政党ロンダリング

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政党ロンダリング

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 秋空の下、木枯らしの吹く屋外では、雨にも負けず、風にも負けず、ズラが剥がれそうな危機にすら立ち向かう男が居た。
 大きく名前が書かれたワゴンの上、選挙カーの車上に仁王立ちする男がそれだ。
 足元には身を屈めた党員が、カンペを持って待機している。

「このように、厳しい情勢下におきまして、我がイイクニ作ろう党は、総力を結集して……」
「代表、代表」
「なんだね。演説中だよ君」
「イイクニ作ろう党は前の名前です。今はイイハコ作ろう党です」
「む、しかし君。イイクニからイイハコなんてスケールが小さくなってないかね」
「集中と選択だと言って、党名を変更されたのは代表です」
「そ、そうだったかね」

 知らず身を屈めていた男は、再び胸を張り演説を再開する。

「……おっほん、我がイイハコ作ろう党は、総力を結集してこれに対処していく所存であります。また、この国難に当たり、党を越えた協力体制も構築中でございます。すでに元祖ワドウカイチン党とは……」
「代表、代表」
「なんだね。何度も。演説中だよ君」
「元祖ワドウカイチン党も前の党名です。今は元祖フホンセン党に変わっています」
「いや君、元祖フホンセン党は元総務会長が行ったところだろ? 彼とは袂を分かったと聞いているよ」

 困惑する車上の二人。

「では離党したということでしょうか。元祖ワドウカイチン党から離党した議員の行先というと……本家ヨウショウセン党か、大ムモンギンセン党か、イネサカ原理党か」
「そんなにあるのかね。参ったな。そうだ、政策はどうなってる」
「それが、どの党も似た政策しか出していないんですよ」
「なんだって、それで選挙が戦えるのかね」
「元祖ワドウカイチン党から離党した議員ばかりですので。それに3党とも、集合と離散を繰り返してばかりで、同じ議員があっちへいったりこっちへいったりと……」
「それは困った。これは本人に聞くしかないか。しかし、なぜそんなことになっているんだね」
「事件が起きるたびに、影響の少ない党へ移動しているようでして……」

 ちょうどその時、もう一台の選挙カーが現れる。
 車上に立つのは長髪の男。風にたなびく長髪が、ぐるりと回って顔にかかる。濃いスーツの色と相まって、暗闇に潜む怪物のようだ。

「おお、ちょうど良いときに来てくれたじゃないか」
「あの方が協力者ですか?」
「そうだとも。応援に来てくれるとは聞いていないが、忙しい中で時間を作ってくれたのだろう」
「でも、あの方は対立候補ですよ」
「なんだって?」
「こちらを。同じ選挙区から立候補されています」
「……なんということだ。裏切ったな!」

 選挙カーが相まみえる。
 共に車上にありながら、至近距離で睨み合う二人。
 ズラの留め金に長髪が絡みついた。
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