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部屋の外に出た後は事務所に行き、事務員さんに話が終わった事と、見送りに行く事を伝えた。
事務員さんは、行ってらっしゃいと、快く送り出してくれた。

ふたりで話して歩いていると、ライアン殿下と側近達が姿を表した。

「なんで、私以外の男と歩いている!」
「婚約者だからですが?」
「先程も言ったが、婚約破棄は認めない。」
「婚約破棄?」

先程?…あぁ、なんか最後に後ろで騒いでいたやつか。全然聞いていなかった。

「殿下、何か誤解されていませんか?プルメリア嬢の婚約者は最初から私ですが。」

ジェイク様が訂正してくれる。

「そんなはずはない!」
「殿下の婚約者がプルメリア嬢だと誰に聞きました?」
「皆、言っている。」
「皆ですか?」
「あぁ、こいつ等も家庭教師も皆な。」

側近たちを見ると、顔が青い。
急展開!調べなくても解決!?

「どういう事か話してもらおうか?」

ジェイク様が側近達を見て凄むと、側近たちはペラペラと話し始めた。

「噂です。オパール嬢が、」
「嬢?」
「!お、オパール様が殿下の次の婚約者で、候爵も了承したと。18の社交界デビューで正式に発表されるという事です。」
「それは、どこから聞いた?」
「父上です。他の者も親から聞いておりましたので、正しいと…。」
「そうか。だが、間違っている。親にも言っておけ。プルメリア嬢の婚約者は私だ。」

側近達はブルブル震えている。

「「「はい!」」」

私もその光景を見て、震えた。
それに気づいたジェイク様は、私に向かって謝った。

「すまん。怖がらせた。」
「……」
「リア?」
「…格好良い。」
「ん?」
「「「え?」」」
「ジェイク様、格好良過ぎます。私、ジェイク様の婚約者で良かったです。」
「そ、そうか?」
「はい!」

ジェイクを見つめるプルメリア、真っ赤になっているジェイク。
ふたりの婚約は幸せに満ちているのだと、見ているもの全てに伝わる光景だった。

「お前は本当に、あのジェイク·エメラルドか?兄上の側近の?」

空気を読まないライアン殿下が口を開く。

「そうですが、何か?」

ジェイク様はライアン殿下に向き直ると、威圧した。

「ち、違わないようだな。」
「何なんですか?」
「いや、何でも…。」

ジェイク様がイライラしているのが分かる。

「失礼致します、エメラルド様。ライアン殿下はデレデレのエメラルド様を見て、別人だと思ったのではないかと。」

ライラが私の後ろから、そう発言した。
ライアン殿下はコクコクと頷いている。

「デレデレ…。リア、オパール家の使用人は皆こうなのか?」
「こうとは?」
「怖いもの知らずと言うか、辛辣と言うか…。」
「どうでしょう。辛辣だとか思った事はありませんが…。言われてみれば、はっきり物を言う者が多いかもしれませんね。」
「そうか。」
「おい、いつまで俺を放っておく?」

お?持ち直した?

「ライアン殿下。…そういう事で、プルメリア嬢は私の婚約者ですので、今後近づかないで頂きたい。」
「フンッ!そんな、野蛮な奴こちらから願い下げだ。」

ピキッ

空気が凍る。

「で、殿下、もう行きましょう。」
「おい、何をする!」
「「失礼します!」」

察した側近達に、ライアン殿下は引きずられていった。

「再教育…、俺がする。」

ジェイク様が言うと、ライラも賛同する

「お手伝いさせてください。」
「「俺たちもお願いします。」」

ノアとネーロも、いつの間にかそばに来ていた。

「ノアとネーロ、いつの間に…。ジェイク様、皆も落ち着いて。」
「落ち着いている。」
「「「落ち着いています。」」」

いやいや、そうは見えないのだけれど…。

私達は再度歩き出し、そして学園の門に着いた。

「またすぐに会えますか?」
「ああ。候爵から婚約者であると一筆貰っているから、これから会いに来れるときは来るし、今度は来る日を手紙で知らせる。」
「はい。その日を楽しみにしております。」
「ああ。またな。」

ジェイク様は帰っていった。
時計を見ると既に授業の時間になっている。
先程のライアン殿下達は、休憩が終わり教室に戻るところであったのだろう。

「さて、授業はもう始まっているわね。」
「そうですね。」
「次の授業が始まるまで…。」
「走りませんよ?」
「裏の林で!」
「駄目です。この後授業に出るのに、ハイヒールが泥だらけになります。」
「…はい。」

-----後日-----

ライアン殿下は連れ戻された。
再教育は、我が家が請負うらしい。

…大丈夫かしら?

噂の真相も分かった。
聞き耳を立てていたのは、書類を届けに来た文官や、侍女。
お父様が出入りしていた事と、『婚約、18のデビュー』の単語で壮大な勘違いで盛り上がったまま他者に話したことで、噂は広まった。
長期休暇に入っていたこともあって、すぐに子供たちの耳にも入った、と言うことらしい。

ライアン殿下に噂を教えたのは、王妃様のお父上、ライアン殿下のお祖父様だった。
噂を聞き、お祝いを言いに訪問したそうだ。立場的に、護衛騎士も何も言えなかった。
この件は、関係者に厳重注意で終わっている。

なんとも衝動的な行動…。
ライアン殿下は、きっとお祖父様似なのね。

最後に、ノアとネーロが調べてくれたのだが、ライアン殿下の耳に訂正された噂が入らなかったのは、殿下と側近のみで行動していて、周りの噂が伝わらなかったからという理由だった。

「あの方達、全く周りを気にしていませんでした。交流も、挨拶もありません。」
「あれは、いつでもヤれますよ。」
「そうですか。それなら…」
「駄目よ?」

3人は顔を見合わせた後、答えた。

「「「…分かっております。」」」

危惧していた策略とか、何もなくて良かったのだけれど、王宮の警備や情報管理が不安になる。






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