78 / 134
60
しおりを挟む
「言っている所は、ここだと思うんだが。」
私は、店名を確認する。
「はい。ここです。」
「では、入ろうか。」
「楽しみです。」
ドアを開けると、お茶の香りで溢れていた。
「良い香り。」
店内はイートインスペースと、持ち帰りスペースに分けられている様だ。
イートインスペースはお客がたくさんいる。
私達がドア付近にいると、店員が走ってきた。
「オパール様。いらっしゃいませ。いつもご贔屓にして下さりありがとうございます。」
「こちらこそ、いつも美味しいお茶をありがとう。それにしても、良く私だと分かりましたね。直接会うのは、初めてだと思うのだけれど…。」
「以前、お茶をお持ちした際に、お見かけしました。」
「そうなのね。」
「今日はお持ち帰りですか?」
「いいえ。休憩がてらケーキを食べに来たのだけれど、席は空いているかしら?」
「はい。ご案内致します。」
「あれ?リア?」
店員に付いて行こうとした時、後ろから声をかけられた。
声のした方に振り返って、私もジェイクも驚いた。
「お父様!?師匠!?」
「近くを通ったから、ミディアに土産をと思って寄ったんだ。」
「俺もついでに土産をな。…まあ、仲良くやっているようで良かったよ。」
チラッと手をみられる。
手…?
わ!手を繋いだままだった!
私は手を離そうとするが、ジェイクはそのつもりは無いらしい。しっかり握られている。
「親父も土産とか買ったりしてたんだな。」
「当たり前だ。」
「怒らせたから何か良い詫びの品がないか、と相談してくる事もありますもんね。」
「おい!」
「あの…すみません。ここでは何ですのでお席の方へ…。」
店員が恐る恐る声をかけてきた。
「あ、ごめんなさい。そうよね。お父様、師匠、一緒に如何ですか?ジェイク、良いですよね?」
「…ああ。」
あ、不服そう…。
「そうかい?それならお言葉に甘えて。」
「おい!」
「いいじゃないですか。あとは帰るだけなんだし、久しぶりに愛娘に会えたんですよ。」
「だからってなぁ、」
また、話が続きそうになった時、店員に再度声をかけられた。
「あ、あの、そろそろ移動をお願いします。」
「そうよね。ごめんなさい。ほら、行きますよ。」
私はお父様と師匠に声をかけ、ジェイクの手を引いて店員の後ろをついて行った。
私達は、半個室の様な席に案内された。
ジェイクと手を離し、私とジェイクが隣り、私の向かいにお父様、ジェイクの向かいに師匠という形で席に座る。そして、メニューを見ながら、それぞれお茶を頼んだ。
「お父様、師匠。ケーキはどうしますか?」
「私は、ベリーのケーキにするよ。」
「俺はいらん。」
「ジェイクは?」
「俺もお茶だけで良いな。」
「そうですか?それなら、私はティラミスを。」
「畏まりました。」
店員はオーダーを聞くと、テーブルを離れた。
「ところで、ふたりはデートだったのかい?」
お父様が直球で聞いてきた。
「デートといいますか、今日は社交会デビューのドレスの調整に来て、店の前で偶然ジェイクに会いました。」
「ふーん。それでその後ここに来たと。」
「お父様なんか、取り調べの様ね…。」
「そんなことないさ。娘が大切にされているか気になるだけだよ?」
私はジェイクの顔を見る。
お祝いの事話していいのよね?
私から話す?
ジェイクから?
それが伝わったのか、お父様の問いにはジェイクが答えた。
「ドレスの後に社交会デビューの祝いを見ていました。今まで何にしようか考えていたのですが、ドレスを見て決まったので。」
「何にすることにしたんだい?」
「それは俺も気になるな。」
師匠も話に加わる。
「当日に付ける宝飾品です。」
「ほぉ、お前もやるなぁ。で、どんなのだ?」
「それは、当日見てくれ。」
「おまたせ致しました。」
そこで、お茶とケーキが運ばれてきた。
各々頼んだものを口にする。
「ジェイク。このティラミス、甘すぎず美味しいですよ。ひと口食べませんか?」
私はひと口分乗ったスプーンを、ジェイクに向けた。
「!」
「ジェイク?」
「リア。嬉しいのだが、今はちょっと…。」
「ん?あ、すみません。こちらからひと口、如何ですか?」
あ~ん状態だったことに気づき、スプーンをお皿に置いて、お皿ごとジェイクへ渡した。
「…頂く。」
「どうですか?」
「ほろ苦い。これならいける。」
「良かった。もしかしたらと思ったんですよね。」
「リア。…もしかして、それでこれを頼んだのか?」
「まあ、それもありますが、私が食べたかったのも嘘ではありませんよ。」
「…リア。」
「ゴホン。我々は何を見せられているのだろうか?」
「!」
「お父様。すみません。」
私達の顔は赤くなっているだろう。思わず俯いた。
「ほらな。だから言っただろうが。親がデートに参加して、良いことは何もない。」
「…言ってないですよ。」
「そうだったか?とりあえず、食べたらもう行こう。」
「そうですね。」
お父様は黙々と食べ、食べ終えるとお茶を一気に飲みほした。
「では、次は祭りの前日かな?」
「はい。前日のお昼前には帰ります。」
「楽しみにしているよ。…ジェイク、邪魔してすまなかったね。」
「いえ。」
「ジェイク、プルメリア。またな。」
「今日は会えて良かったです。ふたりとも、気を付けて帰ってくださいね。」
お父様は、すでにお茶を飲み終わっていた師匠と、店を出ていった。
私は、店名を確認する。
「はい。ここです。」
「では、入ろうか。」
「楽しみです。」
ドアを開けると、お茶の香りで溢れていた。
「良い香り。」
店内はイートインスペースと、持ち帰りスペースに分けられている様だ。
イートインスペースはお客がたくさんいる。
私達がドア付近にいると、店員が走ってきた。
「オパール様。いらっしゃいませ。いつもご贔屓にして下さりありがとうございます。」
「こちらこそ、いつも美味しいお茶をありがとう。それにしても、良く私だと分かりましたね。直接会うのは、初めてだと思うのだけれど…。」
「以前、お茶をお持ちした際に、お見かけしました。」
「そうなのね。」
「今日はお持ち帰りですか?」
「いいえ。休憩がてらケーキを食べに来たのだけれど、席は空いているかしら?」
「はい。ご案内致します。」
「あれ?リア?」
店員に付いて行こうとした時、後ろから声をかけられた。
声のした方に振り返って、私もジェイクも驚いた。
「お父様!?師匠!?」
「近くを通ったから、ミディアに土産をと思って寄ったんだ。」
「俺もついでに土産をな。…まあ、仲良くやっているようで良かったよ。」
チラッと手をみられる。
手…?
わ!手を繋いだままだった!
私は手を離そうとするが、ジェイクはそのつもりは無いらしい。しっかり握られている。
「親父も土産とか買ったりしてたんだな。」
「当たり前だ。」
「怒らせたから何か良い詫びの品がないか、と相談してくる事もありますもんね。」
「おい!」
「あの…すみません。ここでは何ですのでお席の方へ…。」
店員が恐る恐る声をかけてきた。
「あ、ごめんなさい。そうよね。お父様、師匠、一緒に如何ですか?ジェイク、良いですよね?」
「…ああ。」
あ、不服そう…。
「そうかい?それならお言葉に甘えて。」
「おい!」
「いいじゃないですか。あとは帰るだけなんだし、久しぶりに愛娘に会えたんですよ。」
「だからってなぁ、」
また、話が続きそうになった時、店員に再度声をかけられた。
「あ、あの、そろそろ移動をお願いします。」
「そうよね。ごめんなさい。ほら、行きますよ。」
私はお父様と師匠に声をかけ、ジェイクの手を引いて店員の後ろをついて行った。
私達は、半個室の様な席に案内された。
ジェイクと手を離し、私とジェイクが隣り、私の向かいにお父様、ジェイクの向かいに師匠という形で席に座る。そして、メニューを見ながら、それぞれお茶を頼んだ。
「お父様、師匠。ケーキはどうしますか?」
「私は、ベリーのケーキにするよ。」
「俺はいらん。」
「ジェイクは?」
「俺もお茶だけで良いな。」
「そうですか?それなら、私はティラミスを。」
「畏まりました。」
店員はオーダーを聞くと、テーブルを離れた。
「ところで、ふたりはデートだったのかい?」
お父様が直球で聞いてきた。
「デートといいますか、今日は社交会デビューのドレスの調整に来て、店の前で偶然ジェイクに会いました。」
「ふーん。それでその後ここに来たと。」
「お父様なんか、取り調べの様ね…。」
「そんなことないさ。娘が大切にされているか気になるだけだよ?」
私はジェイクの顔を見る。
お祝いの事話していいのよね?
私から話す?
ジェイクから?
それが伝わったのか、お父様の問いにはジェイクが答えた。
「ドレスの後に社交会デビューの祝いを見ていました。今まで何にしようか考えていたのですが、ドレスを見て決まったので。」
「何にすることにしたんだい?」
「それは俺も気になるな。」
師匠も話に加わる。
「当日に付ける宝飾品です。」
「ほぉ、お前もやるなぁ。で、どんなのだ?」
「それは、当日見てくれ。」
「おまたせ致しました。」
そこで、お茶とケーキが運ばれてきた。
各々頼んだものを口にする。
「ジェイク。このティラミス、甘すぎず美味しいですよ。ひと口食べませんか?」
私はひと口分乗ったスプーンを、ジェイクに向けた。
「!」
「ジェイク?」
「リア。嬉しいのだが、今はちょっと…。」
「ん?あ、すみません。こちらからひと口、如何ですか?」
あ~ん状態だったことに気づき、スプーンをお皿に置いて、お皿ごとジェイクへ渡した。
「…頂く。」
「どうですか?」
「ほろ苦い。これならいける。」
「良かった。もしかしたらと思ったんですよね。」
「リア。…もしかして、それでこれを頼んだのか?」
「まあ、それもありますが、私が食べたかったのも嘘ではありませんよ。」
「…リア。」
「ゴホン。我々は何を見せられているのだろうか?」
「!」
「お父様。すみません。」
私達の顔は赤くなっているだろう。思わず俯いた。
「ほらな。だから言っただろうが。親がデートに参加して、良いことは何もない。」
「…言ってないですよ。」
「そうだったか?とりあえず、食べたらもう行こう。」
「そうですね。」
お父様は黙々と食べ、食べ終えるとお茶を一気に飲みほした。
「では、次は祭りの前日かな?」
「はい。前日のお昼前には帰ります。」
「楽しみにしているよ。…ジェイク、邪魔してすまなかったね。」
「いえ。」
「ジェイク、プルメリア。またな。」
「今日は会えて良かったです。ふたりとも、気を付けて帰ってくださいね。」
お父様は、すでにお茶を飲み終わっていた師匠と、店を出ていった。
55
お気に入りに追加
1,503
あなたにおすすめの小説
強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)
恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~
めもぐあい
恋愛
公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。
そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。
家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜
咲宮
恋愛
私はオルティアナ公爵家に生まれた長女、アイシアと申します。
実は前世持ちでいわゆる転生令嬢なんです。前世でもかなりいいところのお嬢様でした。今回でもお嬢様、これまたいいところの!前世はなんだかんだ忙しかったので、今回はのんびりライフを楽しもう!…そう思っていたのに。
どうして貴方まで同じ世界に転生してるの?
しかも王子ってどういうこと!?
お願いだから私ののんびりライフを邪魔しないで!
その愛はお断りしますから!
※更新が不定期です。
※誤字脱字の指摘や感想、よろしければお願いします。
※完結から結構経ちましたが、番外編を始めます!
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる