ある魔法都市の日常

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教師の原さん2

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 教室はガヤガヤと騒がしい。それはいつものこと。
 教室から移動するのもガヤガヤと騒がしいまま。
 いるのは同じくらいの年齢の子供ばかり。でも、いろんな形の耳があって、角が生えてる人とか翼が生えてる人とか。だから大きさは結構違う。

 みんな揃って校庭に出たあとは、バラバラに分かれる。
 別れるのは、魔法の適正が違うから。
 魔法の実技の時間は少し憂鬱だ。

 バラバラに移動が終わると、その場には引率の原先生と何人かが残る。
 魔法には種類がいくつもあって、どれが使えるかは人それぞれ。どれも使えない人もいる。ここに残ってるのはそういう人たち。私も含めて。

「では、いつも通り順番に説明します」

 そういう原先生の後についてゾロゾロと動き出す。

 はじめに行ったのは火属性のグループ。

「火の属性は燃えるイメージ、燃え続けるイメージが重要です。自宅のコンロで燃えている火をイメージするといいでしょう」

 火属性のグループは指先に火を出して、消えて、また出してを繰り返している。
 火を確実に出すこと、次に火を維持すること。そういう訓練らしい。
 出す度に火の大きさが違ったり、一人だけ火が出なかったりと、見た目ばらばらな感じだ。

「ここは風属性ですね。風は吹きつける風、舞い上がる風、高いところにいると風を強く感じます。自分が風に吹かれるイメージ。手で扇げば風が起きます。板を持って扇げば、もっと強い風が起きます。自分が風を起こすイメージ。自分が風を操れるという確信することです」

 鳥の獣人がほんの少しだけ宙に浮いている。翼は動いていない。すごい。
 離れて見ているだけでも、結構強い風が吹いている。
 あ、風がやんで地面に降りて来た。そのままうずくまる。見張りをしていた先生がどこかに連れていった。

「えー、魔力の使い過ぎにはくれぐれも注意するように」

 属性は沢山ある。そのぶん、一つのグループにいる生徒が一人だけだったり、多くても数人だけ。人数によっては何グループかまとめて、監視の先生が一人だけついている。

 最後に回ったのは身体強化のグループ。
 ここには桂木がいた。幼馴染で豚獣人で、パン屋の子。
 桂木は大きな岩を持ち上げて仁王立ちしている。勇ましい。でも女の子っぽくないな。なにやってるのあのこ。

「身体強化と一括りにしていますが、強化する場所によって細かく分けることもあります。腕の力を強く出来たからといって、足の力を強くするのは出来ない人もいます。または、早く動くことが出来ても、力を強くすることは出来ない場合もあります」

 ドスンと大きな音がして、大きな岩が地面に転がる。
 桂木は肩で息をしている。桂木の場合、魔法なのか腕力なのかよくわからない。

「狼の獣人の方々は、自然と嗅覚の強化を覚えると言われます。これも身体強化の一つです。イメージとしては、やはり強くなった自分、ですね。力が強くなったイメージ、素早く動けるようになったイメージ。出来ないことが出来るようになったイメージです」

「では、始めの場所に戻って魔力操作の練習をしましょう」

 一通り、他の人の魔法練習を見たら、今度は自分たちの番だ。
 使える属性とか、そういうのは少し置いておいて、魔力を集中させる練習をする。

「さあ、一番イメージしやすいのはどこですか。手ですか、足ですか、目という場合もあります。一番集めやすいと思うところに、体の魔力を移動させてください」

 集中して魔力を手に集める。
 魔力を集める感覚は、家で魔法道具を使ってるから分かる。体の中のモヤモヤした何かが移動する感じ。だけどそれだけじゃ足りないらしい。

「糸野さんは、もう少し沢山の魔力を集めましょう。魔法道具は、効率が優れていますから、その量でも動きます。自分で魔法を起動するのだと、その量では足りません」

 見回りをしている原先生からダメ出しをされる。
 原先生は魔力が見える人らしい。魔法は発動するときは少し光が出て、その光は私にも見える。でも原先生は、魔法になる前の魔力も、色が変わって見えるみたい。これは生まれた時に決まることだから、練習して見えるようになるものではないと聞いた。

 がんばって集めようとするけれど、これ以上なにをすればいいのかも分からなくなる。

「先生。沢山集めるのってよくわかりません」
「基本的にはイメージです。沢山、沢山と念じるんですね。後は、持ってる魔力の量を増やすという方法もあります。持ってる量が倍に増えれば、同じように集めても倍の魔力が集まりますからね」

 説明を聞いた後も、うんうん唸ってがんばってみたけど。ダメだった。

「さあ、そろそろ時間です。最後に一人づつ確認しましょう」

 原先生に言われて順番に見てもらっても結局ダメ。魔力が少ないということだ。
 魔力が十分に動かせるようになった人から次の段階、どの魔法に適正があるのかを調べることになる。今日は一人もいなかった。

 使えるようになる人は、もうとっくにグループ分けされてるし、ここに残っている全員が使えないままで終わるような気がする。実際、今日だけじゃなく、前も、その前の授業でも先にすすんだ人いないし。

「せんせー。魔力増やすのってさー」

 一人が最後にそう質問する。

「家のお手伝いをすることですね。コンロの火をつける、夜に明かりをつける。魔力は使えば使うほどに増えますから」

 それはやっている。
 でも足りないらしい。

「えー、他に、もっと、すっごい増えるやつは」

 言葉遣いは乱暴だけど、聞きたいことは私と一緒だ。

「一度に沢山使うなら、魔石に魔力を込める方法もあります。ですが、魔力を使い過ぎると気分が悪くなったり、頭が痛くなったりしますから、やりすぎは厳禁です」

 魔石か~。魔石ならお店で使ってるから、空っぽのもあるはず。
 うちは住んでる場所にお店が繋がっていて、そこでは持ち帰り用の食事を売ってる。料理に使う魔法道具は、魔石を使って動かしていた。
 自宅でも魔力を使うし、お店とは分けているんだと聞いたような気がする。

「やりたい人は必ずご両親に相談して下さい。そして、空の魔石を用意してもらうこと」

 その日の授業はそう言われて終わった。

 そして、その日の夜。お店にあった魔石に魔力を入れようとして倒れた。
 お母さんにすっごく怒られた。
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