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「言っている所は、ここだと思うんだが。」

私は、店名を確認する。

「はい。ここです。」
「では、入ろうか。」
「楽しみです。」

ドアを開けると、お茶の香りで溢れていた。

「良い香り。」

店内はイートインスペースと、持ち帰りスペースに分けられている様だ。
イートインスペースはお客がたくさんいる。
私達がドア付近にいると、店員が走ってきた。

「オパール様。いらっしゃいませ。いつもご贔屓にして下さりありがとうございます。」
「こちらこそ、いつも美味しいお茶をありがとう。それにしても、良く私だと分かりましたね。直接会うのは、初めてだと思うのだけれど…。」
「以前、お茶をお持ちした際に、お見かけしました。」
「そうなのね。」
「今日はお持ち帰りですか?」
「いいえ。休憩がてらケーキを食べに来たのだけれど、席は空いているかしら?」
「はい。ご案内致します。」
「あれ?リア?」

店員に付いて行こうとした時、後ろから声をかけられた。
声のした方に振り返って、私もジェイクも驚いた。

「お父様!?師匠!?」
「近くを通ったから、ミディアに土産をと思って寄ったんだ。」
「俺もついでに土産をな。…まあ、仲良くやっているようで良かったよ。」

チラッと手をみられる。

手…?
わ!手を繋いだままだった!

私は手を離そうとするが、ジェイクはそのつもりは無いらしい。しっかり握られている。

「親父も土産とか買ったりしてたんだな。」
「当たり前だ。」
「怒らせたから何か良い詫びの品がないか、と相談してくる事もありますもんね。」
「おい!」
「あの…すみません。ここでは何ですのでお席の方へ…。」

店員が恐る恐る声をかけてきた。

「あ、ごめんなさい。そうよね。お父様、師匠、一緒に如何ですか?ジェイク、良いですよね?」
「…ああ。」

あ、不服そう…。

「そうかい?それならお言葉に甘えて。」
「おい!」
「いいじゃないですか。あとは帰るだけなんだし、久しぶりに愛娘に会えたんですよ。」
「だからってなぁ、」

また、話が続きそうになった時、店員に再度声をかけられた。

「あ、あの、そろそろ移動をお願いします。」
「そうよね。ごめんなさい。ほら、行きますよ。」

私はお父様と師匠に声をかけ、ジェイクの手を引いて店員の後ろをついて行った。
私達は、半個室の様な席に案内された。
ジェイクと手を離し、私とジェイクが隣り、私の向かいにお父様、ジェイクの向かいに師匠という形で席に座る。そして、メニューを見ながら、それぞれお茶を頼んだ。

「お父様、師匠。ケーキはどうしますか?」
「私は、ベリーのケーキにするよ。」
「俺はいらん。」
「ジェイクは?」
「俺もお茶だけで良いな。」
「そうですか?それなら、私はティラミスを。」
「畏まりました。」

店員はオーダーを聞くと、テーブルを離れた。

「ところで、ふたりはデートだったのかい?」

お父様が直球で聞いてきた。

「デートといいますか、今日は社交会デビューのドレスの調整に来て、店の前で偶然ジェイクに会いました。」
「ふーん。それでその後ここに来たと。」
「お父様なんか、取り調べの様ね…。」
「そんなことないさ。娘が大切にされているか気になるだけだよ?」

私はジェイクの顔を見る。

お祝いの事話していいのよね?
私から話す?
ジェイクから?

それが伝わったのか、お父様の問いにはジェイクが答えた。

「ドレスの後に社交会デビューの祝いを見ていました。今まで何にしようか考えていたのですが、ドレスを見て決まったので。」
「何にすることにしたんだい?」
「それは俺も気になるな。」

師匠も話に加わる。

「当日に付ける宝飾品です。」
「ほぉ、お前もやるなぁ。で、どんなのだ?」
「それは、当日見てくれ。」
「おまたせ致しました。」

そこで、お茶とケーキが運ばれてきた。
各々頼んだものを口にする。

「ジェイク。このティラミス、甘すぎず美味しいですよ。ひと口食べませんか?」

私はひと口分乗ったスプーンを、ジェイクに向けた。

「!」
「ジェイク?」
「リア。嬉しいのだが、今はちょっと…。」
「ん?あ、すみません。こちらからひと口、如何ですか?」

あ~ん状態だったことに気づき、スプーンをお皿に置いて、お皿ごとジェイクへ渡した。

「…頂く。」
「どうですか?」
「ほろ苦い。これならいける。」
「良かった。もしかしたらと思ったんですよね。」
「リア。…もしかして、それでこれを頼んだのか?」
「まあ、それもありますが、私が食べたかったのも嘘ではありませんよ。」
「…リア。」
「ゴホン。我々は何を見せられているのだろうか?」
「!」
「お父様。すみません。」

私達の顔は赤くなっているだろう。思わず俯いた。

「ほらな。だから言っただろうが。親がデートに参加して、良いことは何もない。」
「…言ってないですよ。」
「そうだったか?とりあえず、食べたらもう行こう。」
「そうですね。」

お父様は黙々と食べ、食べ終えるとお茶を一気に飲みほした。

「では、次は祭りの前日かな?」
「はい。前日のお昼前には帰ります。」
「楽しみにしているよ。…ジェイク、邪魔してすまなかったね。」
「いえ。」
「ジェイク、プルメリア。またな。」
「今日は会えて良かったです。ふたりとも、気を付けて帰ってくださいね。」

お父様は、すでにお茶を飲み終わっていた師匠と、店を出ていった。








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