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次の日の朝食。
食堂に行くと、クレマも後からやって来た。
「プルメリア!」
「クレマ。元気だった?」
「ええ。あの時はありがとう。私達のせいでごめんなさい。」
クレマは申し訳無さそうに、身体を小さくした。
「バートンくんは?」
「大事を取って、まだ休んでいるけれど、大丈夫そうよ。」
「そう。良かった。」
「足は大丈夫?」
「ええ。もう治ったわ。あれから、変わった事はない?」
学園は見廻りや護衛が増えている。手を出しづらい環境ではあるだろう。しかし、射撃事件のこともある。
黒幕が分からない限り、危険な状況に変わりはない。
「それも、大丈夫。何もないわ。あの後は話を聞かれたけど、犯人達のことも何も教えては貰えなかったわ。」
「それは、私も聞いていないわ。知ると危険な事もあるから、こちらからは聞かない様にしているの。私に関係のある事なら、きっと話してくれるでしょうし。」
聞かなくても、想像はできるけれど…。
「そうね。…あと、リカルド殿下の事なのだけれど。」
「ん?どうかしたの?」
「話しかけてこないの…。」
「私もバートンくんもいないから、立場上二人きりになるのは避けているとか?」
この場合、護衛と侍女は数に入れていない。
「挨拶も無しよ?」
「そう…。クレマはどうしたい?」
「殿下は、もう友達よ。それは変わらないわ。……いつも通りでいいのに。」
クレマは肩を落とす。
クレマも気付いているのだろう。私達が狙われた理由を。
まぁ、自分が原因で友人が危険な目にあったら、私も離れるわ。
だから、理解はできるけど…。
「殿下と話しましょう。」
「でも、避けられてるわ。」
「あら、私の婚約者は誰かしら?」
「公私混同はしないのではなくて?」
「うーん、撤回?」
首を傾ける。
クレマはそれを見て笑った。
私は、この事をライラから、ジェイクへ伝えてもらう事にした。
「ライラ、お願いね。」
「私と致しましては、今のままで良いと思いますが。」
「危険は去っても、それでは寂しいでしょ?それに、犯人を誘き出すのにも、必要な事なのよ。思う通りになるのも癪だし、早くこの問題を終わりにして、また穏やかに過ごしたいわ。」
「囮になるおつもりですか?」
私はそれに笑顔だけで返す。
それを見て、クレマが身震いする。
「プルメリア。貴方、怒っているの?」
「あら、友達を傷つけられて怒らない人はいないわ。」
「…私、貴方と友達で良かったわ。」
言葉通りに受け取っていいのか…。色々含まれているような気もするが、気にしない。
午前は授業が無かったので、ライラたちを説得し、ネーロと準備運動程度の組手をしていた。
そこへ、ジェイクがかけてくる。ライラの姿はない。
あの速さで走ってきて、息が切れていないなんて。ライラは追いつけなかったのね…。
「リア、聞いたぞ。」
「ジェイク。仕事は?」
「グレイに任せてきた。それで、囮になるとはどういう事だ!?」
「ネーロ、周りの警戒を。」
「畏まりました。」
ネーロがその場を離れた所で、私はジェイクの腕に触れる。
「ジェイク、落ち着いて。声が大き過ぎます。」
「すまん。」
「囮の事は置いておいて、」
「置いておけない。」
ジェイクの声がかぶる。
「はぁ…。クレマが殿下が離れた事を気にしているの。せっかく仲良くなれたのだから、今まで通りでいたいと…。でも、殿下の私達を危険に巻き込みたくないという気持ちもわかるの。」
「ああ。親父達も、侯爵達も犯人確保に尽力している。」
「きっと、目星は付いているのでしょう?でも、まだ捕まえていないと言う事は、決定打にかける。」
「…そうだな。」
「もし、他国の貴族が黒幕であっても、公爵子息の婚約者に手を出したら国で罰する事が出来る。」
「リア、危険すぎる。」
「それでも、ジェイクが守ってくれるでしょう?」
「無茶な事を…。」
「まぁ、それはお父様達に相談するとして、リカルド殿下にはいつも通りにしてほしいの。クレマと私にリカルド殿下と話す機会をください。」
「………リカルド殿下の件は、分かった。但し、囮云々の話をする時は俺も同席するぞ。」
「ええ。もちろんよ。」
この後、ノアに頼んで、お父様へ手紙を届けて貰うと、すぐに家へ呼び出される事になった。
食堂に行くと、クレマも後からやって来た。
「プルメリア!」
「クレマ。元気だった?」
「ええ。あの時はありがとう。私達のせいでごめんなさい。」
クレマは申し訳無さそうに、身体を小さくした。
「バートンくんは?」
「大事を取って、まだ休んでいるけれど、大丈夫そうよ。」
「そう。良かった。」
「足は大丈夫?」
「ええ。もう治ったわ。あれから、変わった事はない?」
学園は見廻りや護衛が増えている。手を出しづらい環境ではあるだろう。しかし、射撃事件のこともある。
黒幕が分からない限り、危険な状況に変わりはない。
「それも、大丈夫。何もないわ。あの後は話を聞かれたけど、犯人達のことも何も教えては貰えなかったわ。」
「それは、私も聞いていないわ。知ると危険な事もあるから、こちらからは聞かない様にしているの。私に関係のある事なら、きっと話してくれるでしょうし。」
聞かなくても、想像はできるけれど…。
「そうね。…あと、リカルド殿下の事なのだけれど。」
「ん?どうかしたの?」
「話しかけてこないの…。」
「私もバートンくんもいないから、立場上二人きりになるのは避けているとか?」
この場合、護衛と侍女は数に入れていない。
「挨拶も無しよ?」
「そう…。クレマはどうしたい?」
「殿下は、もう友達よ。それは変わらないわ。……いつも通りでいいのに。」
クレマは肩を落とす。
クレマも気付いているのだろう。私達が狙われた理由を。
まぁ、自分が原因で友人が危険な目にあったら、私も離れるわ。
だから、理解はできるけど…。
「殿下と話しましょう。」
「でも、避けられてるわ。」
「あら、私の婚約者は誰かしら?」
「公私混同はしないのではなくて?」
「うーん、撤回?」
首を傾ける。
クレマはそれを見て笑った。
私は、この事をライラから、ジェイクへ伝えてもらう事にした。
「ライラ、お願いね。」
「私と致しましては、今のままで良いと思いますが。」
「危険は去っても、それでは寂しいでしょ?それに、犯人を誘き出すのにも、必要な事なのよ。思う通りになるのも癪だし、早くこの問題を終わりにして、また穏やかに過ごしたいわ。」
「囮になるおつもりですか?」
私はそれに笑顔だけで返す。
それを見て、クレマが身震いする。
「プルメリア。貴方、怒っているの?」
「あら、友達を傷つけられて怒らない人はいないわ。」
「…私、貴方と友達で良かったわ。」
言葉通りに受け取っていいのか…。色々含まれているような気もするが、気にしない。
午前は授業が無かったので、ライラたちを説得し、ネーロと準備運動程度の組手をしていた。
そこへ、ジェイクがかけてくる。ライラの姿はない。
あの速さで走ってきて、息が切れていないなんて。ライラは追いつけなかったのね…。
「リア、聞いたぞ。」
「ジェイク。仕事は?」
「グレイに任せてきた。それで、囮になるとはどういう事だ!?」
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「畏まりました。」
ネーロがその場を離れた所で、私はジェイクの腕に触れる。
「ジェイク、落ち着いて。声が大き過ぎます。」
「すまん。」
「囮の事は置いておいて、」
「置いておけない。」
ジェイクの声がかぶる。
「はぁ…。クレマが殿下が離れた事を気にしているの。せっかく仲良くなれたのだから、今まで通りでいたいと…。でも、殿下の私達を危険に巻き込みたくないという気持ちもわかるの。」
「ああ。親父達も、侯爵達も犯人確保に尽力している。」
「きっと、目星は付いているのでしょう?でも、まだ捕まえていないと言う事は、決定打にかける。」
「…そうだな。」
「もし、他国の貴族が黒幕であっても、公爵子息の婚約者に手を出したら国で罰する事が出来る。」
「リア、危険すぎる。」
「それでも、ジェイクが守ってくれるでしょう?」
「無茶な事を…。」
「まぁ、それはお父様達に相談するとして、リカルド殿下にはいつも通りにしてほしいの。クレマと私にリカルド殿下と話す機会をください。」
「………リカルド殿下の件は、分かった。但し、囮云々の話をする時は俺も同席するぞ。」
「ええ。もちろんよ。」
この後、ノアに頼んで、お父様へ手紙を届けて貰うと、すぐに家へ呼び出される事になった。
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