」
「うん、大丈夫だよ。もう、大丈夫」
よしよしと頭を撫でてくれるジョニーの優しさに抱きついた。
これ以上、考えたくない。
これ以上、思い出したくない。
怖い。
アカイの、コワイ。
「マジで正真正銘の変態くず野郎じゃねぇか」
「これは何がなんでも返せないね」
「ったりまえだろ。……おい、猫!」
涙をそのままにリビアを見た。キッと睨んでくるから怖くてジョニーの服を握りしめた。
でも、違った。
「今日から俺たちが家族だかんな!だから安心して大いに笑え!泣かれると……なんつーか、困るんだよ!飼い主を困らすな!これは命令だかんな!」
その不器用な優しさにまた涙が出てきた。
でも涙を拭いて二人に向き合った。
「ありがとう」
感謝の言葉と笑顔とともに。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる