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閑話2 運営さんは混乱中
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「班長~。今日の問い合わせの山、どうします~」
「どうしますって、お前も少しは考えろよ」
ユーザーからの要望、問い合わせ、クレーム。それらは全てこのサポート部門で受け取る。要望であれば「確かに承りました」と回答を返して企画部へ回す。問い合わせは簡単なものであればサポート部門で回答するし、難しいものであれば開発部へ確認する。
問題になるのは、ユーザーの目にはバグに見えても、開発部からは「ありえない」と返される場合だ。
しかもそんな問い合わせが急増していた。
「街のNPCの大半だぞ。チュートリアルおじさんどころの話じゃないだろ」
「でも開発部は相変わらずなんでしょ」
「証拠の映像は渡したんだ、あとは勝手にやるだろ」
複数の、いや大勢のNPCがバラバラにされて、街の中に散乱していた。そんなクレームが大量に舞い込んだのだ。
当然ながら、一人のプレイヤーからではない。クレームを上げたプレイヤーもまた大量だ。これは大事だと開発部に入れた連絡からは「プレイヤーが街の中のNPCを殺すなんて不可能だ」と前にも聞いた言葉しか返ってきていない。
「調査中で返すしかないだろうよ。何も分かってないんだ」
そう、何も分かっていない。分かっているのは、バラバラになったNPCが散乱していたという事実だけだ。
大量のクレームを受けて、サポート部門では即座に行動した。少なくとも即座に行動したつもりだ。
ゲーム内を確認できるカメラを起動してみれば、確かにそこにはバラバラになったNPCが散乱していた。
NPCには行動ログなんていうものはない。ダメージを受けた際のログなんてものは残っていない。本来ならそれは、攻撃をしたプレイヤーのログに残るものなのだ。
だが、以前にも発生したNPC破壊の事件では、どれだけプレイヤーのログをあさっても、攻撃をしたプレイヤーは発見出来なかった。
またサポート部門全員でログをあさろうとも、同じように何も分からない可能性が高い。
そう考えた班長は、カメラの記録を映像データとしていくつも送りつけ「データが欲しければすぐに動け、調べることがないならNPCを復旧させろ」と開発部に丸投げした。
既に、サポート部門とは別に、複数のカメラが起動しているのは確認している。
あまり時間がかかるようなら、街の閉鎖や全サーバーをネットから遮断してのメンテナンス突入も考える必要はある。そのあたりはタイミングを見て開発部に確認をしなければいけない。
今すぐの仕事としては、大量に届いたクレームの処理だ。
結果が出るまで待っていては、再度のクレームが届くだけだ。今日のうちに何かしら返答をする。人は誰もが、無視されたと思えば機嫌が悪くなるものだからだ。
「取り合えず、NPCがバラバラになって散乱しているのは確認した。それ以上は調査中として返信を出せ。詳細は分かり次第サポートページで発表するとしておけ」
「班長。まとめて定型文でいいっすか」
「いいがユーザーの名前を間違うなよ。ダブルチェックを忘れるな」
サービス開始から一年。やっと目立ったバグが消えたかと思ったが、そんなことはなかったのだとサポート部門全員が認識を改めた。
「どうしますって、お前も少しは考えろよ」
ユーザーからの要望、問い合わせ、クレーム。それらは全てこのサポート部門で受け取る。要望であれば「確かに承りました」と回答を返して企画部へ回す。問い合わせは簡単なものであればサポート部門で回答するし、難しいものであれば開発部へ確認する。
問題になるのは、ユーザーの目にはバグに見えても、開発部からは「ありえない」と返される場合だ。
しかもそんな問い合わせが急増していた。
「街のNPCの大半だぞ。チュートリアルおじさんどころの話じゃないだろ」
「でも開発部は相変わらずなんでしょ」
「証拠の映像は渡したんだ、あとは勝手にやるだろ」
複数の、いや大勢のNPCがバラバラにされて、街の中に散乱していた。そんなクレームが大量に舞い込んだのだ。
当然ながら、一人のプレイヤーからではない。クレームを上げたプレイヤーもまた大量だ。これは大事だと開発部に入れた連絡からは「プレイヤーが街の中のNPCを殺すなんて不可能だ」と前にも聞いた言葉しか返ってきていない。
「調査中で返すしかないだろうよ。何も分かってないんだ」
そう、何も分かっていない。分かっているのは、バラバラになったNPCが散乱していたという事実だけだ。
大量のクレームを受けて、サポート部門では即座に行動した。少なくとも即座に行動したつもりだ。
ゲーム内を確認できるカメラを起動してみれば、確かにそこにはバラバラになったNPCが散乱していた。
NPCには行動ログなんていうものはない。ダメージを受けた際のログなんてものは残っていない。本来ならそれは、攻撃をしたプレイヤーのログに残るものなのだ。
だが、以前にも発生したNPC破壊の事件では、どれだけプレイヤーのログをあさっても、攻撃をしたプレイヤーは発見出来なかった。
またサポート部門全員でログをあさろうとも、同じように何も分からない可能性が高い。
そう考えた班長は、カメラの記録を映像データとしていくつも送りつけ「データが欲しければすぐに動け、調べることがないならNPCを復旧させろ」と開発部に丸投げした。
既に、サポート部門とは別に、複数のカメラが起動しているのは確認している。
あまり時間がかかるようなら、街の閉鎖や全サーバーをネットから遮断してのメンテナンス突入も考える必要はある。そのあたりはタイミングを見て開発部に確認をしなければいけない。
今すぐの仕事としては、大量に届いたクレームの処理だ。
結果が出るまで待っていては、再度のクレームが届くだけだ。今日のうちに何かしら返答をする。人は誰もが、無視されたと思えば機嫌が悪くなるものだからだ。
「取り合えず、NPCがバラバラになって散乱しているのは確認した。それ以上は調査中として返信を出せ。詳細は分かり次第サポートページで発表するとしておけ」
「班長。まとめて定型文でいいっすか」
「いいがユーザーの名前を間違うなよ。ダブルチェックを忘れるな」
サービス開始から一年。やっと目立ったバグが消えたかと思ったが、そんなことはなかったのだとサポート部門全員が認識を改めた。
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