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小さな花の花言葉

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 楽しい時間はあっという間に終わった。

「また、会いに行くから」

 ウルフは最後に、庭に咲いてた花を摘んでプレゼントしてくれた。
 名前は知らないけど小さな白い花。
 初めてプレゼントをもらった。
 初めておいしいご飯を与えてくれた。
 奴隷の私に優しくしてくれた。
 初めてがいっぱい。
 それがどれほど嬉しいのか、ウルフは知らない。奴隷だってバレちゃうから教えるつもりもないけど。これは秘密の話。

「お部屋に飾ろう」

 ニマニマしてしまう口をそのままに、お店に戻る。マスターに報告しようと待機室に向かっていたら、お客さまを連れたお嬢と鉢合わせしてしまった。急いで頭を下げたけど、やってしまった失態を許してくれるはずがない。

「おっ、新しい子? かわいいね」
「かわいいもんですか。人外専門の奴隷ですよ」
「ひぇーっ、こんな顔して人外のちんこくわえてんの?」
「さぁ、行きましょう。ここは臭いますから」
「獣臭いってか。おおっ、怖い怖い」

 ようやく立ち去って行く二人にもう一度頭を下げた。嫌みは言われ慣れてる。言葉で済むならどうってことない。改めて報告に行こうと一歩踏み出したらお客さまが声を上げた。

「そうだ! 公開ショーでもするか」
「公開、ですか?」
「俺の部下が待合室で待機してんだよ。あいつゲテモノ好きだからさ、多分気に入ると思うんだ」
「ああ、そういうこと」

 本当に良い予感なんてしないから、逃げるように二歩目を踏み出したけど、お嬢に声をかけられた。

「お仕事よ」
「で、でも」
「マスターの許可なら必要ないわ。早く来なさい」
「っ」
「早く! 奴隷の分際で手間を取らせないで!」
「す、みません」
「行くわよ」

 怖い。怖い。怖い。今からされることを考えるだけで体が冷える。でも今の私には従う道しかない。覚悟を決めろ。決めろ。大丈夫。こういうのも慣れてる。農園にいたころに主人の命令で何度もやった。それと同じ。
 苦しいだけで死にはしない。

「やっぱりここはド派手な登場が必要かな」
「人が悪いわね」
「そうか? 金は稼げるぞ」
「あなたのお好きなように」

 二人はこそこそ話ながら待機室の扉を開けた。勢いよく開かれたそれに、中の人がこちらを一斉に見た。

「公開ショーの始まりだ!」

 お客さまは私の腕をつかむと、思い切り投げ飛ばした。ウルフにもらった小さな花が落ちて、それを拾おうとする私を蹴って踏みつけて、楽しそうに笑いながら、これからの未来を教えてくれた。

「ここにいるのは【人外専門の奴隷】だ! 興味があるやつはいないか!?」

 ざわめきたつ男たちの中から一人の男が近づいてきた。いかにもゴロツキって感じの大男。多分お嬢の客の部下だ。まずこいつに抱かせて他の客を煽る。そういうシナリオ。
 ほんとに最悪。
 さっきまであんなに幸せだったのに、もう地獄に早変わり。でもこれが奴隷の日常。ダメだな幸せって。慣れたはずの地獄が死にたくなるほどツラくなる。

「俺がやる」
「はい、参加料一万ジュエルね」
「おらっ、来い!」

 ゴロツキは私の髪の毛を掴むと、引きずりながら場所を移動した。

「俺が奴隷を犯す見本ってやつを見せてやるよ!」

 この部屋は十畳ほど広さで、女遊びに来た主人の護衛をしている人達の待機室だ。女を抱いてる主人の帰りを待つ場所。ある意味、女に飢えている人のたまり場だから、嫌でも視線が集まる。

「さっさと上がれ! 手間をかけさせるな!」

 ゴロツキは部屋の中央にあるテーブルに上るよう指示した。私はそこに上ると、着ていたワンピースと下着を脱いだ。
 何も考えてない。
 考えるのをやめたから。

「けつを向けろ」

 四つんばいになってゴロツキにお尻を向けると、さっそく強引に入ってきた。気持ち悪くて吐きそうになった。

「これが人外専門のマンコかよ! ちょっとしまりが足りねぇな!」
「っ!」
「おらっ、どうだ! 人間様のちんぽの味はよぉ!」

 バチンバチンとお尻を叩きながら、アレを出し入れしてる。演技くらいしてやりたいけど、参ったことにまったく感じない。
 ゴロツキの大男のくせに小さすぎ。さっきまで極太くわえてたアソコなんだよ。粗末なもんで足りるわけないじゃん。せめて媚薬でも盛って襲ってよ。演技する身にもなれ。

「あー、しゅごいっ! 人間様のちんぽ、しゅごいっ!」
「あーっはは! だろうよ、病み付きだろうよ!」

 こいつはバカか。演技に決まってるのに。でもいいね、単細胞って。褒めるだけで勝手に喜んでくれる。

「そんなにイイなら自分で動け」

 ゴロツキはアレを抜いた。
 起き上がってテーブルに寝たゴロツキのアレにまたがった。その様子を周りの男が見ている。
 興奮している者、嫌悪感を示す者、知らん顔している者、自慰行為をしている者もいた。
 心底どうでもいい。
 これ以上酷いことをされたくないなら自分で動くしかない。
 誰も助けてくれない。
 優しさなんてない。
 この世界は、この世界の奴隷とは、そういうものだ。

「うっ、ああっ」

 ゴロツキが中に入ってくる。やっぱり気持ち悪くて鳥肌が立った。今にも吐きそう。でも、ここからが地獄の始まり。

「ほらほら、他に参加者はいないの!? もしかして臆してる!?」
「お客さま、安心してください。この子は淫乱ですわ。人外相手は楽しいと笑っております。それに、あのゴーレムとセックスしましたのよ」
「さぁ、どうする! 人外専門まんこなんて滅多に経験できないよー!」

 性的欲求をあおるスピーチに金を握りしめ群がる人。興味のない人は隅へ移動し、金を払った者は私がいるテーブルの周りを囲んだ。
 いくつもの手が伸びてきた。

「んぐう!」

 口にアレを押し込められ、両手にもアレを握らされた。胸に吸い付く男二人に、背中に触れる男。
 こんなの、どうってことない。

「おい、後ろにも穴があるだろ! 誰か入れてやれ」
「おっ、俺がやる! 一度でいいからシテみたかったんだ」
「ほら、よっ」

 たくさんの手が私を押さえつけた。無理やり前屈みにされて、お尻をゴロツキが広げる。二本同時にくわえるのも経験したことある。
 初めてじゃない。
 だから、こんなもの、どうってことない。
 こんなんじゃ、壊れない。
 痛くても、壊れてくれない。

「うああっ!」
「あはは! 痛みでうめき声を出しやがった」
「おおっ、けつの穴っ、すごいぞ!」
「俺もしようかな」
「次は俺だろ!?」
「ちゃんと口を動かせよ!」

 髪の毛を引っ張られながらアレが喉の奥まで入っていく。ろくな反抗もせずに、コイツらを受け入れた。
 視界のほんの隅っこに白い花が見えて、無性に泣きたくなった。
 奴隷は奴隷、何も変わらない。
 這い上がるって決めても、結局こんなやつらに虐げられながら生きてる。
 今を生きてる。
 一体私が何をしたんだろう。

「あーイキそうっ」

 アソコに入ってるアレが脈打った。お尻にも出された。ほんとに早いというか、小さいというか、お粗末過ぎる。でも、まだ終わりじゃない。
 今度はテーブルに仰向けにされて、正常位で入れられた。予想通りだから、こんなもの、どうってことない。こいつらは早漏で、二、三回すれば満足して終わる。それまでの我慢。だから、どうってことない。
 痛む心を知らん顔して、何も考えない。
 大丈夫、慣れてる。大丈夫、大丈夫。
 どうってことないの。

「反抗せん奴隷もつまらんな。そうだ! どうせなら今日の一大イベントにしよう! マスターの許可でも取ってこようっと」

 一大イベントの内容を考えるだけで恐ろしくて、ブルリと体が震えた。

「ううっあ」
「おっ! ようやく怖がったね!」
「いいね、やっぱり奴隷はこうじゃないと」
「おねだりでもさせるか」

 中に入ってたアレが抜けた。
 私は走って逃げた。
 無意識だった。
 これ以上は心が壊れそうで、戻れなくなりそうで。

「奴隷の分際で逃げんじゃねぇ!」

 追いかけてきた男に捕まえられて、思い切り殴られた。フラリときた体はそのまま床に倒れた。
 目を開けると白い花がそこにあって、幸せだった今日が嘘みたいで涙が出てきた。
 幸せが嘘だったのかも。
 こっちがいつもの日常だ。

「何だよこの花」
「ははっ、皮肉な花だぜ」
「何が」
「デイジーっつーんだよ。花言葉は【希望】だったかな」
「あはは! 奴隷に希望があるかよ」
「俺だったら死んでるね。家畜以下になりたくねーし」
「言えてるぜ」
「おらっ、こいよ」

 男の一人が私の足首を持って引きずりながら移動した。
 涙を流したまま床に爪を立てて無意味な抵抗をした。

「人間様が希望を与えてやろう」
「子種の間違いだろ」
「ぎゃはは! 違いねえ!」

 私の爪なんかじゃこいつらに届くわけもなく、でもいつか絶対に殺してやると、奥歯を喰いしばった。



ーーーーーー



 マスターの許可を得て開催した一大イベントは、それはそれは大好評だった。
 客のほとんどがここぞとばかりに部下や知り合いを呼び、家畜以下の奴隷は、たくさんの人間様に犯されまくった。
 お粗末過ぎるアレで犯されて何度も果てた。
 果てたことが悔しくていっぱい泣いた。
 体中に精液をかけられて、口もアソコもお尻も精液まみれ。
 何の効果もない精液をかけられても嬉しくないのに、人間様はとても喜んでた。
 
イベントのシメはマスターの一言だった。

「そろそろ避妊のお薬が切れる時間ね。『家畜にお薬を恵んでください』って、お客さまにおねだりしなさい」

 もちろん奴隷に拒否権があるわけもなく、土下座して言ってやった。
 全員満足した。
 満員御礼!
 一大イベントは無事に終了しました!
 そう、ようやく終わった。
 地獄が終わった。

「くそっ、くそっ、ボーナスくらい用意してよっ」

 どろどろの体を引きずりながら自分の部屋に戻る。速攻でバスルームに行って頭から熱いお湯を被った。
 もう涙は出なかった。
 出してたまるか。

「だからっ、一体っ、私がっ、何をしたっていうのよっ!」

 泣かない、絶対に。
 もう泣かない。泣いたら負けだ。
 私は絶対に、あんなやつらに負けない。
 泣いてたまるもんか。
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